1話
守護者は無限に広がる宇宙を静かに見つめていた。
「……」
無数の星々がきらめくこの景色は、いつ見ても美しい。
それなのに、今日はなぜか胸の奥が重かった。
言葉では説明できない不安が、静かに心を締めつけていた。
その時だった。
シュウウウン——
一つの星がゆっくりと守護者のもとへ飛んできた。
羊だった。
「守護者様、何か悩みでもありますか? 少し元気がなさそうです」
「ううん、何でもないよ」
優しく微笑む守護者。
しかし、その笑顔はどこか寂しそうだった。
羊にはすぐ分かった。
長い間ずっと守護者のそばで見守ってきたからだ。
ほんのわずかな表情の変化でも、羊には隠せない。
「まぁ……守護者様は嘘をつくのが苦手ですね」
「はは……バレちゃった?」
「もちろんです。私はずっと守護者様を見てきましたから」
羊は何も言わず、守護者の隣にそっと腰を下ろした。
そして静かに肩を寄せる。
理由は聞かなかった。
ただ隣にいること。
それこそが自分の使命であり、自分にできる一番のことだと信じていたから。
守護者はそんな羊を見つめ、小さく微笑んだ。
(そういえば……羊はいつも、私がつらい時にはそばにいてくれたな)
(嬉しい時も、悲しい時も、羊は何も言わず隣にいてくれた。)
(だから私は、一人だと思ったことなんて一度もなかった。)
その時——
シュウウウン——!!
二つの星が勢いよく飛んできて、二人の目の前でぴたりと止まった。
「あっ! 守護者様だ!」
「本当だー!」
元気いっぱいの双子だった。
「あら?お元気でしたか、双子」
「はい! もちろんです!」
「ねぇねぇ!でも、何か忘れてない?」
双子は顔を見合わせる。
「うーん…」
「何だっけ?」
守護者は嫌な予感しかしなかった。
数秒後。
「あっ!」
「思い出した!」
「勝負だーーー!!」
「今日は絶対に負けないから!」
羊は深いため息をついた。
「やっぱりそれか」
「何だよ、その反応!」
「そうよそうよ!」
「守護者様、ここは無視して別の場所へ向かいましょう」
「ああっ!?」
「そんなぁぁぁぁ!」
守護者は苦笑しながら羊を見た。
「羊、ここは勝負してあげよう」
「はい? やらなくても結果は見えています。その双子が負けるだけです」
「でも、いっぱい練習したんでしょ?」
「うん!」
「毎日頑張ったもん!」
「だったら、その頑張りを見てあげたいなー」
羊は少しだけ困ったような顔をしたあと、小さく笑った。
「……守護者様のお願いなら」
「やったーーー!!」
「へへーん! 見た? 守護者様は私たちの味方なんだから!」
(この子たち……後でちゃんと説教ですね)
羊は心の中で静かに決意した。
守護者はそんな羊の心を読み取り、思わずくすりと笑う。
「相変わらず仲がいいね」
「守護者様が甘やかしすぎるから、双子があんなにも無礼になるのです」
「えっ!?」
「少しは威厳をお持ちになることも必要です」
「私、怒られてるの!?」
その一言に、双子は吹き出した。
羊も思わず笑みを浮かべる。
守護者もつられて笑った。
静かな宇宙に、四人の笑い声が優しく響き渡る。
やがて羊は守護者を背中に乗せ、大きく空へ舞い上がった。
双子も楽しそうにその周りを飛び回る。
青く輝く星々の間を駆け抜けながら、一行は今日の目的地である惑星へ向かって飛んでいった




