笑い声
翌日。
馬車で神殿から出発した。今度は隠れる必要もないので横を歩く。ティアやリーネと顔を合わせるのが苦しい。
しばらく進むと、昨日の子供たちがいた。駆け寄ってくる。
「巫女様たち、行っちゃうのー?」
リーネは一旦馬車を停める。
「はい、次の巡礼先に行くんですよ」
子供たちは落胆を隠さない。
「えー。また戻って来る?」
「どうでしょうね。いつになるか約束はできませんが、また来られると思いますよ」
嘘ではないが本当でもない。そもそもこの集落がいつまで存在してるかも分からない。
「そっかー。じゃあもう一回猫さん触らせて!」
「仕方ないですねえ。もう出発しなきゃいけないので、少しだけですよ?」
「やったー!」
猫の中の人たる俺にはお構いなく、四方八方からモフられた。ここでは偉人も聖典も関係が無い。リンがひっくり返って腹を出す。ここに響くのは大人には無い笑顔と笑い声。
それを見ていたティアの顔が歪んだ。馬車から降りて立ち尽くす。滅んだ自分の集落を思い出しているのだろう。自分一人が助かった、それは逃れる動機となる感情を持っていたから。と俺は想像している。この笑い合う子供たちを見て、自分の集落ももっと感情を出せていれば、とか考えていそうだ。
そしてその笑い声の中心にいる俺を見る目が、侮蔑から困惑に変わっている。偉人ではない、猫としての俺。
俺も、自分がした事に対する嫌悪感はまだ拭えないが笑顔の子供たちを見ていると「もう少しこの世界にいても許されるのかもしれない」と感じていた。




