番外編一
「あの人達、おかしいわよね」
学校の階段で昼食を摂っていた竜胆は、隣でミニトマトを頬張る烏丸に言った。
彼女らのクラスメイトであるキミツキとなつきには狐が憑いており、その気を食われている。普通なら狐を祓ってやれば済む話だが、これはそんな単純な話ではなかった。烏丸も、うーんと頭を捻る。
「どっちにも狐が憑いとるけど、なつきくんの方には鬼も憑いとるんよね。やけどなんか、なつきくんがその両方に力を貸してしまっとる気がするんよ」
「……やっぱり、諸悪の根源である狐を祓うのが手っ取り早いわよね」
それを聞いて、烏丸はずいっと竜胆に詰め寄った。
「そんなん無理や。今やったらキミツキくんもなつきくんもどっか行ってまう」
「じゃあっ、あなたはあのままにしておくと言うの?」
「怒らんでや、りんちゃん。今手出したら、りんちゃんも痛い目見るよ?」
「……」
それは分かっているらしく、竜胆は口をつぐむ。
「鍵はなつきくんや。あの子が貸しとる手離せば、なるとかなる気がするんよ。それかキミツキくんに頑張って離れてもらうか」
「そうね。……塩飴、明日持ってくるわ。キミツキさん丁度日直だし、隙を見てなつきさんに渡せば……」
「きっかけになるかもしれんね!」
烏丸が笑顔で言う。
「ええ。それでなつきさんが少しでも違和感に気付いてくれたらいいのだけれど」
「まあなんとかなるよ。ならんかったら他の策」
不安げな竜胆を元気づけようとか烏丸は明るく言うと、食べかけのポテトサラダに箸を伸ばした。
それから少し後。
「烏丸、なつきさんの方を頼んだわよ」
「任せてや、りんちゃん」
二人は気合の入った顔で正面玄関からなつきとキミツキが入ってくるのを待っていた。先生にノートを持ってくるよう頼まれた竜胆は、これは二人を引き離すチャンスだと考えたのだ。
同化しそうな程に取り憑いてキミツキの気を食べている狐を今祓えば、狐は当然だがキミツキもいなくなる。そしてキミツキがいなくなれば、間違いなくなつきは彼を追いいなくなるだろう。そうなれば何も救えたものではない。この間塩飴を渡したなつきに何か変化があれば良かったが、特にこれといったものはなかった。その為二人は目標をキミツキに変更し、「離れてくれないか」と言ってみることにしたのだ。少なくとも彼はなつきよりは何が起きているかを把握しているようだし、言ってみるだけ言ってみてもそこまで問題は起きない筈だと。
「あっ来た!」
烏丸が下駄箱を指さす。彼らはいつも通りに階段があるこちらへと向かってくる。
「じゃあ私は行ってくるわ」
「うん。頑張ってな、りんちゃん」
竜胆は深呼吸すると、キミツキ目指し階段の陰から踏み出した。




