第74話 クラフ島の獣人
俺達は洞窟にダンジョンを建てた後スーちゃんに乗ってディアンヌ達のいる所に向かった。
「もう・・・疲れたよ・・・」
なんとか人家のある街のような場所に着いたものの、スーちゃんの速度が速すぎて俺はしがみついてるだけで必死だった。勿論、ハリネズミは守り切った!
あれ? マーシーが居ない?
・・・マーシーはどうやらどこかに落ちてしまったようだ。可哀想に。
「おい、落ちてねぇぞ!」
「うわぁ! びっくりしたぁっ!」
マーシーが俺の体からニュルっと出てきて抗議してきた。
「ご主人様の身体に私達が戻れることを知らなかったんですね」
そしてシャルルもいきなり俺の目の前に現れた。多分あの俺が前作ったアクセサリーの効果を使って現れたのだろう。
「まぁ、その話は後ですね。取り敢えずこちらに来てください。色々面倒なことになっています」
えー、面倒事? なんだろな。別に面倒事が起きるようなこと・・・あっ、あったわ。スーちゃんが誰かぶっ倒してきたんだった。絶対それじゃん。
そうしてシャルルの案内で俺達が街をずんずんと進んでいくと小さな噴水のある広場についた。
噴水は小さいながらも綺麗な模様が掘られていてとても目をひかれるはずなのだが、残念な事に俺は他のことに目が釘付けになってしまっていた。
「えっ? なに? これ」
俺が見たもの。それはドヤ顔したメリーさんとミラ、サラ。そして何故か恥ずかしがっている猫耳アイネとチロ。その横で苦笑いを浮かべているディアンヌ達。
それを取り囲むようにひれ伏している色々な獣人たち。そして、あからさまな金持ちって感じの服を着たホワイトエルフやダークエルフが泣きじゃくっている。
「はぁ、あの子達には手加減するように言ったんですけどね。あの様子だとあんまり効果はなかったみたいですね」
手加減? つまりアイネとあのエルフ達が喧嘩して泣かせちゃったってこと?
ドヤ顔してるってことはメリーさんも参戦したんだろうね。メリーさんが参戦しちゃダメでしょ。そんなのエルフ達に勝ち目ないじゃん?
「シャルル、これどういうこと?」
俺がシャルルの方を向いて問いかけるとシャルルは難しそうな顔をして答えた。
「周りの獣人達がひれ伏しているのはエルフの前での決まりだからですね。まだ、ディアンヌの発布した法が伝わり切ってないためでしょう。
ですが、エルフ達が泣いている理由は分かりません。アイネ達が絡まれていたので撃退したのでしょうが、それ以上のことはなにも」
なにその江戸時代みたいな決まり。エルフってほんと頭おかしいんじゃないの?
法に関してはディアンヌもこの島のお偉いさんにしか通達してないだろうし、このままほっといてもディアンヌの作った法律が無かったことになると思う。まぁ、俺ディアンヌがどんな法律作ったのか知らないんだけどね。
まぁ、まずはひれ伏している獣人からなんとかするか。地面に額を擦り付ける乗って痛いもんね。
俺が獣人達に話しかけようとすると、それをシャルルが手で制した。
「獣人の格好のご主人様がそんなこと言っても聞く人なんていませんよ。ここはエラスに任せましょう。それに人見知りでしょう? 無理しなくていいんですよ?」
あっ、そっか。そういや俺って猫の獣人だったんだよね。同じ立場のやつに解放されたぞ! とか言われても信じられないよね。
シャルルはそう言うとエラスに視線を向けた。
今まで苦笑いを浮かべていたエラスだったが、自分に白羽の矢が立つとは考えてなかったようで、人差し指で自分を指して「僕っ?」とシャルルに確認していた。
それに対しシャルルが深く頷くと、エラスは諦めたようにため息を漏らし自身に魔法をかけホワイトエルフの姿に変身した。うわっ、別人じゃん!
「あー、コホンコホン。獣人諸君、顔を上げたまえ」
エラスがそう言うと獣人達がゆっくりと顔を上げる。うへー、みんな額が赤くなってる。どんだけ強く頭を押し付けてたんだよ。
「私は君たちに重大な報告をしに来た。単刀直入に言おう。この島はブリクストの支配から逃れ、君たちと私達エルフ、そしてほかの種族は法の上で平等な立場に立つ。
よって、これから君たちは私達に会う度にひれ伏す必要も無い。他の細々した情報は決まり次第話そう。なにせまだ議論が進んでいないものでね。
と、言うことだ。エルフの少年、少女達よ。これからこの島で獣人に勝手に罰を与えることは許されない。今回は見逃してあげよう。帰りたまえ」
顔を上げた獣人達は全員ポカーンとしたまま動きそうもない。それはさっきまで泣きじゃくっていたエルフの子供達も同じだ。
まぁ、いきなり今までしてきたことが違法になるとか辛いよな。特に上に立っていた者にとっては。
でも、間違ったことは正さないと行けないしね。それを急激に行うか段々慣らしていくのかの差だ。
今回の場合は上、つまり俺達が圧倒的な力を持っているから急激に行って押さえつける方が楽なのだろう。でも、それだと血が流れそうなんだけど大丈夫かな?
奴隷商人は各地を転々としてるだろうしなんとかなりそうだけど、獣人の管理をする人とかはどうにもならんだろう。
奴隷廃止に加え、身分まで同じになるとなったらもう反乱起きる気がプンプンするんだけど。
「大丈夫ですよ。その人たちの働き口も会談でディアンヌがなんとかしています。
なにやら金品を支給し、この国から出ていくものに関しては仕事においても優遇されるようになっているようですね」
へー、そんなことしてたんだ。
なら大丈夫・・・なのか? 分からないけど俺にはどうしようもないしな。様子を見るとしよう。
てか、他の国もよくそんな条件飲んでくれたな。普通絶対飲まないよね、そんな条件。
あっ、ポカンとしていた獣人の1人が手を上げた。なんかてろーんと垂れた耳をもつ女性だ。尻尾もふわふわしてる。エラスが発言を許可すると女性は喋り始めた。
「あ、あの。この島がブリクストの支配から解かれたのは分かりました。なら次はどこの国の支配下に置かれるのでしょうか」
うん、そりゃ気になるよね。
「この島はこれからハル自由国の統治下に置かれる。まぁ、統治とは言っても自治はしてもらうよ。こちらには問題児がいるせいで手に空きがないからね」
エラスがそう言うと獣人達はなにやらザワザワし始めた。ハル自由国って? とか 国を困らせる程の問題児って? とかいう話し声が聞こえてくる。 すいません。多分その問題児、僕です。
そんな風にガヤガヤしていると、今度は尖った角を持ち、とんがった耳を持つムキムキの男性が手を上げた。この人なんの獣人なんだろう。
「法の下の平等って言ったがどういうことだ? それは俺とお前も平等だってことなのか?」
「勿論。僕が君を殺しても、君が僕を殺してもどちらも同じ法で裁かれる。それだけの事さ。つまりは全ての人に同じように法が適用される。
勿論、特定の人種を対象にした法が敷かれることもない」
「なるほど、分かった。あともう1つ。俺達獣人には仕事がない。所詮はエルフに飼われているという立場。今までは農作業や漁業などをしてきたがその土地も道具もエルフのものだ。そこら辺はどうしたらいいんだ」
「それなら大丈夫だ。この島にダンジョンが見つかった。力に自信があるものは冒険者に、それ以外のものはダンジョンで取れたものを加工したりする仕事がある」
エラスがそう言うと獣人は目をまん丸くして驚いた。
「まぁ、それが安定するまではこちらで面倒を見るから安心してくれ。さぁ、今日はとにかく解散だ」
エラスがそう言うと、獣人達は次第に立ち上がり同じ方向へと歩いていった。
そして何故か俺もその方向へと放り投げられた。
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