14話
眩い閃光が宇宙を飲み込んだ。
ドォォォォォォォォォン――――!!
衝撃波が四方八方へ広がり、砕けた星々をさらに遠くへ吹き飛ばしていく。
白い光。
黒い闇。
二つの力は激しくぶつかり合い、互いを喰らい合っていた。
守護者は思わず腕で顔を覆う。
(見えない… お願い…!お願いだから…!)
「天秤様…!」
光が少しずつ晴れていく。
そこに立っていたのは――
天秤だった。
しかし、その姿は満身創痍だった。
肩からは血が流れ、衣は裂け、握る剣にも幾つもの亀裂が走っている。
それでもなお、彼は一歩も退いていなかった。
巨大な存在は静かに彼を見下ろす。
「驚いた…まだ立っているのか?」
天秤は息を整えながら小さく笑う。
「まだ…終わっておりません、守護者様へ辿り着くには…私を越えていただきます」
巨大な存在はゆっくり首を傾けた。
「理解できない… 勝てぬ戦いだと分かっているだろう?何故そこまで守るの」
天秤は静かに守護者を見た。
涙を浮かべながらこちらを見つめる少女。
何も出来ず震えている小さな背中。
その姿を見て、天秤は自然と微笑んだ。
「それが… 私たち黄道十二宮の使命だからです」
黄金の光が再び身体を包む。
先ほどより弱い。
それでも確かに燃えていた。
巨大な存在は静かに腕を上げる。
「愚かな…ならば、その使命ごと消してやろう」
漆黒の力が一点へ集束していく。
空間そのものが悲鳴を上げ、
星々が砕け散る。
守護者は叫んだ。
「逃げてください!!天秤様!!」
しかし天秤は振り返らなかった。
「守護者様、少しだけ…時間を稼げました」
その言葉を聞いた瞬間、
守護者の胸が締め付けられる。
(やめて…その言い方…)
天秤は胸へ手を当てた。
そこには小さな黄金の光が宿っていた。
彼自身の星。
命そのもの。
静かにそれを握り締める。
「残された力で… 守護者様だけは必ず…!」
眩い光が一気に溢れ出す。
守護者は目を見開いた。
「天秤様…!!駄目です!!そんなことしたら…!」
天秤は穏やかに笑う。
「ありがとうございます… 守護者様、あなたに仕えられたことを…誇りに思います」
その笑顔は、初めて会った日と何も変わらなかった。
優しく。
穏やかで。
誰よりも温かい笑顔だった。
次の瞬間。
彼は胸の光を取り出した。
黄金色の星が掌の上で静かに輝く。
それを守護者へ向かって投げ放つ。
「行ってください!!」
無数の星光が守護者の周囲を旋回する。
一つ。
二つ。
十。
二十。
数え切れないほどの星々が光の結界となって守護者を包み込んだ。
巨大な存在が初めて表情を変える。
「最後まで邪魔をするか…天秤」
漆黒の拳が振り下ろされる。
「守護者様…どうか…ご無事で――」
ドォォォォォォォォォン!!!!!!
漆黒と黄金が激突する。
閃光が宇宙を埋め尽くした。
守護者の叫びだけが、
その光の中へ虚しく消えていった。
「天秤様ァァァァァァッ!!!!」




