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第15話 悪魔

 休憩後、執務室に戻ったセレストリアは、監視カメラで魔法少女たちを見守る。三人は潜入に慣れていないのか、哨戒中の騎士たちの前に飛び出しかけたり、大きな音を立ててしまったりと危うく見つかりかけることが何度もあった。彼女は思わず頭を抱える。


「……ナイト、その……手伝ってやってくれないか?」

「かしこまりました」

「見つかるなよ」

「もちろんです」


 彼はそう頷いて姿を消した。


 かち、かちと時計の針が進む。魔法少女たちは危なっかしいものの、ナイトの助けもあり、なんとか地下へと向かう。もうじき地下牢へ辿り着く、というタイミングだった。

 執務室の扉がコンコンとノックされる。


「誰だ」

「セレストリア閣下、私です」

「ヴァルターか。どうした?」


 セレストリアが問いかけると、彼は一瞬だけ言い淀んだ。


「陛下がお呼びです」

「お父様が? ……分かった。すぐに向かう」


 セレストリアはさり気なく画面に視線を向けた。画面には三人が映る。


(……ナイトがいるから、大丈夫なはずだ)


 そう言い聞かせて、彼女は椅子から立ち上がった。



「陛下、ただいま……ん?」


 玉座の間には人気がなく、明かりが落とされていた。疑問に思った彼女は辺りを見回す。そして気づいた。玉座の下からわずかに明かりが漏れていることに。


「……なんだ?」


 反射的に周囲を警戒しながら近づく。よく見れば、玉座には動かした跡が残っていた。


「……動かしてみるか……」


 跡の通りに動かせば、謎のハッチが姿を現した。隙間から明かりが漏れている。


「……こんなもの、あったか?」


 辺りを見回して人気がないことを確認し、ハッチを少しだけ開けた。下へ続く梯子が見える。


「……ここに入るには、お父様のいない今しかないか……。危険ではあるが……虎穴に入らずんば、虎児を得ず、だな」


 そう呟いて、彼女は静かに梯子を降りた。

 梯子の先には暗い石造り通路が続く。セレストリアはスマホの明かりを頼りに道を進んだ。どうやら、突き当たりに部屋があるようだった。


「……ここまで集まれば……」


 皇帝の声が聞こえる。彼女は物陰に身を隠し、そっと部屋を伺った。


「ええ。これで復活の儀式が行えます」


 部屋の中には皇帝、ヴァルターがいた。彼らはキラキラジュエルが集められたポットの前で話していた。キラキラジュエルの光が彼らを照らしている。床に影が伸びる。皇帝の影は人間のそれだった。

 だが、ヴァルターの影にはツノと尻尾があった。


「……悪魔」


 セレストリアは思わず呟く。

 彼女は信じられなかった。彼はお父様の幼馴染で、忠義を尽くす側近で、狂った皇帝を諌めてなんとか帝国を回している立役者の一人のはずだ。そんなまさか。

 動揺したためだろうか、セレストリアはたたらを踏んでしまう。こつりと小さな音がした。皇帝とヴァルターが振り向く。


「おや、閣下。こんなところでどうなさったのです?」

「……いつからだ」

「いつから、とは?」

「いつからお前は悪魔だった?」

「十年前からですよ。もっとも、あなた方は誰一人として気づきませんでしたが」


 悪魔はにたりと笑うと、その化けの皮を剥いだ。


「……本物は」

「はい?」

「……本物は、どこにいる?」

「……さあ。帝都の土の下で、虫に食われているかと」

「……そうか」


 セレストリアは静かに息を整え、腰の剣を抜く。その切っ先を悪魔へと向けた。


「……皇帝を操り、帝国を蝕んだ悪魔よ。アルノワール帝国第一皇女兼帝国将軍セレストリア・アルノワールが、貴様を倒す」

「やれるものならば」


 悪魔はくつくつと笑った。

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