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第84話 魔導書作成②


シャルルが瞑想に戻った後、ヴィーナスを揺すり起こして再び擬似魔導録の講義がスタートした。


「と、ともかくですね! 魔力を圧縮するのは出来るだけ普通の魔力に影響を与えないためなのでマナになる直前ぐらいで止めて頂けませんか?」


「えっ? マナって魔力に全く干渉しないよ?」


「へっ? ど、どういうことですか?」


んー? あっ、そういやこれをシャルルに説明した時まだ未発見の事柄だって言ってたっけ。


「あー、マナって魔力と不干渉なんだよ。俺の体内をグルグル回ってるマナと魔力は同じ所を通ってるんだけど一切混じったり自然に変化したりしないからね」


「そ、そうなんですか・・・ なら、マナでも大丈夫です。というよりマナの方が成功率が高いですね」


まぁ、要は魔力に干渉しなければ良かったのか。俺にとってはその方が好都合だな。俺はマナを液体にして、霧吹きのように満遍なく羊皮紙に纏わせる。


「えーっと、ではそれで魔導紙は完成です。擬似魔導録にはその魔導紙が最低でも30枚必要ですのでそれもよろしくお願いします」


俺はヴィーナスの言う通りに残り29枚の魔導紙を作成する。俺がそれをヴィーナスに渡すと、ヴィーナスが魔法を使いそれらを一瞬で本の状態にしてくれた。しかも少しキュートな表紙つきだ。


「はい! では、次が1番難しい工程です! 魔導紙に魔法陣を彫っていく作業となります!」


ほう、魔法陣とな? 魔法陣ってあの✡みたいなマークが真ん中にあるやつかな?


「魔法陣とは計算で言う式のようなものです。

簡単な魔法なら工程や理解をすっ飛ばして解答を導き出すことが出来ますが、難しいものになってくると理解や構築が不可欠となってきます」


へー。そうなんだ。俺全く気にせずに魔法を開発してたから知らなかったや。


「そして、擬似魔導録とはこの魔法陣を体の魔力に無理矢理覚え込ませるものなのです」


なるほど。魔法陣の形状を魔力じたいにすり込ませることによって魔法を撃てるようにするってわけか。


「普通なら魔法陣を手動で彫っていきます。

ですが、ダンジョンマスターは魔法陣を全く理解せずに魔法を編んだり、使ったりしているとディアンヌさんから聞いてます

そこでかなり難しい方法なのですが、この本に無理矢理魔法の跡を残します」


ふむふむ、書けねぇなら発動した瞬間に現れる魔法陣を魔導紙に埋め込めっていう発想か。奇抜だな!


「私もこの方法はまだ出来たことがないので見本を見せることは出来ません。

ですが、話によると本を自分の体と見なして魔法を発動し、さらに魔法の起点をその本に移すことで魔法陣を焼き付けることが出来るそうです」


「えーっと。それだけ? つまりは本に纏わせたマナで魔法を発動しろってことでしょ? 何が難しいの?」


だって、マナって俺の体の一部だよ? そんなの普通にできるけどそれじゃあダメなのかな?


「ふふっ。凄い自信ですね。でも、これはそう簡単には行きませんよ! 焼き付けることが可能だとしても線の歪みがあればやり直しですからね!」


なんでヴィーナスは俺が苦労しそうなのに嬉しそうなのだろうか。


「まぁ、1回やってみるよ」


うーん、どの魔法にしようかなぁ。あっ! そうだ。ミスラ達にミキサーの魔法覚えて欲しかったんだよなぁ。俺じゃ上手く説明出来ないし、ミスラ達も魔法を作るってのは出来ないみたいだし、これが出来ればさらに手間が省けるからね。


「よしっ! じゃあ行くよ!」


俺は保管庫から玉ねぎを1つ取り出し、魔導紙に纏わせたマナを使ってミキサーの魔法を発動し、玉ねぎのみじん切りを作る。


「おぉ! これは細かい所までしっかりと作られている素晴らしい魔法ですね! 流石はダンジョンマスターです!」


言えない。こんな尊敬の眼差しを向けているヴィーナスにこの魔法を作るのに1晩もかかったなんて絶対に言えない。ここはドヤ顔で胸を張っておこう。


「では、魔導紙を確認させて貰いますね!」


ヴィーナスはペラリと魔導紙で作られた本のページをめくる。1枚目をじっくりと確認して2枚目へと移る。2枚目もじっくりと見た後3枚目へ。

なんかヴィーナスが汗ばんでるけど大丈夫かな? あっ、だんだんめくる速度が速くなっていってる。てか最後の方はよく見てないでしょ!


ヴィーナスは最後まで確認し終えるとパタンッと本を閉じ、ゆっくりとこちらを向く。


「え、えーっとですね。ここまで複雑で繊細な魔法をどのぐらい掛けて開発なさったのですか?

私の鑑定によればダンジョンマスターの年齢は数ヶ月と出ているのですが」


まぁ、この世界に来てからだと数ヶ月だよね。

てか、人の事勝手に鑑定するなんて常識がなってないよ! まぁ、この世界の常識全く知らないんですけどね。何となくだよ。何となく。


でも、この魔法そんなに複雑だったっけなぁ? 別に属性を複合してる訳でもないのに。まぁ、でも確かに俺が作った魔法の中では1番時間がかかったよね。


でも、これって1晩って言っていいのかな? ねぇ、どう思う? シャルル。


「私はなにも聞こえません。瞑想中で何も聞こえません」


いや、その発言で聞こえてることモロバレだよ? まっ、いっか。言っちゃえ!


「1晩です」


「はい?」


「だから、1晩です」


「えーっとー。 その、隠語とかではなくて?」


「1晩です。正真正銘1晩です」


俺がそう言うとヴィーナスはまたもや固まってしまった。やっぱりこうなるよね。だが、今回のヴィーナスは一味違った。


「・・・はい、やっぱりダンジョンマスターは凄いですね! 魔法陣がくっきり彫れてますよ! 流石です! マナの扱いを褒められるだけはありますね!」


そう、スルー。ヴィーナスはこの土壇場でスキル:スルーを習得したのだ!


・・・まぁ、知らないけどね。


「では! 次に最後の工程に入ります! 次はこの彫った場所になるべくニュートラルな魔力を流し込んでいきます!

ニュートラルな魔力とは流れる魔力をすんなり受け入れ蓄える。さらに他の魔力を変化させないもののことです!

まぁ、ダンジョンマスターの魔力操作なら余裕ですね!」


なんかヴィーナスのテンションがおかしくなってるけど突っ込んだ方がいいのかな? いや、面倒くさそうだからやめておこう。


さてと、ニュートラルな魔力についてだがこれ、妖石の性質と同じじゃね? 言うなれば妖気の性質と同じじゃね?


・・・なら妖気でいいんじゃね?


てことで妖気を流しこんじゃいました! やったね! なんかキュートだった表紙が禍々しい雰囲気を醸し出し始めたけど多分成功だよね!?


・・・一応鑑定だけしておこっか。


妖風大全集(ミキサー):ミキサーの魔法が詰め込まれた魔導擬似録・・・だったが、謎の力を詰め込まれた為、一気に進化した。魔力を流すとミキサーの魔法を覚えられる他、スキル:旋風を入手する。


つ、旋風? なんじゃそりゃ? これも鑑定しておこうか。


旋風:自分の発動する風魔法の威力を1.5倍に引き上げる。またこのスキルを発動することで空を走れるようになる。


・・・わぁお! いっつわんだふーる!


すっごーい! ほんにまりょくをながすだけでこんなつよーいすきるがてにはいるんだねー!


「・・・ダンジョンマスター? 私言いましたよね? ちゃんと言いましたよね? ニュートラルな魔力を流してくださいって」


あっ、なんかヴィーナスが怖い。めちゃくちゃいい笑顔なんだけど、どこか寒気がする。


「誰が妖気を流せって言ったんですか? シャルルさんですか?」


俺がシャルルに助けを求めるように顔を向けていたらシャルルに攻撃の矛先が向いた。


「いえ、私は瞑想していましたので」


「ええ、ええ! そうですよね! シャルルさんはありえません」


うん、身代わりになってくれないのは知ってたよ。


「と、なると。ダンジョンマスター? あなたしかいませんね?」


「はい・・・やりました。ニュートラルな魔力とか訳わかんなくて、性質が同じだから妖気でいいやって」


あっ、やばい。般若が現れた。


「へぇー。妖気とニュートラルな魔力が同じ性質なんですか。じゃあこれはなんですか?」


ヴィーナスが妖風大全集を指さして尋ねる。もちろん俺は無言を貫く。


「私、ディアンヌさんに言われたんですよ。ダンジョンマスターが訳の分からないもの創り出さないようにって。ねぇ。

いや、私も悪かったのかもしれません。マナを許可したのがいけなかったのかもしれません。

でも、でも! なんで私に断りなく妖気を魔導紙に流し込んだりしたんですか?」


返す言葉もございません。


「第一、ダンジョンマスターは妖気を甘く見過ぎです。どうするんですか?

妖気がこの本から漏れ出て野生の魔物が妖怪になって町を蹂躙したりしたら! あとは、この本の事がエルフに知られて世界中からこの島が狙われたりしたら! どれだけの血が流れると思っていたんですか!?」


た、確かに。そんなこと全く考えてもいなかった。そう考えるとすっげぇ危ないことしてたんだな。俺。反省。


「・・・分かりました。もう分かりました!

これからダンジョンマスターには徹底的にマナーとルール、そしてこの世界の成り立ちを1からマスターしていただきます。

でないとこの世界が潰れかねません。なので私はこの世界を救うという心づもりで挑みます!

ダンジョンマスター? 分かってますね?」


「・・・」


正直嫌です。成り立ちとかはいいんだけどマナーとか絶対嫌です。


「返事はぁ!!!」


「はいぃぃぃ!」


まぁ、うん。抗えないよね。怖いもん。シャルルもいつの間にか逃げ出しちゃった。


「はい、いいお返事ですね。それじゃあ、もう昼時ですしみんなで お・行・儀・良・く! ご飯を食べましょうね? ダンジョンマスター?」


「は、はい」


「返事ぃぃぃ!!」


「はい!!!」


「いいお返事ですね」


・・・ヴィーナスこのダンジョンに置き去りにしちゃダメかな?

ここまでご覧頂きありがとうございます!

よろしければブックマーク登録などよろしくお願いします!


さぁて、鬼の教官出現ですね。ハルの自堕落な生活に終止符がうたれる? まぁ、ハルは大人数の食事を作るなどはしているんで言うほどダラダラしてないんですけどね。


あっ、あと、最近思ったんですよ。ブックマーク登録のお願いって前書きにした方がいいんじゃないかって。

だって、いちいち上まで上がってブックマーク登録って面倒じゃないですか。

でも、本文を読んでもらう前にブックマーク登録お願いするのもなんだかなぁって気持ちもあるんですよねー。

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