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12話

その低い声が宇宙全体へ響いた。


守護者の身体が震える。


(私を…探していた…?)


巨大な存在はゆっくりと一歩踏み出した。


その一歩だけで星々が揺れる。


ゴゴゴゴゴ…


守護者は思わず後退った。


「守護者様」


羊が静かに前へ出る。


「下がってください」


「でも…!」


「お願いします」


その声だけは、いつも通り優しかった。


守護者は唇を噛み締める。


(嫌だ、もう誰も傷付いてほしくない…これ以上、大切な人を失いたくない)


巨大な存在がゆっくりと右腕を持ち上げる。


周囲の空間が歪み始めた。


ビキ…


ビキビキ…


宇宙そのものが悲鳴を上げているようだった。


天秤が剣を構える。


「羊」


「一撃だけでも止めます」


「はい」


二人は互いに小さく頷いた。


その瞬間だった。


巨大な存在が消えた。


「――っ!」


誰も反応できない。


次の瞬間には、守護者の目の前まで迫っていた。


巨大な腕が守護者へ振り下ろされる。


「守護者様!!」


羊は迷わなかった。


守護者の身体を思い切り突き飛ばす。


「きゃっ!」


守護者の身体が地面を転がる。


そして。


ドォォォォォォン!!!!


漆黒の衝撃が羊を飲み込んだ。


「ぐぁぁぁぁぁっ!!」


宇宙へ鮮血が舞う。


羊の身体が大きく吹き飛ばされた。


「羊!!!!」


守護者は叫びながら駆け出した。


遠くへ転がった羊の身体。


全身は傷だらけだった。


片腕は折れ、


胸元の鎧も粉々に砕けている。


それでも。


羊は笑っていた。


「…よかった、守護者様が…無事で…」


「何言ってるの!」


守護者は涙を流しながら羊を抱き起こす。


「しゃべっちゃ駄目!お願いだから!絶対助けるから!」


羊は小さく首を横へ振った。


「もう…分かります、私の身体は…もう…」


守護者は何度も首を振る。


「嫌、そんなの嫌!お願いだから!行かないで…」


羊は守護者を見つめる。


その瞳には後悔など一つもなかった。


「守護者様、覚えていますか?初めて会った日のこと」


守護者は涙で滲む視界のまま頷く。


「もちろん…」


「あの日から、私の使命は…一つだけでした」


羊は静かに笑う。


「守護者様を守ること、だから…約束…守れました」


守護者の瞳から大粒の涙が零れ落ちる。


「嫌だ…そんな約束…守らなくてよかったのに…」


羊は最後に微笑んだ。


いつも隣で見せてくれた、


あの優しい笑顔だった。


「守護者様、泣かないでください…あなたの笑顔が…私は一番…好きでした」


その瞬間、


羊の身体が淡く輝き始める。


足先から。


指先から。


身体が無数の星粒へ変わっていく。


「やだ…お願い…消えないで…」


守護者は必死に羊の手を握る。


だが、


指先は光となって、


守護者の指の間から静かに零れ落ちていった。


「羊!!!!」


叫びだけが宇宙へ響く。


羊は最後まで微笑んだまま、


無数の星となって宇宙へ散っていった。


静寂。


守護者はその場へ崩れ落ちる。


「どうして…どうしてみんな…」


震える肩。


止まらない涙。


その背中を、天秤だけが静かに見つめていた。


やがて天秤はゆっくりと前へ出る。


剣を抜く。


巨大な存在を真正面から見据えた。


「守護者様!ここから先は私がお守りいたします」


天秤は静かに剣を構えた。


巨大な存在もまた、


ゆっくりと天秤へ視線を向ける。


二人の間に、重い沈黙が流れた。

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