第69話 囲われの魔女
温泉俺は晴子に分けてもらったホットミルクをすすりながら聖水を作っている。
材料はリーフィア達がゲートを使って取ってきてくれた。あと数日したら島の農場で完全に賄えるようになるそうだ。
「んあー、それにしても退屈だなぁ。喋り相手も居ないしな」
今は草木も眠る丑三つ時。しゃべり相手なんて居るはずもない。製薬自体は嫌いじゃないけど単純作業の繰り返しは流石に飽きが来る。
「もうノルマ自体は達成してるし、ちょっと気分転換に散歩でもしようかな」
俺は海岸に向けて歩き出す。
「ここに来た本当に初期の頃は漂流物に助けられてたよなぁ」
そうだ。精霊達がここに初めて来たのも漂流物だったんだもんな。
「あれ? これ漂流物じゃないか? あれ、ここにも、あっここにも」
島が発展してから漂流物のお知らせも無くなったし、俺も全く気にしてなかったからいっぱい溜まってたんだな。
俺は結局漂流物と思わしき瓶を15個ほど拾った。
「あー、このドキドキ感久しぶりだなぁ。何が入ってるんだろ」
俺が瓶を開けるとそこには一通の手紙が入っていた。
お返事ありがとうございます。メリーです。突然ですが。
い ま あ な た の う し ろ に い る の
「えっ?」
俺が恐る恐る後ろを振り向くとそこには真っ白な細い足首があった。
「ぎゃああああぁぁぁぁぁぁっ! お、おばけーーー!」
「えっ!? いや、ちょっと待ってよ!」
ヤバいって! ヤバいって! 早く逃げなきゃっ! ホントに! やっぱり丑三つ時には何かが起こるんだ!
俺は無我夢中でみんなの眠っている建物へと走り出す。後ろからなにやら追いかけてくる足音のようなものが聞こえる。その足音聞く限りメリーさんは俺より走るのが速いようだ。
いや、ほんとにっ! 足音近づいてきてるし! 嫌だっ! 怖いって! ほんとやめて! ねぇ!
ガシッ! 遂に俺はメリーさんのタックルの餌食となってしまった。俺とメリーさんは反動で共に地面に転がる。
「いやぁぁぁ! ごめんなさいぃぃ! たべないでぇ!」
「どうしたんですか! ハル様!」
俺叫び声に反応して飛び出してきたのはリタだった。その右手には何故かフライパンを持っている。
「お、お化け、、、」
「お化け? ってその女の子ですか?」
リタがメリーさんを指さしながら聞いてきたので、俺は首を縦に振る。ちなみにメリーさんはまだ俺にしがみついたままだ。
「私はおばけなんかじゃないよっ! ほらっ! よく見て! 足があるでしょ!」
足がないのは幽霊でしょ! 足があってもお化けはおばけなんだよ! マヌケ!
「と、とにかくハル様から離れて下さい!」
そう言ってリタがフライパンを持って俺達の方ににじり寄る。絵がシュールすぎる。
「わ、分かったよ! だからその鈍器しまってよ」
メリーさんはそう言うとがっしりと俺を掴んでいた腕を緩める。そのおかげで俺はようやくメリーさんから抜け出すことが出来た。
「こ、怖かったぁぁぁ。ありがとーー! リタ」
俺はリタの足に縋り付く。傍から見たら俺変態だよな。でも今は女の子の体を持ってるからそこまでやべぇ奴には見えないのだ!
「あなたは一体何者なんですか?」
リタがメリーさんに問いかける。メリーさんはおばけじゃないって言い張ってるけど絶対メリーさんはおばけだ。
だって都市伝説みたいなのであったもん。夜中メリーさんから電話がかかってきくる度どんどん近くなって行くって奴。んで最後には連れ去られるみたいな。
「私はメリーさん。まぁ、あなた達は私のことを囲われの魔女って名前で知ってるでしょうけどね」
囲われの魔女? なんだそれ。
「あなたが囲われの!? ま、まさか! い、いえ、でもそんなはずはありません。一体なぜ・・・」
なんかリタが混乱してる。俺にはなんのこっちゃ分からないのでどうしようもない。
「あぁ、囲われの魔女の方の名前を知ってる人は混乱するよね。てことはハルさん? あなたは囲われの魔女ってのを知らないんだ」
「うん、全く」
「それでもメリーっていう名前には聞き覚えがあるんじゃない?」
「あるよっ! 怪談話の中でな!」
「ええっ!? 違うよ! 私幽霊じゃないもん! 私この島のプカプカさんに許可貰ってここまで来たんだもん! 前に手紙を詰めた瓶を流したら翌日枕元にお返事が返ってきたんだから!」
ん? 待てよ? 瓶ってことは海に瓶を流すってことは漂流物の1種か? んで、プカプカってのは俺の前の名前だ。
ちょ、ちょっと待てよ? 名前は覚えてないけど確かに俺流れてきた手紙にお返事書いたよな?
それに歓迎するって書いたよな?
「ま、まさか、、、ほんとに来るとは、、、」
「あっ! 思い出してくれた!? 良かったー、このまま追い出されちゃうかと思ったよ! で、プカプカさんはどこなの? 海でプカプカ浮いてるんでしょ?」
とっても言いずらい。俺だということがとても言いずらい。そもそもこっちに来たばっかの時だったし、返事なんて来ると思わなかったし! そんなの忘れるに決まってんじゃん!
でも、言わなきゃダメなのだろう。
「あのー、そのプカプカっての俺の事だよ・・・」
俺がそう言うとメリーさんは首を傾げた。
「えっ? でもあなたはハルさんでしょ?」
「俺は元プカプカで現ハルなの。なんか1回名前変えられたの」
「えぇっ!? じゃあほんとにあなたがプカプカさんなの!? それなのに私の存在忘れてたの!?」
「ほんと申し訳ない・・・」
メリーさんは頬をぷくーっと膨らませてそっぽを向いてしまう。
「私を忘れるなんて信じらんない! 私を誰だと思ってるの!」
いや、知らないよ! 勝手に手紙が来て、それに社交辞令みたいなもんで返したらいきなりやってきたんじゃないか!
って言いたいのを我慢する。今回に関しては完全に俺が悪いからね。ちょっとの我慢も必要だ。
「はい、すいません」
「あーあ、あーーーあ! メリーさんは怒っちゃったなぁ!」
こ、こいつぅ! ここぞとばかりに俺に非を押し付けてきやがる!
「メリーさんのご機嫌取りしてくれる人はいっないかなぁ! メリーさんのお願い聞いてくれる人はいっないかなぁ!?」
・・・つまり、俺に何かしろと言いたいのか。俺に無茶振りしても何も出ないぞ? あっ、涙は出るかもしれない。
「あっ、そこの淫乱ピンクさん!」
「誰が淫乱ピンクやっ!!」
「じゃあ猫耳ピンクさん! 私のお願い聞いてくれますか?」
ここは多分YESって言わないといけないのだろう。そうじゃないとリタにも幻滅されるのだろう。
だが、俺は、敢えて!
「お断りしますっ!!」
「はい却下。お願いは聞いてもらうからねー」
NOと言っても言うこと聞かされる日本人。それは俺の事だ。もうここではただの異世界人なんだけどね。いや、異世界島か。
「簡単に言うとね、私のこと匿って欲しいんだ」
んー、なんか囲われの魔女とか言われてるみたいだしどっかの権力に雁字搦めにされてて、それが嫌になって逃げてきた感じなのかな?
そんぐらいなら別にいいかな、と俺が考えているとリタが顔を真っ青にして俺に訴えてくる。
「は、ハル様! いけません! それだけはっ!」
「り、リタ? どうしたの? 落ち着いて、ね?」
どうしたんだろう。リタがこんなに慌てるなんてそんなにヤバいことなのかな? それともメリーさんがなんかやばい性癖持ってるとか?
「ハル様、囲われの魔女とは対になる魔女がもう1人いるんです。その魔女とは囲いの魔女です。彼女とは絶対に敵対してはいけません! そうなったらいずれここも滅ぼされます!」
えっ!? そんなにやばいの? 俺がメリーさんの方を向くとメリーさんはヘッタクソな口笛をヒョロヒョロと吹きながらそっぽを向いて誤魔化そうとしていた。
「はぁ、どちらにせよこの問題はディアンヌ達が起きてからだな。リタはもう寝てきていいよ」
「は、はい。おやすみなさい、ハル様」
「おやすみ」
はぁ、また厄介な問題が飛び込んできた。俺にのんびり出来る時間はないのかな?
ここまでご覧いただきありがとうございます!
よろしければブックマーク登録などよろしくお願いします!
さてさて、また島の外での抗争になりそうです。更に今回はドンパチ要素があるかもしれません。
ハルを島から出すと読んでもらえなくなるというのが分かっていながらもハルを島から連れ出そうとししてしまう、、、




