2話
たどり着いたのは、一面に花が咲き誇る美しい惑星だった。
柔らかな風が草原を揺らし、色とりどりの花々が静かに踊っている。
守護者はこの場所が好きだった。
心が疲れた時、何も考えず草の上に寝転び、ただ空を見上げる。
そんな穏やかな時間を過ごせる、大切な場所だった。
「勝負だー!!」
「今日は絶対に守護者様に勝ちます!」
元気いっぱいに叫ぶ双子を見て、守護者は思わず笑みを浮かべる。
「ふふっ、本当に?今日は勝てる気がする?」
「もちろん!」
「いっぱい練習したんだから!」
その自信満々な姿に、守護者は嬉しそうに頷いた。
一方、羊だけは小さくため息をつく。
(……また始まった)
毎回同じ流れだ。
挑戦し、負け、結局は守護者にお願いをする。
それでも懲りずに挑み続けるのだから、この双子らしい。
「それじゃあ、始めようか!」
「はい!」
「あそこにゴールを作ったよ!」
双子が指差した先には、花畑の向こうに光でできた小さなゴールが輝いていた。
守護者は苦笑しながら双子を見る。
「今回はどんな条件なの?」
双子は顔を見合わせると、同時に笑顔になった。
「負けた人が星のみんなに挨拶しに行くこと!」
「簡単でしょ!」
「そうかな?」
守護者は首を傾げる。
その瞬間。
「……」
「……」
双子が急に黙り込んだ。
その沈黙を見た羊は目を細める。
(……怪しい)
「お前ら」
「えっ?」
「毎回負けて、その仕事は結局守護者様がやっていたではないか」
「そ、それはその時!」
「今回は違うもん!」
「羊は黙ってて!」
「こ、こいつら…」
羊のこめかみに小さく青筋が浮かぶ。
守護者は思わず笑ってしまった。
「羊、大丈夫ー今回はその条件でいいよ」
「やったーー!!」
「やっぱり守護者様は優しい!」
双子は飛び跳ねるように喜んだ。
しかし羊だけは胸の奥に小さな違和感を覚えていた。
(さっきの沈黙…何だったんだ)
嫌な予感が消えない。
やがて全員がスタート地点へ移動する。
羊は静かに膝をつき、守護者を背中へ乗せた。
「守護者様、しっかりつかまってください」
「うん、お願い」
双子は少し離れた場所で身体を揺らしながら準備運動をしている。
「準備はいい?」
「もちろんです!」
「いつでも!」
空から一つの流れ星が落ちる。
それが合図だった。
「スタート!!」
シュウウウン――!!
四人は同時に空へ飛び立った。
双子は最初から全力で飛び出し、あっという間に前へ出る。
守護者はそっと羊の耳元で囁いた。
「ねぇ、羊」
「はい」
「今日は負けてあげよう」
「え?」
羊は思わず飛ぶ速度を緩めた。
「どういうことですか?」
「だって、あんなに嬉しそうだったでしょ?一生懸命練習したって言ってたから」
羊は困ったように眉を下げる。
「ですが、勝てばあの子たちは必ず調子に乗ります。きっと守護者様にも無礼な態度を取ります」
守護者は苦笑しながら両手を合わせた。
「お願い、ね?」
その笑顔には誰も逆らえない。
羊は深く息を吐いた。
「…分かりました、守護者様のお願いなら」
その頃。
「見て見てー!」
「もうゴールの前まで来ちゃった!」
双子はゴール寸前で止まり、わざわざ引き返してきた。
「遅い遅いー!」
「羊にハンデあげようと思って戻ってきたんだよ!」
羊の額にぴくりと青筋が浮かぶ。
(……後で説教だ)
守護者はその心の声を読み取り、思わず吹き出しそうになる。
(ふふっ、本当に仲がいいな)
「羊」
「はい」
「ほら、もうすぐゴールだよ」
「最後まで頑張ろう?」
羊は小さく頷いた。
「承知しました」




