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第127話 新たなクランメンバー

弧月のメンバーがダンジョンから帰って来た。


『ただいま~。今回は349階まで行ってきたよ。次のアタックで350階層のボス戦かな。あー疲れた~。システィさんでもルカちゃんでもいいから俺を癒してくれ~』


と、いつも通りカインが報告がてら軽口をたたく。


『カイン君を癒す?どうしようかな~」


システィさんが思わせ振りな態度でカインに対応する。


『システィさ~ん、俺ってSSランクパーティの前衛よ。結構有望株だと思わない?』


『ん~そう思わなくはないけどー、カイン君って脇役臭がするのよねぇ~』


『ひっどっ!ルカちゃ~ん、システィさんが辛辣なんだけどー』


『え?私もシスティ先輩と同意見です。一昨日きやがれって感じです』


『ぐふっぅ、システィさんより酷かった』


そんなやり取りをしている横でアレクとアイシャさんはダンジョンで入手したアイテムの整理や、装備、備品の点検など仲睦まじく一緒に後片付けをしている。ぱっと見、付き合っているようにしか見えないのだけどねって、うぉ!


『ガレス~、皆がオレに対して厳しいんだよぉ~。お前の奴隷に俺を癒すように命じてくれぇ』


残念なカインがオレにすがってきた。いつもならオレもバッサリとカインを切り捨てるのだが、今回はねぇ…


『癒してくれるか分からんが、カイン達がダンジョンに潜っている間に可愛い冒険者を仮採用した。弧月のメンバーさえよければクランに加入させようと思う。先に言っておくがオレは手を出していないからな』


『マジで!!どこにる!?早く紹介しろ、ガレス!』


『ここにいますよ、カインさん。お久しぶりです』


奥の部屋に隠れていたサーシャちゃんが姿を現す。


『え?サーシャちゃん?前に会った時より大きくなったね、もう大人の女性だよ』


『ありがとうございます。皆さんもお久しぶりです』


ラーニャさんに脇を小突かれる。


『ちょっと、どういうことよガレス』


「どいうことも何も、Dランク冒険者であるサーシャちゃんが訪ねてきて、クランへ加入させてほしいと言ってきた。オレは加入を認めてもいいかと思ったけど、弧月のメンバーに相談もなしに加入させるのはどうかと思ったから仮採用って形にした。今日までクランの雑事を手伝ってもらっていたんだ」


『サーシャちゃんとっても良い子よ』

『すごく助かってるっす』


とシスティさんとルカさんからの受けは良い。


『サーシャ、今のガレスの話は本当か?サーシャがDランク冒険者なんて、今初めて知ったぞ』


『本当よ、お兄ちゃん。私の意志で冒険者になったの』


アレクの顔が険しくなる。


『またお前は勝手なことをして…ガレス、奥の部屋を借りるぞ。少し妹と話す』


「ああ、構わないよ。お互い納得する結論を出してくれ。できれば穏便にな」


『分かった。サーシャ、来い』


珍しくアレクが怒ってる感じだな。兄として、先輩冒険者として言うべきことがあるのだろう…が、その姿勢が最後まで続けばいいなぁアレクよ。


その様子を見ていたアイシャさんが心配そうにしていた。


『大丈夫かしら、アレクはサーシャに対して厳しいのよ。本気で安全で幸せな生活を送って欲しいと願っている。だから危険と隣り合わせの冒険者稼業に就くことは絶対反対だし…、サーシャはサーシャで意地っぱりなことがあるから…喧嘩にならないか心配だわ』


アイシャさんからしたら心配でしかないよな。でもなーオレが地雷を踏み抜いているから、全く心配ないってのが本音だな。ウチの奴隷たちも同じ考えらしい。


『アイシャ、大丈夫よ。きっと丸く収まるわ』

『そう、サーシャちゃんは強い』

『いくらアクレが凄んでもサーシャちゃんは怯まないわよ』

『むしろアレクのメンタルが問題よね』


奴隷メンバーのサーシャ推しに、アイシャさんが怪訝な顔をする。

『えぇ?何かサーシャの評価がもの凄く高くない?私たちがダンジョンに潜っている間にサーシャが何かした?』


「システィさんとルカさんを手伝っただけだよ。サーシャちゃんが何かしたというより、アレクが何もしてないのが問題なんだよな…」


『はい?』


「いや、何でもないよ。少し待てば出てくるはずだから茶でも飲みながら待とう」


・・・・・・


2人が部屋から出てきた。予想通りサーシャちゃんは笑顔で、アレクは疲れた顔をしていた。


『お兄ちゃんは、私に"危険なことはさせない"ことが絶対に譲れないラインだったので、とりあえず冒険者は諦めます。代わりにクランの事務員として雇ってください』


ほう、そういう形に落ち着いたか…うーん、アレクからの視線が痛い。オレが断ってくれることを期待しているような気がするが、オレはいつだって女性の味方なのだ。ウチの事務員はニーナの他に、元々弧月の専属だったランドルフのおっさんがいる。無口で存在感がないが事務仕事では頼りになるおっさんだ。


「ランドルフさん、サーシャちゃん雇うけどいいかな?」


『…構わんよ』


『よし、サーシャちゃんを雇おう。システィさんとルカさんも問題ないですよね?」


『ええ、もちろん問題ないわ』

『問題ないっす』


「ニーナにはオレから話しておく。よし、これからよろしくな、サーシャちゃん」


『はい、よろしくお願いします。頑張りますので色々教えてください。あ、それとサーシャと呼んでもらって構いませんから』


アイシャさんはアレクに何があったか問いただしている…が、追い打ちにしかなってないから止めてあげて。何せヘタレだしな。そんな感じでクラン宵の月に事務員が増えたのだった。


・・・・・・

ー 数日後 ー


今日はアイザックが来ている。出来上がった弓を持ってきてくれたのだ。


「これがバーバラの素材で作った弓か…これはいいな」


『そうだろう、ユグドラシルの最高峰の弓職人が作った逸品だからな』


魔力がよく伝わるし、よくしなり、それでいて耐久力が高い。いい弓だ。


『お兄様、弓は10本あるのでしょう?お兄様の分や、私の分はないのですか?』


『あるわけないだろう。素材としては世界樹に次ぐ高品質な物だ。長老衆が奪い合っていたよ』


なるほどな。エルフは世界樹の守り手だから世界樹を傷付けることは出来ない。弓を作るために世界樹の枝を切るなんてことはあり得ないだろう。そうなるとバーバラの素材は最高の素材となるわけだ。争奪戦が起こるほどなら、アルフォンス様が同胞を殺し続けたバーバラを許したのも頷ける。


『それで、アレクの妹を雇ったんだって?アレクの様子がおかしいのはそのせいか?』


『アイザック…妹からの圧が強くて気が滅入る。助けてくれ』


『さっさとアイシャ殿とくっつけばいいだろう。部外者のオレから見てもお似合いだと思うがな』


アイザックが至極まとなことを言う。アレク以外の誰もがそう思っている。

あとからアレクとサーシャの話し合いの結果を聞いたが、アイシャに告白する期限を無理矢理決めさせられたらしい。アレクは色々言い訳して回避しようとしたのだが、"ダンジョン400階踏破に向けて忙しい"という言い訳をしたら、"じゃぁ400階踏破したら告白ね”と言われ覆せなかったとか。


『うぅ、皆そう言うんだよ~』


そうだろうなぁ


『アレクよ、妹をもつ俺が言えることはただ一つだ。ガレスに妹を食われないように気を付けろ』


ぶっ!そうくるか。


「アイザック、オレがサーシャに手を出すわけないだろう」


『リディアの時もそう言っていたがな』


それを言われると弱い


「それは、あれだ、リディアからの熱烈なアプローチがあったからでな』


『今思い出すと照れますわ~』


照れんなリディア。そして睨むなアレク。


『サーシャに手を出したらお前でも許さんぞガレス』


「だから手を出さないって。サーシャは15歳だったよな。いささか幼いだろう」


『何を言っている。同年代のフローラに手を出しているだろう』


「フローラは19歳だ」


まぁ同年代と見られても仕方ない…のか?何せサーシャが"見た目"が同じ年頃のフローラと友達のような付き合いをしている。初対面の挨拶で『よろしくね、フローラちゃん』とサーシャにちゃん付けで呼ばれて微妙な顔をしていたフローラが印象深かった。


「とにかく、オレが手を出す、出さないの話ではなかっただろ。アレクが告白するか、しないかの話だったろうが。覚悟を決めろアレク。400階踏破して恋人も手に入れろ」


『大丈夫かなぁ…断られないかなぁ』


なんでこいつはそんなに自信がないのか…そして400階踏破の方はできないと微塵も思ってないところがまた凄い。踏破できる前提で告白の心配をしてるからなぁ。遅かれ早かれ400階は踏破できるだろう。そしたら頑張れよアレク。

…などとこの時は考えていたが、400階踏破により大問題が発生するとは思ってもいなかった。

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