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第129話 派手に動く

ダンジョン踏破の報はすぐさまバスクの街に知れ渡った。普通なら踏破の祝いでお祭り騒ぎになる。しかし、アイシャさんに聖痕が刻まれたという内容も一緒に知れ渡ったので、お祝いという雰囲気ではなくなている。


「すまない、ラーニャさん。転生者のオレには聖痕が何のかさっぱり分からん。教えてくれ」


『ああ、そうよね、転生者はあまり聞くことはないわね。説明してあげるわ…』


ラーニャさん曰く、超優秀な聖職者が高位のアンデッドを倒した際に極々稀に刻まれる聖なる傷で、この傷が刻まれた者は聖職者としての格が上がる。神聖魔法の威力、構築スピードや、聖気の扱いなど聖なる力が大幅に向上する。

それだけなら聞こえは良いが決定的な欠点がある。その聖なる力があまりにも強くなりすぎるため体に負担がかかり、寿命が削られるというのだ。聖痕が刻まれてから2~3年生きられれば良い方とされている。唯一の解決方法は、ディバイン神聖国にあるセレステ教の総本山で過ごすこと。何でも教皇が他人の聖なる力をある程度制御する秘術をお持ちだとか。その秘術自体は聖なる力を少しばかり強くしたり弱くしたりするもので、劇的な効果はないのだが、聖痕の体への影響を抑える程度には機能するとのこと。教皇にしか受け継がれない秘術らしい。だから歴代の聖痕を刻まれた者はその一生をディバイン神聖国のセレステ教総本山の奥の奥で過ごし、寿命を全うしている。もちろん、ディバイン神聖国に行かず、普通に暮らした者もいるらしいが、言い伝え通り2~3年でお亡くなりになっているらしい。


『まぁ、すぐにどうこうなるわけじゃないけどね、短い寿命で今まで通りの生活を送るか、全てを捨てて寿命を全うすべくセレステ教の総本山に引っ込むか選択を迫られたわけよ』


なるほどな。そういうことか…待てよ、サクヤの神託は確か…!!そうか、そういうカラクリかよ。


『はぁ、問題はアレクよねー、あのヘタレの選択でアイシャの幸せが決まる…どういう選択をするのやら…どうしたのガレス?』


オレは席を立つ。


「ん~何でもない。ちょっとな…部屋に戻る」


『……』


部屋に戻ってベッドで横になる。今のラーニャさんの話、そして、元々サクヤからあった調査依頼。それを神託で聞いていたオレだからこそ気付けたカラクリがある。


「クソ共が、胸糞悪いっ…」


そう愚痴をこぼし、枕を壁に投げつけた…多分だがオレの予想は当たっている。だが、これからの行動によっては命が狙われる可能性がでてくる。オレの命だけならまだいいが、恐らく関わった連中全員が不幸になる可能性もある。どう動くべきか…そう思い考えに耽っていると投げた枕を拾われたことに気付いた。


『マスター…』


「レイラか…見ていたか?」


『ラーニャさんとの会話の後、様子が変だったからね…何か気付いたのかい?』


「まぁ…な」


『……』


「……」


『思うがままにやればいいじゃないか』


「何?」


『マスターは言ってたじゃないか。こっちの世界にきて思うがままに生きたいと思っているって。私達奴隷を守りたいと思うことと同じように、アイシャを守りたい。そう思っているんでしょう。

なら自分の気持ちに正直に行動すればいいさ。私たちはマスターを全力で支えるからさ』


「ふふ、そうか。思うがままか…そうだよな。その方がオレらしいか。ありがとうレイラ」


『どういたしまして。それで具体的にこれからどうするんだい?』


「神託が関連していてな、サクヤから慎重に行動しろ言われてるが、思うがままに行動するなら派手に動くことになる。まずは派手に動く許可をサクヤに取らないといけないな…しかし神託って一方的だからどうやって連絡取ろう?」


『派手にって…戦争でもするのかい?』


「んー?まぁ戦争に近いかな」


『え?』


「え?」


・・・・・・


結局サクヤと連絡が取れず1ヵ月が過ぎた。部屋の中に『サクヤ連絡求む』と書いた紙を壁に貼ったり、もしノゾミやカズヤさんに神託があったら、サクヤに神託をしてもらうようにお願いしたが、一向にサクヤからの連絡がない。連絡がないまま事態が動きそうなってしまっている。ぶっちゃけ面倒だからサクヤは放っておこうと思っている。どんな風に事態が動きそうかというと、今日はアイシャさんの送別会なのだ。

そう、アレクはそのヘタレっぷりを遺憾なく発揮し、アイシャさんをセレステ教総本山に送る道を選んだのだ。女性陣からは非難轟々。散々詰め寄られて色々と言われていたが、何故か意志は固く今日に至る。送別会なのに笑って送りだそうという雰囲気は微塵もない。オレの周りに集まった女性陣はすこぶる機嫌が悪い。アレク自身は、どんな形であれアイシャに生き続けて欲しいという思いらしい。理解できなくはないが、周りの女性陣は全く逆のことを期待している。

例え短命であっても愛し合っている2人が結ばれるべきという考えだ。それが女の幸せだと信じて疑わず、アレクを説得しようと何度もアクレと話したり、けしかけたりしたがアレクの思いは一向に変わらなかったそうな。今、目の前ではアレクのこと"チキン野郎"だの"玉無し"だのと平気で罵っている。


『ちょっとミレーヌ!あり得ないと思わない?女性の幸せは好きな男と結ばれることよ!それをあのチキンは全く聞く耳もたず、アイシャを送り出そうとしているのよ信じられる?』


『そりゃぁ、ラーニャのように独り身で40代になった女が幸せを語っても説得力ないわよねぇ』


『ぐっぅ、うるさいわね、それを言うんじゃないわよ。それに年はミレーヌも同じでしょう!』


そう、この二人は遂に40代に突入したらしい。


ドンッ!とジョッキを机に叩きつける音が響く。アレクの妹サーシャだ。


『私が説得しても同じでした!信じられません!!アイシャ姉が可哀想です。今まで待ち続けた結果が諦めるですよ、ふざけるな!って感じです』


誰だーこの娘に飲ませたやつは…はぁ、やれやれ一応聞いてみるか。


「ここにいる女性は全員説得に失敗したってことか?」


怒りに任せてサーシャが答える。

『女性も男性もありませんよ!説得した人みんな撃沈してます。アイシャに生きていて欲しいの一点張りで聞く耳持ちませんよ!いい加減にしろってのよ、あの玉無しが!玉無しが!玉無しがぁぁぁ!』


乙女が連呼するのはよしなさい。下品だぞ。


「はぁ~~~っ!しかたねーな。オレが説得してやるかぁ」


オレの予想、サクヤから聞いたこと全てをブチまけてアレクを説得する。

派手に動くことになるが知ったことか。もうサクヤへの連絡はシラネェ。事後承諾でいいだろ。


周りの女性全員が黙ってオレを見つめてくる。


『ガレスが説得?』

『無理でしょう』

『下品な説得は止めてよね』


おぉぅ、批判が半端ないな。ウチの奴隷はある程度事情を話してあるから暖かく見守ってる感じだが。


「愛だの恋だのを説得材料にするから上手くいかないんだよ、まぁ見てろ。

あ、念のため確認するが、ここにいる女性全員、オレが説得に成功したらその後のことは協力してくれるという認識でいいよな?」


「もちろん、何でも協力するわよ』


よし、言質はとった。


「おい、アレク、話がある。二人で話せないか?」


『…ああ、いいよ』


「じゃぁ隣の部屋で話そう」


・・・・・・


『ミレーヌ、ガレスは上手く説得できると思う?」


『ガレスは自信があるみたいだったけど、みんなの話を聞く限り無理っぽいねぇ」


・・・・・・


 バン!!!

 


勢いよく扉が開いた。そこにはアレクが真剣な表情で立っていた。真っ直ぐアイシャに向かう。そしてアイシャの前に立ち、一呼吸おいて跪く。


『アイシャ、これから先どんなことがあろうと君は俺が守る。だから俺と、俺と結婚して欲しい」


静まり返る送別会の会場。会場にいる全員がアイシャの返事を待つ。


『はい、はい!喜んで!』


『『『おおおぉぉぉー!!』』』


会場全員が喜びに包まれた。今までしかたなく送別するという雰囲気がガラリと変わり、会場の全員が二人を心から祝福した。


やれやれ、何とか上手くいったな。と部屋から出てくると、当然ながら質問される。


『ガレスさん!ありがとうございます。兄を説得してくれて本当にありがとうございます。でも、どうやって説得したんですか?誰が説得しても無理だったのに』


「知りたい?」


『ええ、是非きかせてください!』


「知ったら後戻りできない。絶対に協力してもらうよ。いいの?」


『ええぇ?まぁ構いませんが?何か不都合でもあるんですか』


「うーん、じゃぁ結論から言おう』


会場にる全員がオレの言葉に耳を傾ける。


『簡単に言うと、アレクと協力してセレステ教を潰すことにしたんだ。絶対皆にも協力してもらうからな』


『『『……はぁぁぁぁ~!?』』』


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