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俺の黒小説が聖典になってた  作者: ぽんた7
Episode6 灰の向こう側
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ネットワーク

「ソーマ、これは一体……」


 リーネが恐る恐る尋ねる。ティアは口をぽかんと開けたまま。逆にリンは俺が落ち着いているのが分かるのだろう、冷静だった。


『おそらくコンソール的な何かだな。ちょっと調べてみよう』


「こんそーるとは一体……やはりソーマは偉人様なのですね……」


『ちげーって』


 変な感心されてるな。まあ少しくらいは知識無双させておくれ。俺は後足二本で立ち上がり、尻尾で姿勢を支えた。鱗猫の尻尾、強靱だから直立も出来ると思ってた。リン、姿勢制御よろしく。


「にゃ」 かしこさよ。


 さて。表示されている内容は全然理解できない。大小のウィンドウが沢山浮かんでいてそれぞれに見知らぬ文字が書いてある。

 そんな中に一つ、図形の描かれたものがあった。


 肉球でそのウィンドウをタップする。ホロっぽいくせに触感がある。タップされたウィンドウは全画面に拡大された。いやーこの辺は文明度が変わってもおんなじなんだなあ。まあエネルギーが足りないから高度なインターフェースが使えないだけかもだが。古代文明的には、こんなのは文字だけのターミナルウィンドウ扱い、いや非常時に使うLEDのトグルスイッチ程度のものなのかもしれない。まあ理解できるのは逆に助かるけど。


『さて、と』


 表示を見ると、何やら円とか矩形とか三角とかのグレーで塗られた単純な図形が並んでいて、それぞれが線で結ばれている。何かのネットワーク図っぽい。それぞれの図形の横にはタイトルが付いている。読めんけど。

 その中心にある円形のものだけ赤い枠で強調表示されていた。タップすると横に小さなウィンドウが開く。読めないが表形式だ。いくつかの行が赤字になっている。何を指してるかは分からんが、この丸いところに不具合があるって事だよな、普通に考えて。


 赤がエラーとは限らない? そりゃそうかもだが、ウィンドウ操作を見る限り古代文明と言ってもたぶんヒト種だろう。ならば赤が注意色なのは十分あり得る。


 リーネが俺の横に並んできた。


「ソーマ、この絵の下のほうですが、この二つの大きな青い丸印は聖都とカルムではありませんか?」


 なるほど、それは気づかなかったな、これ地図か。


「この途中の灰色の丸印の位置、これまで通ってきた滅びた集落の位置と同じ配置です。ほら、さらに下がるとカルム、もっと下の大きな印はアマナの場所です」


『でかしたリーネ。その通りかもだ』


 アマナと思われる青い丸印をタップしてみる。同じようなウィンドウが開き、その文字は黒。カルムも同様だった。つまりこれは正常に運転してる炉を表してるのか。


『つまり丸いのが炉か。するとこの炉を繋いでる線は送電線?』


 線をタップする。同様にサブウィンドウが開く。灰色の線には赤い表示文字、青い線には黒い表示文字。グレーのは切断されてるって事か。でも。


『灰色の炉同士を繋いでる線も青かったりするな。上に行くほど灰色の線が増えている。何でだろうな』


 わからないのを考えても仕方ない。あと気になるのはここより更に上の方にある一段と大きい丸印。これが別の四角に囲まれている。線もここから沢山延びている。


「この大きいのは何でしょう」


『わからんが、何か元締め的な雰囲気だな』


 ティアも復帰してきたようで会話に加わってきた。


「ここに何かあるんじゃないですか?」


『やっぱそう思う?』


「そうですよね。見たところそれほど遠くはなさそうです。行ってみませんか?」


「行きましょう」


「にゃー」


 よし、次の目的地決定。


 そうそう、あともう一つ試さなきゃ。猫の両足でウィンドウの左右をタップして触ったまま中心に寄せる。スマホのピンチイン。


 地図がぐわー、っと縮小して見えていなかった外側がウィンドウ内に入ってくる。多い。炉、めっちゃ多い。更に縮小すると何かの輪郭が現れた。海岸線かな? つまりこの外は海ってこと?

 って。おい。これ北海道じゃんか。海岸線の形は知ってるものといくぶん違うが。まさかの生まれ故郷。


 現在地は大体士幌か上士幌のあたりかな?ルストとカルムは帯広と音更? アマナがあるのは大樹町の辺か。さっきの大きな施設があるのは陸別の付近っぽい。一気に土地の解像度が上がったなあ。音更以北滅びてるけど。


 士幌から陸別、って言われた途端に知ってるだけにむちゃくちゃ遠い気がしてきた。現金なもんだ。でもまあ100Kmは無かったはず。遅い馬車でも数日だ。


 ついでにピンチインを続けてもっと縮小して行くと全体が球体になった。ユーラシア大陸もアメリカ大陸もアフリカ大陸も普通にある。これが今の地球か。片手でスワイプすると球が回転する。惑星全体に炉が散在してる。あれ、裏側とかにまだ生きてる炉もあるな。でもこっちとの接続は皆無だ。

 だいたい概要は分かった。まあとにかく、まずは手近の炉からなんとかしないとだ。


「これは一体?」


『これがこの星だ、地球。惑星は分かるか?』


「いえ。まさか世界はこの球なんですか?」


 いやあ知識は天動説止まりか。学校も無さそうだし無理もないが。


『まあそうなんだが、その辺は説明するのが大変だ。おいおいな』


「はい……」


 ショックだろうが、今は混乱させても仕方ない。色々解決したら授業するのもいいかもな。


 それはともかく、ここが地球なんだったら確かめなきゃいけない事がある。


『リーネ、今まで聞き忘れていたんだが、今は何年だ? この世界には年の数え方ってあるのか?』


「年の数え方ですか?」


 リーネはきょとんとして、何を当たり前の事を、と言った感じで答える。


「今年は西暦5006年、ですよ」


 がーん。西暦残ってるのかよ。何故にもっと早く聞かなかったんだ俺。色々謎が解けちゃうじゃねーか。


『西暦5006年……』


「はい、西暦5006年3の月、です」


 マジかー。

 しかし聞かなかったのも迂闊だけど、混乱してたとは言え何で星座とか見なかったかなあ、3000年くらいならそんなに星の位置変わってないよな。端っから異世界か何かだと思い込んでたよ。ラノベ脳だめだな。


『まいったなあ。俺は、リーネ、西暦2030年の生まれなんだ』


 リーネはよく分かっていないようだ。きょとん、としている。


「えーっと、よく聞き取れませんでした。西暦何年のお生まれと仰いましたか?」


『2030年』


「2030年。2030年!? えーっとえーっと、3,000年前!?」


『うん。もっと早く年の数え方を聞いとくんだった。すまん』


「なんと、そんな遠い過去から我々をお救いに来てくださったのですね……」


『いや、そんな大層なもんじゃなく。たぶん事故』


 胸の前で両手のひらの指を組み、目をキラキラさせるリーネ。あかん。誤解がひどい。


 一方で。


「じじい」


 ポツ、っとティアが零した。ほんと酷いな君。


---


 さて。このコンソールは閉じないとなあ。どうすればいいんだろう。


『ステータスパネル、クローズ!』


うんともすんとも言わんな。


『リーネ、ちょっと手伝って』


 リーネに詠唱させる。


「『おまえの記憶の点出、誠に重畳である。しばしの安息に戻るが良い』」


 ヴン。


 ……閉じたし。

 なんだかなー、コマンドが厨二仕様ってなんなん。古代人って頭おかしい。あ、俺から見たら未来人か。どいつもこいつも。


「にゃ」


うんうん、リンも賛成してくれるか。



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