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俺の黒小説が聖典になってた  作者: ぽんた7
Episode11 地殻炉
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決着

 犬が他の人間に向かって歩き出すのを見て間違いを悟った。

 まずい。犬の戦闘力の見積もりが甘かった。敵とすら思われていないとは。


『方針変更。攻撃するのは中止。人間に向かったら目の前をかすめて飛ぶ。可能なら顔に尻尾で一撃。でも無理すんな』


「にゃ」


 リンが犬の後ろから飛ぶ。人間に迫った犬の目前を翼がかすめる。犬の死角から足音なく近づくので、さすがの犬も対応ができない。前足を振って追い払おうとしても、その時は飛び去った後だ。


 他の猫も次から次へと犬の邪魔をし始めた。目を狙われているのでなかなか餌にたどり着けない。イライラが溜まる。犬も方針を変更した。まず邪魔者を排除。


 犬がリンに突撃する。早い、けれど既に見た攻撃だ。来るのが分かっていれば身軽さは鱗猫のほうが上。すかさず飛び上がり塀の上に逃れる。犬もジャンプして飛びかかってくるが、翼の立体的な機動に追いつく事はできない。他の猫も同じように犬を翻弄する。犬のイライラが増して行く。


 更に、リンたちを徐々に移動させて建物が密集している方向に誘導した。犬の突進を狭い路地や窓に飛び込む事で躱す。犬の行動範囲が狭くなる。突進で壁に激突するが、それほどダメージは無いようだ。だが思うように攻撃ができない。建物の周りに置かれたものをなぎ倒しながら暴れまくる。


 しかし犬も馬鹿ではなかった。猫の意図を察し始めていた。つまりこいつらは餌を食いたいんじゃない、守りたいのだ、と気づく。

 犬は無理に猫を追うのをやめ、人間に向かって方向転換する。猫が目の前を横切るが無視。人間を押さえてしまえば猫は勝手にやってきてくれる。そこを引き裂けば良いのだ。


『くそ、意図がバレた。』


 建物の壁のそばに、逃げていなかった男が立っていた。素早く迫った犬の前足ではたかれ倒される。死んではいないようだが、犬は前足で男の足を踏んで動けなくした。建物が邪魔で後ろから飛んで攪乱する事ができない位置だ。こいつ、こっちの戦術をもう理解してる。


 犬は勝利を確信した。あとはこれを繰り返せば満腹になるまで二本足を食べる事ができる。


 俺は特攻を決意した。倒れているのは見知らぬオッサンだが、ここで見捨てたらリーネに合わせる顔がない。


『もうこれしかないか。リン、ごめんな。』


「にゃ」


 リンと俺の意識が一体化した。背中と尻尾の光が強くなる。他の猫が犬の注意を引いている間に背後の屋根に飛び移り、そこから犬の背中に向けてダイブ。首筋に爪と牙を立てた。首は動くのに多めの自由度を必要とするためだろう、鱗の密集度が低く肌に牙が届いた。両前足と後ろ足の爪で鱗を掴んで背中に張り付く。


 犬は狂ったように暴れ出した。左右に体を激しく揺さぶりリンを振り落とそうとする。犬の足が男から離れる。

 他の猫は暴れる犬の目の前を飛行して邪魔をしようとするが、犬はそれどころではなくリンを落とすのに集中している。首筋に牙が深く刺さっている。痛い。それは生態系に君臨していた犬が初めて出会った攻撃の痛み。

 犬は最後の手段で横に力一杯転がる。牙がより深く刺さる危険を認識していたが、それを受けても猫を振り払う事を優先した。リンの体が道路に叩き付けられ、爪が犬から外れてしまい離れて転がっていく。


『痛ってー』


 体中が痛い。リンも意識こそ失っていないが、動く事ができない。


 起き上がった犬がリンのそばにやってきて、前足でリンの腰を踏んだ。重いが、体重200Kg程度で押しつぶされるほど鱗猫も弱くはない。しかし全く身動きは出来なくなってしまった。


 犬の顔が近づく。勝ち誇っているかのようにゆっくりと。舌なめずりしたかと思うとおもむろに巨大な顎を開き、リンの首筋に牙を立てようと近づける。


『もうだめか』


 ソーマが諦めた瞬間、顎を開いたまま犬の動きが止まった。

 犬の脳に不快感があふれ始める。リンから頭を離して首を左右に振る。耳が伏せられる。犬は気力を振り絞って再度リンをかみ殺そうとするが、どうしてもそれが出来ない。


 それは炉が展開したジャマー、生体兵器に直接命令を伝達する装置の作用だった。送信出力が十分に上がり、犬の神経系を抑圧する。犬はリンから前足を離して一歩、二歩、と後ずさった。ついには背を向けてアマナの外に向けて走り出す。南へ。ジャマーの届かない灰域へ。助かったのか。


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