第61話 ブリクスト陥落①
今回かなり短めです。
その代わりと言ってはなんなのですが、今日はもう一本上げさせていただきます。
「はっ?」
俺はそれしか言えなかった。俺はなにかでぶっ叩かれたような衝撃を受けたような気がして、思わず立ちくらみを起こしてしまった。
「マスター!?」
ディアンヌが俺の元に駆け寄り、体を支えてくれる。
「大丈夫ですか!?」
「うん・・・多分・・・」
俺は自分がよく分からなかった。なぜ海竜の巫女にあっただけで、立ちくらみがするほどの衝撃を受けるのか。
俺達はあの時、そこまで被害を受けていなかったはずだ。なのに何故これほどの衝撃を受けるのだろうか。
俺には自分の感情がよく分からなかった。
「私達がブリクストとの戦争に参戦するための口実にしようとしているのが、この海竜の巫女です」
「そもそも対ブリクストの戦争に参加する必要ある?」
「そうですね・・・ もし、この要求を蹴ったりすると矛先がこちらにむく可能性もあります。
なので相手取るのはブリクストの方が楽かと」
確かに何カ国も相手にして昼夜問わずに攻めてこられるのは勘弁だ。
「でも、なんで海竜の巫女なの? 正直、海竜の巫女に協力したくないんだけど」
俺がそういうと海竜の巫女は微かに俯いた。
「それは他に最適な人材が居なかったからです。ほかの人物は皆戦争に向かって一丸となって動いています。なので、反乱を起こすとは考えられません。
ですが、海竜の巫女は自分の家族全てをあの一件で幽閉され、自身は流刑にあったこの海竜の巫女はその枠から唯一外された人物なのです」
まぁ、そりゃ国から罰を受けるのは当たり前だよな。だって、自国の滅亡の危機を作り出したんだもん。
「まぁ、私が口を挟むのはここまでですね。あとはお二人でなんとかしてください」
・・・はぁ?
「それでは!」
「おい! 待て! ディアンヌ!! この状況で二人っきりはまずいから! ホントに!」
そんな俺の心からの叫びはディアンヌに届くことは無くディアンヌはふわふわとどこかへ飛んでいってしまった。
さっきから全く喋らない海竜の巫女と二人っきりにされた俺。正直どうすればいいのか全く分からない。逃げ出したいんだけど、ダメかな?
そんなこと思ってたらだんまりを決め込んでいた海竜の巫女がついに口を開いた。
「あ、、、あんたのせいで! あんたのせいで私の家族がっ! お父さんが! 妹が! 弟が!! 救ってよっ! 私の家族をぉぉぉ! このクズぅぅぅ!!」
そう叫ぶと海竜の巫女の目から涙が溢れ出した。
うん! 無理だ! 俺にはこいつの言動が微塵も理解できないし、理解したいとも思わない。こんな奴に協力するなんて馬鹿げてる。
というかなんなんだこいつの責任転嫁は。そもそも俺達は自分の身を守っただけだろ? なんでこんなに言われなきゃならないんだろうか。
「ディアンヌーー!」
「はい? なんですか? もう決まったんですか?」
「無理! 協力なんて出来ない!」
俺がハッキリとそう言うとディアンヌはため息をひとつついた。
「まぁ、そうですよね。じゃあ、私はこの人を送り返してきますんで」
そういってディアンヌは海竜の巫女の両腕を掴み宙に浮く。しかし、海竜の巫女はその掴んでいる腕を振り払おうと暴れまくる。
そんなことしてもディアンヌの手を振り解ける訳がなく、海竜の巫女は叫びまくる。
「やめてよぉ! 私の家族をたすけてよぉぉぉ!! 私が悪かったからぁぁぁ!!!」
ディアンヌはそのまま飛んでいこうとしたその時、突然ディースが現れた。
「なんかこっちで泣き声が聞こえたんで飛んできたんですけど、どうしたんですか?」
ディースは辺りをキョロキョロと見渡して海竜の巫女を見つけると「あっ、どうも」と少し居心地が悪そうに頭を下げた。
そんなディースを見て海竜の巫女は何を思ったのだろうか。また、海竜の巫女は叫び始めた。
「あんたのせいでぇ! あんたのせいで、私の家族はめちゃくちゃなのっ!!! 神様なら私のこと助けなさいよぉぉぉっ!!!」
え、えぇ、、、 もうなんなの? 以前ディースのことを散々馬鹿にしてたのに今は助けてくださいだ? こいつは何を言っているんだろうか。
ディースはひとつため息をついて呆れたように口を開いた。よっしゃ! ディース! ガツンと一言いってやれ!
「もう、仕方ないですね。今回だけですよ?」
ディースがそう言った瞬間、一瞬この場は凍りついた。
はぁ? こいつなに考えてんだ? 今までされた所業を考えたら
って、あっ、そっかぁぁぁ! こいつ曲がりなりにも慈愛の神だった! てか、それにしても心広すぎんだろ!
「それで、あなたのお名前は?」
「覚えてないんかいっ!!!」
はっ! しまった! 思わず突っ込んでしまった。
「えぇ? こんな人前会いましたっけ? 私覚えてないですよぉ?」
「ディース、それは流石に失礼すぎるぞ」
「えっ!? あっ! すいません!」
流石の海竜の巫女も口をぱっくり開けてポカーンとしている。
海竜の巫女が説明出来なさそうだったので俺がディースに海竜の巫女の正体と事情を説明した。
「あーーっ! 思い出しましたよ! お久しぶりですぅ!」
ディースはそういうと海竜の巫女と握手して腕をブンブン振った。
そして、その手を話すとディースが俺の耳に顔を近づけて囁いてくる。
「ハルさん、ハルさん。今回に関してはハルさんが全面的に正しいですし、気持ちもよーーく分かるんです。
けど! 今回は私の顔を立てて助けて上げてくれませんか?」
何故囁いたのかは分からないが仕方ないので俺も囁き返す。
「なんで?」
「だって、私慈愛の神ですし、、、」
「理由になってないじゃん!」
「うぅぅぅ、ハルさんのけちぃ!」
俺達がそんな問答を繰り返しているとディアンヌがふぅと息を吐いて、とあることを提案した。
「分かりました。では、ディースさんがハル自由国の名を背負って革命を起こしに行けばいいのでは?」
「うん、俺は名前かすくらいならいいよ」
実際、海竜の巫女のために動く、動かすってのが嫌だっただけでディースが自主的に全部やってくれるのなら俺は大賛成だ。
ディアンヌの意図にもそえて、ディースの願いにもそえる。完璧な案だと思う!
しかし、そんな案を木っ端微塵に粉砕する馬鹿1人。
「えぇーー! 無理!無理ですよぉ! 私攻撃手段がパンチとキックしかないんですよ!!」
「じゃあなんで救いたいとか言い出したんだよ!」
「慈愛の神ですもん!」
ディースってほんと猪突猛進って感じだよなぁ、、、
「そんなの言われても俺はなんもする気ないよ?」
「そうですね、、、 それならディースさんが他の島の人達に声掛けてみればどうですか?
好戦的な人達なら乗ってくれるかも知れませんよ?」
ディアンヌの提案はさっきから冴えてるなぁ! さっすが叡智の神だな! しかし、やはりその案を壊すのはディースだった。
最初はやる気に燃えていたが、しかし、10分後には島の住人全員に断られて撃沈したらしい。
ちなみに海竜の巫女はちょっと頭を冷やさせるため、以前作った牢屋にぶち込んでおいた。
「無理ですよぉ!! みんなハルさんの方を支持するんですもん!!」
いや、迷惑かけられてるんだから海竜の巫女を助けたいって思う人が少ないのは当然だろ!
「1番の頼みの綱であるクリスさんも「楽しそうだけど、ハルが嫌ってぇんなら話は別だな。すまねぇな!」って言われちゃったんですよ!」
クリスが頼みの綱の時点でその作戦成功するわけないじゃないか!
「うぅー! ハルさん、お願いしますよぉ!」
・・・なんか、こんだけ人のために頑張ってるディースを見るとなんか俺が悪者みたいになってない? なってるよね?
「ディースさん、まだ時間はかかりますが一つだけ案がございますよ」
ディアンヌがそう言った瞬間、ディースはディアンヌにしがみついた。
「教えてくださいっ! なんでもしますからぁ!」
「わ、分かりましたから話してください!」
「うぅー、ありがとうございますぅ!」
「全く、で、その案というのがですね、ルプルに何とかしてもらうという案なんですが」
「ちょーーーーっと待ったぁぁぁぁ!」
待てぇい! ルーちゃんを連れていく? ふざけんな! ルーちゃんを戦争の道具に使うなんて俺は許さないからなっ!!
「はいはい、分かってますよ。でも、ルプルなら多分10秒で全て解決してしまいますよ?」
「ダメっ! ルーちゃんは戦争というのを知らないまま純粋な子に育てるんだ!」
俺がそう言った瞬間、ディアンヌは俺を可哀想なものを見る目で見つめた。
「なんだよ!」
「まぁ、そうですね。多分大丈夫ですよ、ディースさん」
「ほんとですかぁ! 私すっごく嬉しいです! ありがとうございます! ハルさん! ディアンヌさん!」
「俺は許さんからなぁぁぁ!」
噂をすればなんとやら、ってやつなのだろうか。半蔵が俺達の前に突然現れて告げた内容。
「ルプル殿が孵ったでござるよ!」
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最初はシリアスにしようと思い、ディアンヌとディースを争わせようとしたんですが、そうなるとディースの悪者感が滲み出てしまったのでこういう形を取らせて頂きました。
というよりシリアスもだし、こういう過去の清算をする話って書くの難しいですね。




