第73話 アイネの悩み
今回ちょっと短めです! すみません。
俺達は衝撃的な現場を目撃してしまった。さっきエラスが指をパチンと鳴らして消えた所にシャルルがチョップをすると訳のわからない空間が現れて、シャルルが入ると閉じてしまった。
その一部始終を見ていた俺とアイネ、メリーさん、そしてドワーフ達は驚きのあまり声すら出なかった。そんな俺達に喋りかけてきたのはディアンヌだった。
「あっ、マスター。こんな所にいましたか」
ディアンヌを見た瞬間メリーさんは俺の後ろに隠れてしまった。まぁ、あんなことがあった後だからね。仕方ないよね。
「どうしたの? 何か用?」
「はい。クラフ島に諸々の統治方針を発表してきましたのでそのご報告に。
あと、5時間後にその島に向かいますから準備をお願いします」
「えっ!もうそこまで進んでるの!?」
確か島の名産品とか昨日の段階で探してたような状態だったよね?
「えぇ、頑張りましたよ。なにかボーナスかなにかでも欲しいぐらいには」
「分かった。俺に出来ることならなんでもするよ?」
「ほんとですか!? うふふ、頑張ったかいが有りましたね。ルージュ達と一緒に考えておきますね」
そういうとディアンヌはふわふわと飛んでいってしまった。
「ハルさんまた行っちゃうんですか?」
アイネが寂しそうな目でこちらを見てくる。
俺ってそんなにアイネに慕われてたっけな?
アイネはアイネで俺の事を慕ってくれていたのだろうか? それともまた魚地獄に陥るのが嫌なだけなのだろうか。
「うん、ちょっと島を出ることになるね。良かったらアイネも来る?」
「アイネちゃんが行っていいなら私も行っていいよね! 私行きたい! ハルさんにもっといっぱい戦い方教えてもらいたいの! それでみんなに褒めてもらうの!」
アイネの返事を聞く前にミラが手を上げてぴょんぴょん飛びながらそう言った。それに同調してチロとサラも「私も!」「私も!」と裾を引っ張ってくる。
可愛いぃ・・・はっ! 違う!俺はロリコンなんかじゃないからな!
うーん、でも確かにアイネを連れていくならミラ達も連れていく方がいいのかもしれない。
「うーん、じゃあムガル達の許可が出たら着いてきてもいいよ。今から行く場所はクラフ島って言う場所だからね」
俺がそう言うとミラ達と何故かメリーさんも「わかったー」といって走って言ってしまった。どうなることやら。
「あの、クラフ島って獣人の島なんですよね?」
「うん、ディアンヌがそう言ってたよ」
するとアイネはしょぼんとした感じで俯いた。
「なら、私は行かない方がいいと思います。ハルさん達と会えないのは辛いですけどね」
悲しげな笑みを浮かべるアイネ。確かにアイネはエルフの中で爪弾きに会う種族だ。それに今まで奴隷として扱われてきた獣人達もエルフであるアイネのことを良くは思わないだろう。そんなことは俺がいくらバカでも把握している。
だが、俺は敢えて。アイネにこう答えた。
「えっ!? なんで? 来たいならこればいいじゃん」
俺がそう言うとアイネは目を見開いたが、その後一生懸命俺がさっき考えたことを丁寧に説明してくれた。
「ね? 私がいるとハルさんが動きづらくなっちゃいます」
アイネはもう涙目だ。本人に事情を語らせるのはちょっと酷かったなと反省しながら俺はアイネに説明する。
「あのね、アイネ。俺もそこら辺のことはちゃんと分かってるよ。
でもね、俺の考えからするとどう見てもアイネのいる立ち位置はおかしいんだ。
確かに理不尽なことに耐えるのも人生では必要だよ? でもね、何とかして解決出来る理不尽を解決しないのは単なるバカだよ」
俺がそう言ってもアイネの顔は暗いままだ。
「でも、私なんかにどうにかできる事じゃ・・・」
「ほんとに? クラフ島の持ち主である俺にお強請り出来て、それを殆どの場合受け入れて貰えるアイネが自分の島での立場ごときを何とか出来ないの?」
「でも・・・そんなのいっぱい迷惑かけちゃうじゃないですか」
やはり、そのことを気にしていたか。でも、アイネの場合俺だけでも何とかなりそうな気がするんだよな。隠滅とかで。
まぁ、でもここは適当にディアンヌに押し付けるアピールしてそんな苦労しないよーアピールするか。
「いいんじゃないの?」
「だって、俺にお強請りしたってどうせやるのディアンヌ達だよ?」
「それならディアンヌさん達に迷惑がっ」
「ヒヒヒ、ディアンヌ達は俺というクソでかい邪魔なお荷物背負ってるからアイネのワガママなんか豆粒ごときの話なんじゃない? ねっ? ヤミ」
「おおぅ、主にバレてた。一生の不覚」
芝生の上で寝っ転がっているヤミに問いかけるとヤミは微笑みながら答えた。
「バレたって芝生で匍匐前進して近づいてきたらそりゃ気づくわ! 第一スキル使って隠れようともしてないだろうが!」
「でも、主の言う通り。主の制御物凄くめんどくさい。それに比べたらそんなの簡単」
「ヤミ、いつもよりなんか気合い入ってない?」
「私が動くか動かないかは気まぐれ」
そんな俺とヤミのやり取りをポカーンとして見ていたアイネだったが意識を取り戻したとたん、それを断る。
「いえいえ! そんな忙しい所に私なんかのことを!」
ヤミはそんなアイネを呆れたように見つめながらため息をつく。
「そんな遠慮ばっかじゃ人生忙しい。ねっ、エロス」
「エロスはやめて欲しいかな、アハハ」
ヤミがそういうと俺の真横が突然光り始め、エラスが現れる。
「きゃあぁぁぁ!」
「うおぉ! エラス! いつからそこに!?」
「ついさっきからだよ、驚かせてごめんね。
で、どうにか出来るかなんだけど根本的なものは直ぐには無理だね」
アイネはそれを聞くと「ですよね・・・」と寂しそうに笑う。
「でも、ある程度の応急処置なら可能だよ。ほら、こうやってね」
エラスが指を鳴らすとアイネの頭の上に光球がふわふわと集まり始める。その後ポンッという音と共にアイネの頭から猫の耳が生えてきた。
「アイネから猫耳はえてる! すげぇ! 俺とお揃いだ」
「えっ? なんで?」
混乱しまくるアイネ。そりゃそうだよね。初対面の男の人が指を鳴らしたら自分の頭に猫耳が生えてきたんだもんね。
「はははっ、でもこれで大丈夫だよね」
「うん! これでアイネも獣人の仲間入りだ! アハハ」
「はい! ありがとうございます! この耳一生大切にします!」
アイネの頬が赤いのは気の所為だろうか。もしかしてエラスに一目惚れしちゃったの? まぁ、確かにエラスカッコイイから無理もないかな。
「それは1日で消えちゃうから一生は大事に出来ないかな。でも大丈夫。旅には僕もついて行くからね。毎日かけてあげるよ。この程度の魔法寝ててもかけれるからね」
「あぁ、今回はエラスが付き添いなんだ。よろしくね」
「私も。あとシャルルとディアンヌ」
「そうなんだ。リューは来ないの? 最近会ってないから心配なんだけど」
「リューは島の護衛っていう最大の任務がある。島を動かせるのは主除けばリューしか居ない。リューを連れていく訳にはいかない。それにリューはダンジョンの魔物と仲がいい。心配要らない」
どうやら俺が思ってる以上に神の中での役割分けってのはちゃんとしているようだ。
「ハルさん、私もついて行っていいでしょうか?」
「うん、勿論! じゃあ、ミラ達の所に行こうか。きっとムガル達が渋ってるはずだから援護射撃しに行こう!」
「はい!」
そんな返事をするアイネの顔はとっても晴れやかだった。
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