灰獣
猫たちがアマナの南端に到着した。
そこにいたのは、巨大な犬? みたいな動物。血がボタボタ垂れている人間の亡骸を口に咥えていた。
鱗猫と違い黒い鱗がほぼ全身に生えている。体長は2メートル近いか。装甲車だなこれは。明らかな生体兵器。くそ、つまらんもの作りやがって。
『リン、俺たちの役目はこいつの討伐じゃない。ジャマーが再起動するまで時間を稼ぐことだ。無理すんなよ。仲間に伝えとけ。』
「にゃふ。にゃにゃ! にゃふにゃふー!」
「うにゃー!」「うにゃー!」「うにゃー!」「うんにゃー!」
きっとリンは俺の言う内容を理解してる。まだ一ヶ月ちょっとの付き合いだが、リーネの感応術を通じてこいつの思考が理解できつつある。
俺には確信がある。鱗猫も生体兵器だ。目の前の犬みたいな戦闘特化ではなく、戦場での汎用性を求めたタイプ。偵察、連絡、牽制などで人間の補佐をするよう遺伝子に刻み込まれている。人間の盾にもなるのだろう。命を命とも思わない古代文明の連中に吐き気がする。
『いくぞ。基本は回り込んでヒットアンドアウェイだ。食らうなよ?』
猫が散開する。犬は獲物を咀嚼するのをやめて体勢を低くした。獲物を横取りしにきたとでも思ったのだろう。戦う気まんまんだ。
犬が一匹の猫にダッシュする。早っ! 巨体の動きじゃない。狙われた猫は牙の一撃こそ避けたが、肩でぶつかられて吹き飛ばされた。
「ぎゃん!」
突き飛ばされた猫は壁に激突、動かなくなる。
そこへ別の猫が横っ腹に体当たり。すぐに離脱ざまに尾の先で一撃。
効いているようには見えないが、気を逸らす事には成功している。翼で建物の上から攻撃を重ねる。鱗が堅い。まったく猫の攻撃は通っていなかった。
何度か攻防を繰り返していると、犬が戦闘態勢を解いた。不思議に思って見ていると、先ほど投げ出した人間の死体に戻り食事を再開する。
どうやら鱗猫は大した障害にならない、と判断したらしい。多少横取りされたところで、これだけ人間という餌があれば自分の取り分は十分にある、という事だろう。
犬は、その人間をあっという間に食べ終えた。首をあげて周囲を見回す。逃げていない人間がまだまだ残っている。さあ、次だ、とばかりにゆったりと歩き出す。




