蒼炎の書
その後、玲奈博士の言っていた奥にあるキャビネットとやらを探してみたが、ファイルを見つける事はできなかった。残念なような、ほっとしたような。
「神殿に保管されている『蒼炎の書』は欠落が多いので、ここで完全なものが見つかれば大発見だったのですが。残念です」
リーネに続きティアも
「リーネ様、猫は聖典を記憶してるんですよね。書かせれば良いんじゃないですか?」
うーん。そこそこ覚えてはいるから不可能じゃないけど、ちょっと嫌だなあ。
「でも、感情を持つものが両端に必要、ですか」
リーネがしみじみと言葉にする。
「私ではお役に立てませんね……」
『いや、リーネを見ていて思うんだが、感情が無いのではなく抑圧されてるだけだと思う。何かきっかけがあれば、感情もある程度戻りそうな気はするんだよな』
「そうでしょうか」
『前頭葉とか扁桃体とか無くなっている訳はない。死んじまうからな。出力パイプが細いだけで、感情が出せない訳じゃ無いと思うんだ』
「よく解りませんが、今までの教えに背くことになるので、やはり抵抗があるのです」
『ほら、それだ』
「それ、とは?」
『抵抗がある、というのも理屈じゃなくて感情だ。それをもっと深掘りしてみるといい』
「はい……」
偉そうな事言っちゃったが、リーネには素質はあると思うのは本当だ。役に立たないなんてしょげ返る彼女は見たくない。
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さて、それはそれとして最終章をどうするか。書く、というかリーネに口述筆記してもらうのは簡単だ。かなり恥ずかしい内容だが、もうそんな事も言っていられない。
リーネに筆記を頼もうとしたら、保留にされた。
「ソーマ、そろそろ水と食料が限界に近いです」
『あー。そんな事言ってたな。もう水を半分使っちゃったって事か』
「はい。一旦人のいる集落に戻ります。最終章の作成はアマナに戻ってからで良いかと」
ティアが意見を言う。
「どうせ戻る途中で野営するんですから、猫にはその間働かせれば良いのでは。リーネ様が言葉を翻訳して、それを私が書き写すというのはどうでしょう」
へー。ティア文字書けるんだな。神殿ちゃんと教育機関になってるんだ。
「今、またまた何か失礼な事考えませんでしたか?」
ぶんぶん。リンの首を左右に振る。
なんで考えてる事分かるんだよ。もしかして感応術ってティアも持ってたりするんじゃないだろうな。
「私は感応術なんて使えませんよ。でもなんかあなたの考えている邪な事は分かるんですよ」
だからなんで分かるんだよ。ティアこええよ。




