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生命線上に独白の告発を  作者: 為世 斐文


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14/21

第14話「“りつ”って呼びたいから4」

 二人の対決を見て、佐江月さんから告白されて、一週間が過ぎた。今日は県大会の決勝戦で、李月くんのチームは惜しくも敗退だった。

 ちゃんと見ていると本当にすごかった。

 サッカーはあまり興味がなかったけど、李月くんはとても楽しそうに、清々しいほど綺麗な顔でプレーしていた。

 あんな姿、私は見たことがない。また私は一つ、人という生き物を知った。みんな確かにすごかった。

 あれがスポーツというものだ。あれがスポーツをする人というものだ。

 それが少し分かった気がする。

 涙が出るほどには、それを舐めていた。あの時咄嗟に出た「頑張れ」こんな意味を持っていたなんて知らなかった。

「玉乃さん」

「李月くん、お疲れ様」

「意外だね。俺を労うなんて思ってなかった」

「そうだね。私も労うつもりなんてなかった」

 試合後に私は李月くんに呼び出された。

 だいぶ疲れたのだろう。疲労が見て取れる。

「隣座っていい?」

「どうぞ」

 席を空けると李月くんは倒れるように隣に座った。

 今はグラウンドで優勝校が写真を撮っている。あまり見たくないだろう。

「こんな場所でいいの?」

「大丈夫……」

「そう」

 でも、悔しそうな目……

 私があの時、佐江月さんの方に行ってくると言ったから気にしていたりしないかとか、そんな言葉を今は吐きたくない。

 これ以上、李月くんの心を抉るようなことはしてあげたくない。

「まず一つだけ、聞いてもいいかな」

「どうぞ」

 李月くんはこっちを向いた。その顔は真剣だ。

「佐江月とどうなったの」


 ――ああ、そうか


 私の考えは、甘かったみたいだ。

「ないよ。やっぱりちょっと怖さが残ってるから」

「そっか」

 ――嬉しそうだね、りつ

「これからはどうするの。まだやっぱり一人でいるの?」

「そうだね」

 ――あなたはそういう人だ

「佐江月から、それ以外でも何かあったら言ってね。また駆けつけるから」

「大丈夫。彼も変わってたから」

 ――あなたはすぐ私の心配をする。こんな状況でも自分の悔しさを(おもて)に見せてくれないんだ

「すごいね」

「すごい?」

「りつは、すごいね」

「りつって……今更なんで」

 ――だって

「私は名前の呼び方で好感度を決めてるからさ」

 ――だから私はあなたのことが……

「あー……それはなんとなく知ってるよ」

「あれ、そっか」

 ――あなたはすごいんだよ……いやになるほど

「そうじゃなくて、なんでまたその――」

「しー」

 私はりつの唇に人差し指を当てた。

 ――そうだね。そうなるよね……

「今は黙っておくのが正解」

「そう……?」

「うん。それが正解」

 ――いつもあなたはあなたらしい。人に左右されない。芯がある。

「県大会惜しかったね」

「そうだね。あと一点でも取れてたら同点だったのに、決定機を逃したのは本当に悔しいよ」

「でも私はよく頑張ってたなって感じたよ」

 ――またその顔、あなたはわかりやすいね

「ありがとう。次の質問してもいいかな」

「私は制限した覚えはないよ」

「そうだね」

 ――だけど、あなたは私にだけいつも一線引いてる

「なんで応援なんてしにきてくれたの」

「そうだね」

 ――それが少し……〝寂しかった〟

「逆に、なんで智花には言ってるのに、私には県大会のことすら言ってくれなかったの?」

「それは……てっきり興味ないと思って」

 ――ほらね

「うん。興味ないよ。一つも興味なんてないよ」

「でしょ?」

 ――私のことだけ分かったようで何も分かってないんだ。そこが実にあなたらしくない

「りつと佐江月さんの戦いがあるなんてなったら、私が行かない意味はあるのかな」

 ――あなたが熱心に取り組んでるんだから、それを見たいのは当たり前でしょ

「でもそのあとは」

「事の顛末を知らされないなんて、割に合わない。しかも、ちょっと普通に気になった」

 ――あなたが頑張ってるから応援したいんだよ? でも、あなたはそんなこと知らない

「そうなんだ……」

 ――だから寂しかったんだ私は

「ばか」

「ええ……」

 ――言わない私も、決めつけと、勝手に線を引くりつも、

「ばかだよ本当に」

「ごめん……」

「ううん。今日はお疲れ様。私はこれで失礼するね」

「あ――」

 りつは立ち上がった私の手を取った。

 佐江月くんと別れた夜以来の手。

 この手は温かくて、優しくて、冷たくて、痛くて、離したいのに、手放せない手。

「――また会いたい」

 りつは付き合っていた頃のような顔を向けた。

 ――ああ、

「分かった。考えとくね」

 ――その言葉だけが、私たちを支える魔法だったね。りつ

 それだけ伝えるとりつは嬉しそうに頷いた。



「ただいま」

「李月、おかえり。お疲れ様。惜しかったね……」

「応援、ありがとう。母さん」

「今日はごちそうよ」

 今日の香澄……今までとちょっと違った気がする。なんか、昔に戻ったみたいな……。てか、なんで降ったのかまた聞くの忘れてたな……まあいっか



 ばかりつ……なんで気づかないかな……

 私はりつをまた恨みながら布団をかぶって横になった。

 りつは言った。はっきりと自分の口から言った。

 「あー……それはなんとなく知ってるよ」って、ちゃんと私は聞いた。

 じゃあなんで私が〝りつ〟って呼んだのかくらい分かってよ……

 カレンダーを見るともうすぐで私の誕生日だ。今年の誕生日は色々とあってほしいと願いを巡らせているうちに、私は眠りについていた。

 昨年の誕生日はちょうどりつと付き合ってから一ヶ月ほど経ったときだった。

 デートでデパートに行って、クレーンゲームでりつはバカをして五千円ほどとかした。その内の半分くらいが私のために使って。

 デパートはうるさくて嫌いだ。でも、その横で笑っているあなたは、私のために真剣になってくれるりつは、大好きだった。

 そう、その光景が大好きだったんだ。だから別に、デパートとかも嫌いじゃない。

 

 ――あなたが居てくれるなら〝嫌いも愛せる〟ようになりたかったんだよ……


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