表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
44/45

リーネ

 暗闇にいた。

 頭がぼやけている。ここはどこなんだろう。私は誰だっけ。


 長い時間そのままだった。明るくならない。場所も分からない。時間と言ったが実際の時間なんて分からない。


 そんな夢うつつの中まどろんでいると、暗闇にぽつんと光の点が現れた。見えているのではない、そもそも目の感覚が分からない。前も後ろも判然としない。ただ、そこに光があった。


 暖かい、そう思った。

 とたん、記憶が舞い戻って来た。そうだ、私はリーネ。アマナ神殿の巫女。ソーマと旅をして炉を復活させて、それから。それから?


 そう、管理者の研修で玲奈博士に会って、知識を与えられて現実に戻るはずだった。しかし神殿に戻る事はなく、気がついたらこの暗闇の中にいた。研修が失敗したんだろうか。


 ブン。たぶん目の前?に見知ったウィンドウが開いた。小さいコンソールだ。そこには老人が映っている。褐色の肌、グレーの髪、黒い目。しわは多い。でも初めて見るはずなのに何か懐かしい。


『よう、リーネ。70年ぶりだな』


 その口調! ソーマ!


「ソーマなんですか!? 何故そのような年寄りの姿に?」


 ウィンドウの中のソーマ老人は、ニカっと笑った。嬉しそうだ。


『いやあ、一発で分かるとは嬉しいね。そう、俺はあれから70年後、91才の桐生蒼真だ。久しぶり。まあお前さんにとっては数日しか経ってないんだろうけどな』


「戻ってらしたんですね。嬉しいです。ティアも喜びますよ」


 老人ソーマは苦笑いを浮かべる。


『いや、そうじゃないんだ。これは人工知能による蒼真のシミュレーションでな。本物の俺はもう3000年前に死んでるよ。玲奈博士には内緒で炉のシステムに忍び込んでいる』


「そんな……」


『いやまあ気にするな。お前たちと一緒に旅した俺は、ちゃんと元の時代に戻れたんだ。二人のおかげでな』


 リーネは俯いた、と思う。体の感覚が無いから。


『でだ。リーネは今管理者研修を終了してアマナに戻る所で停止している。解除すればすぐに炉の前に戻る。ただしここで会話した記憶は残らない』


「どういう事でしょう?」


『俺のワガママだ。リーネには選択肢を用意した。一つはこのままここでの会話を忘れてアマナに戻り巫女を続ける。もう一つは精神だけ過去に遡って若い蒼真のアシストをする。ただし人間の体は用意できないので獣か機械になるけどな』


「ソーマの元に行けるんですか! それは望むところです。あ、けれどそうしたらティアを一人残してしまう事になりますから、やはりそれは出来ませんね」


『そうはならない。どちらを選ぼうとも、リーネ本体はこの時代に残る。ここでの話は何も覚えていないよ。もし承諾するなら君のコピーが作られる。それが過去に遡る事になる』


 リーネは考え込む。


「ティアを残す事にはならないと?」


『それは保証する』


 リーネは顔を上げた。気がした。


「ソーマ、あなたは相変わらず姑息ですね。私の性格は分かってるでしょうに。そんなの選択肢じゃありませんよ」


『そんな風に思われてたのか。まあそうだな、ちょっと卑怯かもな。でもな、元の時代に戻ってからの俺はちょっと見てられなくてな』


「ふふ、そうですか。分かりました。コピーを作ってください」


『いいんだな?』


「何を今更。分かっていたんでしょうに」


 老人は嬉しそうに頷いた。


『ありがとう、リーネ』


 それは、懐かしいあの人の声だった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ