第63話 ブリクスト陥落③
今回はちょっと胸糞&主人公陣営(海竜の巫女)が悪者になります。苦手な方は下までぶっ飛ばして後書きだけ読んで下さい。後書きに要約を載せておきます。
ルーちゃんの歌を聞いた民衆達がゴシック様式の建物の前、つまり王城の前に着いた時にはもう半蔵の仕事は完了していた。
門番は勿論、城の中で待機していた兵士達も全員気絶しているようだった。また、そんな兵士達は民衆達に踏まれないように脇に寝かされている。
「いやー、ルプル殿の能力は凄いでござるな!
拙者も震えが止まらず、普段の実力の2分の1も出せなかったでござるよ」
ひと仕事終えた半蔵が笑いながら俺達のグループに合流する。
「それでもちゃんと兵士達全員を気絶させたんだね、、、」
「当然でござるよ! この程度はお茶の子さいさいでござる! そもそも、この国の主力は戦争に出向いてるでごさるからな! 残ったのはぼんくらばかりでござるよ」
そっか、本当に強い人は戦争に行っちゃってるもんね。それに民衆たちも潤った生活を送ってそうだったし反乱なんて考えてなかったんだろうね。
「まぁ、ここにこの国の最高戦力が残っていたとしてもルプルの歌の効果を受けるのは半蔵だけではありませんし、まず負けることはないでしょうね」
「まぁ、腐っても神でござるからな」
・・・そっか、半蔵にルーちゃんの歌の効果が効いてるんだったら、他の人にも効くよね。当たり前のことを忘れてたな。
そんなことを喋ってる間に民衆達は次々と入城していく。
海竜はどうやって城の中に入るんだろうと疑問に思ってたら普通に人間の姿に戻って入っていった。
「さて、私達はショートカットしましょうか」
ディアンヌはそう言って腕を振る。すると目の前に城へと繋がる階段が現れた。その階段は城の頂上らへんまで続いている。
そんな階段を俺達はすたすたと登っていく。
「少し離れていてください」
城の壁まで到達するとシャルルがそう言って1度壁をノックした。すると、壁に大きな穴が空いた。それは俺達が屈まなくても普通に通れる程の穴だった。
その穴をくぐった先に居たのは王や大臣と思わしき人達、そして金属の鎧を装備した騎士っぽい人達。みんなルーちゃんの歌の効果を受けているのかガクガクと震えている。
鎧着てるんなら王様のこと守れよ。って思う俺はおかしいのだろうか。いや、おかしいんだろうな。どんな時代でもみんな自分のことが一番大事だもんね。
「な、なにものだっ!!!」
大臣の中の一人が俺達に向かって怒鳴りつける。その大臣はその場にいる人達のなかで妙に1人だけ若く、イケメンだ。
「まぁ、もう少しすれば分かりますよ。どうぞ会議でもなんでも続けてください」
ディアンヌが何食わぬ顔でそう返した。
「ぶ、ぶぶぶ、無礼だぞ! おっ、お前らはこのお方を誰と心得る! ブリクスト大皇国、第24代皇帝クルーディー・ブリテン様だぞ! ひ、ひかえよ!」
いや、そんなガタガタ震えながら言われても迫力0ですよ? それに城に突撃してきてるんだから誰かってことぐらい知ってるわ!!
・・・まぁ、名前は初耳なんですけどね。
「ねぇ、他国の王様に礼儀とか必要なの?」
俺が当たり前のことをディアンヌに聞くと、未だにルーちゃん応援装備を装着しているヤミが答えてくれた。
ちなみにヤミはルーちゃんの歌を聞いてる時感動で涙を流していた。しっかり震えてたけどね。
「必要ない。どうせ主に傷をつけれるやつなんてここに居ない」
なんとも参考にならない答えが帰ってきたなぁ、、、
「まぁ、いいんじゃないですかね? どうせ、この後王なんて称号放棄せざる負えない状況に陥るんですから」
んー、そうなのかなぁ。まぁ、ディアンヌが言うならそれでいっか。
「な、何を言っているんだっ! 父が王位から退くなどあるはずないだろう!」
さっき、無礼を指摘してきた男が怒った口調で言い返してくる。どうやら、この男は王子だったみたいだ。どうりで周りよりも若かったんだね。
王子がそう叫んだ瞬間、部屋の扉のひとつが蹴破られた。
「おや、ハルはもう来てたのか。待たせたのう」
どうやら扉を蹴り破ったのは海竜だったみたいだ。ほんと、その年でアグレッシブ過ぎるよ、、、
「ご主人様ぁぁぁー! ルーがんばったよぉぉぉ! 褒めてぇ!!!」
その後ろから現れたのはルーちゃん。えげつないスピードで俺の下に飛び込んでくるが、その衝撃はとってもソフトだった。ルーちゃんも成長したんだね。でも、褒めるのは後でね。
・・・だーめ、そんなふくれっ面しても。後でいっぱい褒めてあげるから!
そして、その後に流れ込んでくる大量の民衆。それを見ていたお偉いさん達は目をひん剥いてポカーンとしている。
「お主らの先祖には世話になっとったが、ちとやり過ぎたの。強国になったからといって手を出しては行かんところはあるんじゃよ」
多分、まだお偉いさん達には海竜が何者なのか分かって居ないのだろう。たちまちに罵詈雑言が飛んでくる。
「ほっほっほ。そうじゃった、そうじゃった。この姿はお主らの国には見せたこと無かったのぉ。わしじゃよ。海竜じゃよ」
「嘘をつくなっ! 海竜がこんな老いぼれな訳がないだろう!」
あっ、また王子様が喚いてる。王様はずっと冷や汗流しながら震えてるのに。凄い勇敢だなぁ。
「そうじゃろうなぁ。まぁ、それでも関係ありゃせんよ。ワシが何者であろうとも今から起こることは変わりはしないのじゃからのう。ほれ、元契約者よ。お主の出番じゃ」
海竜はそう言って後ろで隠れていた海竜の巫女の背中を押して前に出す。その姿を見たお偉いさんたちのざわめきが更に強くなる。
「ま、まさか、、、お前、、、俺達を裏切るのかっ!」
「はい、私は家族を救うためにあなた達を裏切ります」
「だっ、誰のせいで国がこんなことになったと思っているんだっ! 義妹よ! 」
義妹!? てことはこいつ王家の血がまざってんのか? ・・・もう訳が分からないよ。
「はい、私の責任です。ですが私は国よりも家族を取りました。それだけです」
ん? いや、こいつも家族だぞ? 一応義兄さんなんだろ? えっ? でもさっきあなた達を裏切るって?
「ともかく、皇帝よ。あなたには退位して頂きます。出なければ、あなた達は国民の手によって一人残らず始末されてしまうでしょう」
「・・・あぁ、分かった。退位しよう。ワシは今から皇帝ではない。海竜の巫女よ。この国を頼んだ」
いや、ダメだろ! こんな自分の家族のために革命起こすやつなんか王様にしちゃダメだって!
「父上っ! 何故ですっ! 何故こんなやつに!!」
いや、ほんとその通りだよ! なんで、こんな奴に?
「見るがよい。あの民の目を。ワシらのせいで国の民には辛い思いをさせた。
今戦っている兵達もそうだ。負けることが分かっておる戦に出される兵士の身になってみよ。その家族の身になってみよ。
この国に対する愛などもうとっくに尽きてしまったことであろうよ」
そんな王の言葉を聞いてそこにいる王子以外の全てのお偉いさん達が涙を流し始める。
・・・なんだ? この茶番は。
王はえげつない程弱気な無能。国を滅ぼす原因作った相手に王位を譲るとか馬鹿だろ。
一見国のことを考えているように見えるが自分の保身に入っているのが丸見えだ。
そして、海竜の巫女。こいつはもう何がなんだか分からない。自分のことしか考えず、それを隠そうともしない。
俺が今まで見てきた人間の中で1番のクズだと思う。そんなやつの陣営にいると思うと吐き気がする。
そんなクソ2人に押しつぶされるこの国が惨めでならない。それに、次の王になるのはそのクソの片割れだ。最悪だろ。
そこからはもうスラスラと手続きが進んだ。
色んな契約を王と海竜の巫女と立ち会い人として海竜がしたらしいけど、ルーちゃんの髪の手触りの良さに比べたらどーでもいい。
王子が最後まで反対していたそうだけど、結局その声も保身に走った皇帝には届かなかったようだ。
「さて、では海竜の巫女。約束通り今戦争中の全ての国に降伏を宣言してください」
「分かりました」
海竜の巫女は書類に降伏の旨を書き記し、ディアンヌがそれを複写し、各国に転移魔法で送り付けている。
その時の海竜の巫女はすっかり元気を取り戻してニッコニコ笑顔だ。めちゃくちゃ腹が立つ。
また、その場に集まってたお偉いさんたちや王も自分の身が海竜の巫女に王位が渡ることによって罰せられることはないと知ってほくそ笑んでいる。
一方の王子はなにやら悔し涙を流している。自分の至らなさが憎いのだろうね。知ったこっちゃないけどさ。
最後の1枚を送り終わったディアンヌが口を開いた。
「はい、お疲れ様でした。では、次に私たちが会うのはどこかの会談でしょうね。あっそうだ、皆さん無事に済むと思ってはいけませんよ。
あなた達はこのブリクストでは裁かれませんが、他の国から戦犯として裁かれることは有り得ますので。では、失礼します」
ディアンヌはそう言うとくるっと後ろを向いて俺達に「さぁ、帰りましょうか」と言った。
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いや、ほんとにこういうシーンの描写難しいですね、、、 今まで小説書いてきたなかで1番時間がかかったのに1番しっくり来ていない回です。
でも、書きたいことは書けたので満足です!
要約:王やその周りの大臣達が自分の身を優先したため王子の反対も無視して海竜の巫女に王位を譲る。
その後、ディアンヌが王たちは戦犯として裁かれることを告げ一行は島に帰る。




