第1話 妹の選んだ道
「思い知るがいい。帝国に逆らうことの重さを」
ボロボロのマフラーを身にまとった少年、ハンターが静かにそう吐き捨てる。彼の眼前には、傷つき、悶え苦しむ魔法少女たちがいた。
「フローラ! マリス! しっかりするみゅう!」
魔法少女の協力者、ミューズが叫ぶ。少女たちは震えながらも顔を上げた。
「……まだ……終われない……。……だって、まだ……お泊り会……してない……」
フローラの言葉に、マリスが笑いをこぼす。
「……勉強会も……忘れちゃ……だめよ……」
震えながら、藻掻きながら、それでも少女たちは立ち上がろうとする。
「終わりだ」
ハンターは手を掲げ、いくつものナイフを呼び出す。手を振り下ろした瞬間、ナイフは一斉に少女たちへと向かった。その時だった。
「だめっ! インベル・ステラルム!」
無数の星がナイフを撃ち落とす。ハンターの前に立ちはだかったのは、帝国の幹部であるステラだった。
「何の真似だ」
「キラキラジュエルを勝手に奪って! みんなを傷つけて、悲しませて! 帝国は間違ってる!」
ハンターの眉がピクリと動く。
「……そうか。ならば散れ」
彼はそれだけ言って姿を消す。次の瞬間にはステラの背後にいた。振り向く間もなく、漆黒の魔力が迸る。ステラはとっさに防御したものの、星柄の仮面が割れてしまった。
「……フィーネ!?」
そこに立っていたのは、留学生のフィーネ・アルノワールだった。
「……嘘」
「ああ、やっぱり」
「……隠しててごめん。……帝国の、スパイだったんだ」
「……騙して……たの?」
「……そうなるね。……ごめん。……でもね。二人のことを友達だって思ってたのは、本当だよ。……だから」
フィーネは目を閉じた。
「私は、友達を傷つける帝国を許さない!」
その言葉に応えるように、ステッキが輝き始めた。
ミューズが羽ばたき「みゅうう!」と叫ぶ。光の柱がフィーネを包み込んだ。
光が晴れる。そこに現れたのは、星の魔法少女・ステラだった。
◇
「フィーネが魔法少女となった、か」
モニターを見ながら、セレストリアは呟く。画面には黄色いワンピースを身につけて戦う妹の姿があった。
「セレストリア将軍」
「どうした」
彼女は振り返る。視線の先には父の側近、ヴァルターが立っていた。
「陛下がまた粛清を言い出しております」
「今度は何人だ」
「まだ決まっておりません」
「分かった。対応する」
セレストリアはモニターの前を離れる。兵士、諜報員、文官、あるいは使用人。誰一人、失わせるわけにはいかない。
「……」
十年前の家族写真が目に入る。……父の膝の上で笑う幼い自分と、母に抱かれたフィーネが写っていた。
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