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俺の黒小説が聖典になってた  作者: ぽんた7
外伝Ⅰ 地の底
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陸別

 日本に到着した玲奈は、そのまま飛行機を乗り換えて帯広空港へ。


「寒!」


 もう6月だというのに肌寒い。出迎えの職員と合流しその話をすると、


「いや、今年はちょっと異常なんですよ。普段はもっと暑いくらいなんですけどね」


 そこから車で走る事延々2時間ちょっと。連れて行かれたのは大雪山と阿寒に挟まれた陸別町の広大な私有地だった。元は牧場だった土地が廃業で手放され、そこを財団が政治的に手を回して地目変更され研究施設となっている。


「博士、長旅お疲れ様でした。こちらへどうぞ」


 職員は牧場の入り口に立つ町工場のような建物に案内された。ロビーも普通の工場入り口のような見た目だったが、そこからゲートをくぐると外見とは全く異なる近代的な部屋に入った。受付カウンターがあり、脇には警備員が立っていた。


「まず本人確認とセキュリティ登録を行います。前もってお伝えした通り顔登録、網膜登録、手のひらの静脈パターン、声紋パターンを採取しますが宜しいですか?」


 それはメールに記されていた。本人確認は電子パスポートと米国の電子社会保障番号に紐付く生体認証。それに加えて財団での認証を多数追加した。


「はい、ありがとうございました。これで入館手続きは終了です。今担当の研究者が参ります。お待ちください」


 受付横のソファーでしばし待つと、40代くらいの小柄な男が現れた。


「玲奈・トーヴ博士ですね、初めまして。私は財団で地殻炉プロジェクトを統括している大森と申します」


 明るい男だった。良かった、話しやすそうだ。


「こちらこそ初めまして。玲奈・トーヴです。今回はお声がけ頂いてありがとうございます」


「まずは実験炉をご案内しますね。こちらへ」


 部屋の奥はエレベータールームだけだった。あれ、他に部屋は無いんだろうか。


「この建物はダミーなんですよ。裏側に物資の搬入口はありますが、他はハリボテで、防火用品とかが置いてあるだけです」


「ずいぶん厳重なんですね」


 大森はため息をつく。エレベーターに乗り込む。階数のボタンが二つしかない。「E」と「L」。大森はLのボタンを押した。ボタンは指紋認証のようで表示板に認証通過の表示が点灯する。ドアが閉まり降下が始まる。


「この地に研究所を移すまでに、エネルギー産業の妨害が色々ありまして。私もちょっとやり過ぎかなと思うんですが、結構過激な連中もいますのでね。まあ念のためです」


 エレベーターは延々降りて行く。ずいぶん深そうだ。


「このEとLのボタンは、EntranceとLaboratoryですか?」


「その通りです。二つしかないんでラベルなんて要らないんですけどね。階数とか分からないので数字を書く訳にもいかず」


「なるほど」


 下の階に到着した。降りると驚くほど広い部屋が広がっている。奥が見えない。


「少し歩きます。こちらへ」


 奥行き方向に長い。5分ほども歩いただろうか、直径10メートルくらいの円柱型の物体が見えてきた。これは。


 そこで玲奈が目にしたのは、細部は異なるものの確かに地殻炉のプロトタイプだった。


「どうですかトーヴ博士。これが我々の実験炉です。まだまだまともな稼働には全然遠いんですけどね」


 驚きに目を丸くしている玲奈。何故こんなものが既に存在しているのか。


「どうしてこんなものが?私が理論を発表したのはまだ先月の事なのに...」


「いやあ、私たちも10年ほど前に仮想ヒートポンプにはたどり着いていまして。十勝地方の熱水溜まりくらいの浅い深度からの汲みだしには成功してるんです。ただそれ以上の深さにどうしても到達する事が出来ないんですよね」


「それでも凄い事なんじゃ」


「いえいえ、この位の深度なら直接井を掘ったほうが出力ははるかに大きいんですよ。現状では発電所なんて名乗るのもおこがましいレベルです。せめてマグマ溜まりまで到達、いえマントルまで到達しないと核融合炉に対して優位性が持てません」


「……」


「で、先日のニューヨークの博士の発表です。複数基での同調制御は目から鱗でした。ただ実現に際して色々な問題もありそうです。そこで是非とも博士には協力してもらえたら、という事なんですよ」


 本当に驚いた。既に仮想ヒートポンプが試作されているとは。これなら玲奈の構想を何年も短縮できる。乗らない手はなかった。


「分かりました。これこそ私が求めていたものです。研究に合流させてください、宜しくお願いします」


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