第十話 悪夢
愚かだった。
私は何をしようとしていた? このままではいけない。彼を食ってしまう。
私が見せた夢は、見た夢は、始めは本当にただの夢だった。真っ白で、私を見てほしいというただの願望に過ぎなかった。それがその内私ではなく狐が夢を見せるようになり、世界はぼやけて暗くなっていった。
彼が遠く感じる。すぐそこにいるのに、触れられない……。
でも、もう触れたくない。壊したくない。
夏の気が遠のいていく。でもそれでいい。彼の本当の声がまだある内に、私は離れるべきだ。もっと早くそうするべきだった。いや、そもそも触れたのが間違いだったんだ。彼に憑いたのが。
夢に浸かる度に分からなくなっていく。私が。彼が。色が、声が。手を繋いでいた感覚が、段々と薄れていく。それでも。それだから。
私が始めておきながら、今はもう夢に溺れて死にかけている。
神社に戻ろう。そこで、私は……ワタシに、な……。……いや、何を考えている? 狐に私を渡してしまおうなど、正気ではない。あぁやはりもう駄目だ。狐を振り払う程の力もない。
……竜胆さん、烏丸さん。彼女達ならきっと、なつきのこともどうにかしてくれる。私のことはもういい。罰だと思う。だからなつき……君だけでも夢の世界から逃げてくれ。身勝手な私のことなど忘れて、早く現実に戻ってくれ。君は君でいるべきだ。何者にも干渉されず。
……それでも、黙って立ち去った私をなつきはどう思うだろう。
あぁ、最後に謝ることも出来ないのか。私は、本当に……身勝手な鬼だな。
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