第90話 償い
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アイネには何が起こっていたのか全く分からなかった。突然目の前に見知らぬ女が現れ、自分に杖を向けて来た。
その瞬間、リタがアイネと見知らぬ女の間に飛び出してきた。そして、その背後からは眩い光と共に魔法が放たれ、リタの背中を焼いていく。
それでもリタはしきりに「大丈夫」とアイネに語りかけていた。そんな状況の中、アイネが出来ることなどなかった。涙が溢れ出て止まらなかった。
やがてリタの声も聞こえなくなり、ハルがこの場に駆けつけてきた。その瞬間、リタは最後の力を振り絞り、アイネをリタが放り投げた。それは囲いの魔女の魔法がリタの体を貫通する直前のことであった。
その後、ハルはリタを地面に埋めて小さな墓標を建てた。アイネにはその意味が分かった。リタはもう。それでも、アイネはハルに縋った。だが、その声も届かぬほどハルは囲いの魔女を殺すことに夢中だった。
捨て置かれたアイネはただただ囲いの魔女をじっと見つめていた。それは生きているか死んでいるかすら判別のつかないほど生気の宿らぬ目だったという。
そんな中、ハルが指を鳴らした。その瞬間、何かが全て終わった。そんな感じがするのだがアイネには何が終わったのかすら、いや、何が始まっていたのかすら分からなかった。だが、これで終わりでないのは分かっていた。またここから何かが始まるんだと。
「さぁて、幻想郷千年ツアーは楽しんでくれたかな?あぁ、安心するといい。お前の体には指先1つ触れてないからな」
ハルは囲いの魔女にそう告げた。囲いの魔女はそんなハルに酷く怯えている様子だった。
先程まで突破口が見えたとはしゃいでいた囲いの魔女が怯えている姿を見て、アイネは何故かすごく心地よかった。アイネの目は元の通り幼い輝きを取り戻していた。
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ディアンヌは悔やんだ。土壇場でミスをしてしまったと。元々はハルの居る座標に転移魔法を組む予定だった。しかし、囲いの魔女の訪れが思ったよりも早かったのだ。ディアンヌは仕方なしに最後に確認したハルの座標に囲いの魔女を転移させてしまった。そんな安直な考えが悲劇を生んだのだ。
そして、その数分後報告が入った。リタが死んでしまったと。その時、ディアンヌに焦りはなかった。「あぁ、リタで良かった」と安心した。だが、悔やんではいた。ミスをしなければリタがあんなに辛い思いをしなくて済んだのにと。
その直後、ディアンヌは耳鳴りのようなものを覚えた。そして、ディアンヌは理解した。「あぁ、許されたな」と。そして、ディアンヌはハルの寛大な心に感謝すると共に酷い疲労を覚えた。
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ハルは同時に4人を同じ幻覚の中に閉じ込めた。アイネ、ディアンヌ、囲いの魔女である。
まずは囲いの魔女。これは苦楽の狭間に置いた。
毒を飲ませ、ありとあらゆる不快感と痛みが目まぐるしく入れ替わる。途中、針に刺し溶岩に落としたりもした。とにかくあらゆる苦を味合わせた。
アイネは桜並木の元に誘った、楽と極楽の狭間である。ハルの本体は大体はそこにいた。
まずはアイネに謝罪した。ここで行われていることは意識を取り戻せば忘れてしまうことを知っていても謝らなければならなかった。
そして、アイネの話を永遠と聞きながら動物と戯れた。初めは悲しみに暮れていたアイネもハルの心からの謝罪、そしてこの空間の雰囲気のお陰で少しずつ気を取り戻して行った。
ディアンヌは苦の終点に置かれた。真冬のびゅうびゅうと音をたてて吹き荒れる白樺の木が生える雪山に取り残された。そして、目の前の看板にはこう書かれいた。
“八つ当たりだ。許せ”
ディアンヌの目からは涙が溢れ出た。その涙もじきに凍りついていく。それでもディアンヌは看板に向けて1000年もの間土下座をしていたのだという。
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そして最後の1人は他ならぬハル自身だった。最初に飲んでいた酒は囲いの魔女の飲んだ毒と同じものだった。囲いの魔女と同じ苦痛を受けながらハルは苦の終点まで1人で歩き、看板を立てた。そして、またもや苦、楽を歩き渡って極楽へと向かう。そこでアイネに謝罪をして心を癒すことに尽くした。
ハルにはこれ以上のリタへの償いを見つけられなかった。リタが死んでしまったのは全て自分のせいだ。
ハルがここに連れてきていなければ、ハルがメリーさんにあんな手紙を送らなければ、メリーさんを受け入れなければ、そしてしっかりと役目を果たしていれば。
それは全て事実であり覆しようのないものだ。どれほどリタに謝罪しようが、どれほどこの身をもって償おうが足りない気がした。そして、ハルは一生を持って償うことを決意した。
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とある五畳半ほどの部屋に真っ赤に燃える鳥と少女が並んでモニターを凝視していた。
ある程度映像を見た後に、鳥がクリンと少女のほうを向き問いかけた。
『んで、どうするんじゃ?リタよ』
「もぢろん゛〜!ハルじゃまのもどにがえりまずーーー!!」
『ふぉっふぉっふぉっ!それがいいじゃろうのぉ。お主はワシが無理やり勇者の転移召喚によって連れてきた者じゃ。だから、もうそろそろ元の世界に戻したろうと思っていたのじゃが、必要ないようじゃの』
「はい゛っ!ハルじゃまに一生着いていきますーーー!」
『そうじゃの、それがいいじゃろうて。では、復活の儀を執り行う・・・の前に。まずはお主の体にかかった無数の呪術を取り除こうかの』
鳥はそう言うとおもむろに涙を流し始めた。その涙の粒をリタは受け止めて飲み干した。
「うえー。やっぱり気持ち悪いです」
『なっ!気持ち悪いとは何事じゃ!』
「気持ち悪いものは気持ち悪いんですーっ!」
『あぁ、分かった分かった。ほれ、そろそろ行かんとおぬしの主人の精神が破滅してまうぞ』
「あっ!そうでした!ハル様っ!今行きます!待っててくださーい!」
リタは背後の扉をバァンと開けていそいそと飛び出して行った。
『ふむ、少し寂しいもんじゃの』
鳥が寂しさから涙を流そうとしたその時、バァンっという音と共にリタがまた戻ってきた。
「ふえぇぇん!土に埋められててまたしんじゃいましたぁぁぁ!」
『・・・分かった。お主に1時間の無敵状態を付与する。これ、ワシの体力かなり削るんじゃぞ?』
「ありがとうございますぅ!では、行ってきます!」
やはり、1人の方がいいかもしれんのっと思い返す。不死鳥であった。
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次はリタの過去の話です! 中々話が前に進みませんが許してくださいっ!
あと、もうすぐ100話ですね。せっかく50話でタイトル変更したのでまた変更してやろうかな、と思ってます。
・・・まぁ、ノープランなんですけどね。




