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俺の黒小説が聖典になってた  作者: ぽんた7
Episode9 帰還
33/45

聖典の意味

 翌日。全ての長老と上位の神官がホールに集められた。俺がリーネに憑依した時に最初に出てきた広い教会風の大きな部屋だ。

 最長老のハイラを筆頭に、トーラとニナ。他何人かが前方横に並べられた席についている。神官たちはホール後ろに並んだベンチに座る。全部で20人くらいだろうか。

 リーネとティアは長老たちの反対側の椅子に、俺と猫たちはリーネの足下に座る。


 トーラが会の開始を宣言する。


「では巫女リーネ。探索の報告を」


 リーネが中央に歩み出る。


「ご報告いたします。偉人ソーマ様と私たちは、灰域の奥に3000年前の地殻炉の研究施設を発見しました」


 どよどよ。ざわめく神官たち。トーラがそれを手で制する。「巫女リーネ、続けて」


 リーネは俺たちの旅を語っていく。地殻炉に状況報告機能があったこと。開発者のメッセージを発見したこと。地殻炉単体では動かず、炉が停止しているのは炉同士を繋ぐネットワークが停止しているからであること。ネットワークの再起動には失われた聖典の最終章と悪とされた人間の感情が必要なこと。


 ハイラが立ち上がる。


「それではもう地殻炉は蘇らないという事ではないか……」


 しかし長老や神官はそれほど残念そうでもない。というか残念という感情すら無いのだろう。リーネは続ける。


「そうではありません。研究者からの伝言で再起動の方法は分かっています。それを実行する許可がほしいのです」


 ニナは反対のようだった。


「感情で炉が再起動する、というのはにわかには信じられません。もう記録にないくらいの過去から、感情は悪だとされていたのには理由があるはずです」


「それは理解しています。しかし人間は、もともとは感情豊かな生き物でした。いつ、何故、感情が悪であるという事になったのかは分かりませんが、少なくとも地殻炉が作られた時代には悪では無かったのです」


 一人の神官が発言する。


「しかし、それは遙か昔の事だろう。今は感情が無い事で争いも無く平和なのだから」


「いいえ。確かに平和ではあります。でもどんどん人が減っている今の状況は本当に平和と言えるのですか? 争いで人が死ぬのと無関心で人が死ぬのと何が違うのでしょう」


 神官たちは、考えた事も無かったという顔をしている。


「私たちは、旅の途中ルストやカルムで感情豊かな子供たちに出会いました。大人にも少ないですが感情の萌芽がありました。大昔の感情は確かに害悪だったのかもしれませんが、彼らのものはそのような邪悪なものには思えませんでした。行き過ぎない感情、そのバランスが重要なのです」


「しかし今更教義を変えるのは難しい。炉をいじるのも賛成できん」


「炉が止まって人がいなくなれば、教義も無くなるのです。再起動を試させてください」


 長老や神官たちは互いに顔を見合わせる。頭では分かるのだが、今まで信奉していたものを振り切るのは簡単ではなかった。


『リーネ、炉の前でコンソールを見せるのはどうだろう。もしかしたらこっちでも玲奈の記録が見られるかもしれないぞ』


「ソーマが、皆さんに炉の操作方法を見せると言っています。あくまで炉の考えている事が出てくるだけなので、炉が停止したりする危険はありません」


 そんなものが、という声があちこちで出される。皆興味はあるようだ。


 その後全員で奥殿の炉の前に移動。厨二コマンドでコンソールは問題無く表示され、玲奈博士のメッセージも流す事ができた。ここに至り、もうリーネを疑う者はいなくなっていた。


 リーネは皆の前で再度問う。


「再起動は可能なのです。必要なのは聖典の最終章と、アマナとルスト、カルムに感情を持つ人間がいること。お願いします、許可をください」


 リーネとその横のティアが深々と頭を下げる。


「炉がこれ以上弱ってしまうと、偉人様と聖獣様の融合が維持できません。そうなったら二度と炉を再起動できなくなります。最後の機会なんです」





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