第17話 忠義の刃
魔法少女たちは地下へと向かい、ミューズを救出する。
「ミューズ、大丈夫?」
「怖かったみゅう……」
抱き合うフローラとミューズを見て、ナイトは息を吐く。その時だった。
「サンクティ・ルミナ!」
彼の耳にセレストリアの声が届く。声がしたのは玉座の間の方向だった。その声はかなり切羽詰まっているようだった。
「姫様!」
ナイトは思わず声を出してしまう。魔法少女たちの動きが止まった。
「……ナイト?」
「……い、いたの?」
彼は動きを止める。そして、そろそろと影から顔を出した。
「……まさか俺の監視を見破るとは……」
「今そういうのいいから。お姉ちゃんの声が聞こえたの?」
「ああ。……胸騒ぎがする」
「……私には、セレストリアさんの声は聞こえなかったけど」
「ナイトは耳がいいから、それでかも」
彼は魔法少女に視線を向けた。
(本音を言えば、姫様を助けに行きたい。だが……)
ナイトは何も言わない。ステラは首を傾げた。
「……行かないの?」
「行けない。……お前たちの監視、うん、監視ということにしておけ。とにかくそれが姫様の命令だ」
そう言いながらも、彼の視線は何度も声が聞こえた方向へ吸い寄せられる。小さな物音一つ聞き逃すまいと耳を立てていた。フローラが手のひらをぽん、と叩いた。
「じゃあ、私たちがセレストリアさんのところにいけば、ナイトも来るしかないよね?」
「そうね。なんだかんだ助けてもらったし」
「うん。お姉ちゃんが困ってるなら、助けに行きたい」
「ということで、案内してほしい」
魔法少女たちはまっすぐ彼を見る。ナイトは背中を向けた。
「……こっちだ」
彼は全速力で駆け出す。魔法少女たちも遅れないよう必死でついて行った。
ナイトは魔法少女たちが見つからないよう、なるべく使われていない通路や警備の薄い道を選びながら玉座の間へ向かった。
「……お父様」
ピンと立った彼の耳に、セレストリアのか細い声が聞こえてくる。かしゃりと剣が落ちる音が聞こえた。
「……っ、姫様! ……玉座はこの先だ! 急げ!」
彼はそう言い残して影へと消え、全速力で移動した。
ナイトは玉座の間へと滑り込む。玉座は動かされていて、その下の通路らしきところから悪魔とルクシアが出てきた。男の方からは禍々しい魔力が溢れている。
(あいつが悪魔で間違いはない)
ナイトは口の中でそう呟く。鼻がひくり、と動いた。
(……見たこともない女のはずだ。なのに、匂いだけは間違いなく姫様だ。……どういうことだ?)
彼は目を丸くし、震える声で口を開いた。
「……姫様?」
「なんじゃ、こやつは」
「器の側仕え、諜報でございます」
悪魔は恭しく答える。
「ほう。……影狼族か」
「貴様は誰だ」
「礼儀作法がなっておらんな。……まあよい。妾はルクシア。我を封じた光の女神が築いた世界を滅ぼし、新たな神となる者じゃ」
ルクシアはにんまりと笑う。
「あなたの主はルクシア様に上書きされ、消えたのですよ」
「……姫……様……」
彼の指先が震える。悪魔はにたりと笑って続けた。
「ナイト。あなたは非常に優秀です。ルクシア様に仕えてみるのもいかがでしょう。この体は閣下のものですし」
「妾も犬が欲しかったところじゃ」
ルクシアは口角を吊り上げる。ナイトは何も言わなかった。
(……姫様は、こんな顔で笑わない)
彼の尻尾が逆立つ。
「……黙れ」
「なんじゃ?」
「黙れと、言っている」
ルクシアの動きが止まる。
「それ以上、姫様の口でしゃべるな」
彼は胸元のブローチをつかむ。まばゆい光が身体を包み込む。手足が伸び、耳が消えた。
「わが名はハンター。姫様に仇なす者よ。漆黒の闇に呑まれて消えろ」
読んでくださりありがとうございました。評価、いいね、ブックマークをしてくださると励みになります。




