第2話 姉の選んだ道
何とか皇帝を宥め、粛清を止めたセレストリアは執務室へと戻る。扉を開けた瞬間に声をかけられた。
「姫様」
声の主はハンターだ。戦闘のあとだろうか、彼が身にまとうコートは所々破れている。……いや、もともとの意匠かもしれない、と彼女は小さく呟いた。
「首尾は?」
「申し訳ございません。敗北いたしました。キラキラジュエルの回収には至りませんでした」
「……そうか」
「力及ばず、誠に申し訳ございません」
「気にするな。キラキラジュエルは集まってきている。多少回収漏れがあったとて問題はない。……ところで」
彼女はハンターに視線を向ける。
「いつまでハンターでいるつもりだ?」
「失礼いたしました」
彼はすぐに変身を解く。身長が縮み、頭からは狼の耳、お尻からは尻尾が現れた。服装は動きやすい軍服へと変わる。
「……素朴な疑問なのだが」
「何でしょうか」
「どうしてあんなにボロボロな服装なんだ?」
「かっこいいでしょう?」
「……そうか」
セレストリアは思わず遠い目をした。
(……年齢的なものだろうか。まだ14だしな。うん、そういうことにしておこう)
「話を戻すぞ。例の件についてはどうなってる?」
「進捗は芳しくなく……。少なくとも、少佐は違いました」
「違う、ということが分かっただけでも収穫だ」
「……そういうものなのでしょうか」
「そういうものだ」
狼の耳がぴくりと揺れた。
「さようでございますか」
「ああ」
「引き続き頼んだ」
「承知いたしました」
ナイトは頭を下げると、影の中へと消える。その時スマホが鳴った。発信元はフィーネだ。彼女はすぐに電話を取る。
「……フィーネか」
「お姉ちゃん、その……」
フィーネは言い淀む。セレストリアは「魔法少女になった件について、か?」と口を開いた。
「……うん。……知ってたんだ」
「見ていたからな」
「……そっか。……やっぱり、帝国のやり方はおかしい、って思って」
「そうか」
彼女は短く答える。フィーネは「……うん」と相槌を打った。
「……それにね。幹部としてみんなに迷惑をかけたから。だからみんなを守って、少しでも罪滅ぼししたくて」
「君の選択を尊重する」
セレストリアがそう言うと、フィーネは一瞬黙り込んだ。
「ありがとう。……お姉ちゃんも一緒に来る?」
「これからは敵同士だ」
息を呑む音が聞こえてきた。時報が鳴る。彼女はデスクに視線を向けた。
「……要件はそれだけか?」
「……うん」
「そうか。切るぞ」
「……そっか。……バイバイ」
「ああ。またな」
電話を切る。デスクには、処理を待つ書類が山のように積まれていた。セレストリアは一度伸びをし、書類に向き直った。
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