第120話 世界樹防衛戦7
従魔にしたエルダートレントだが、名前がないとのことなので名前をつけることにした。
1万年もの間、名無しだったとは驚きだったが、本人曰く、"名前を呼ぶやつなんていないから必要なかった"とのこと。それもそうだな。近付く奴は養分にしてたわけだし、同族と同じ場所にいたら養分の取り合いになるから基本的に1体で過ごす。そう考えると名前を呼ばれることはないか。
どんな名前がいいか聞いてみたら花の名前が入っている名前がいいとのこと。1万年生きている割には少女趣味だなと思ったが、今までの人生(木生?)の目標としていた世界樹は美しい花を咲かせるらしい。それに肖りたいようだ。いろいろ考えたが、バーバラという名前にした。『及第点でしょ』と言っていたが表情から推測すると問題なさそうだ。
そして今はアルフォンス様と謁見中だ。エルダートレントの討伐依頼は、従魔にしたことで達成扱いにして欲しいとお願いしてみたが、当然ながら渋い顔している。ここ100年間、同胞のエルフを吸収し続けた魔物だ。文字通り積年の恨みがあるだろう。
『…正直なところ、エルフの王としてそのエルダートレントを許すわけにはゆかぬ』
そうだろうな。予想はしていたが厳しいか。
『だが、討伐してくれたガレス殿に恩を感じているのも事実だ』
おぉ、アルフォンス様は心が広い。あれだけ森を焼いても感謝してくれるのか。話しの風向きが変わるかな?
『ここは建設的な話をしよう。ガレス殿はエルダートレントを素材として扱わないと言ったな』
「ええ、従魔にする以上、嬲るような真似をするつもりはありません」
『ふむ…今回、火の愛し子であるガレス殿に討伐を依頼した時点でエルダートレントの素材の入手は諦めていた。討伐成功はトレントの焼失を意味すると思っていたからな。だが、エルダートレントを従魔にするならば、エルダートレントの素材を我々エルフに提供することで償いとするのはどうだろうか。トレントが枝を切り落とすのに痛みを感じるというのであれば、罰にもなるだろう』
「なるほど…どうだ、バーバラ?」
『まぁ、私が生き延びられるなら落としどころとしては悪くないかもしれないが、永遠にねだられても困る。数を決めて欲しいね』
『そうだな、弓が作れるくらいの大きさの枝を100本でどうだ?』
『大きくでたね…まぁいいよ。ただ、今は無理だし、体の大きさが回復したとしても一度には無理だ』
『そうだな、我々も貴様も長寿だ。そのあたりの話は貴様の体が回復してからでよかろう』
「では、体が回復して素材を提供できそうなら連絡します」
『承知した』
これで今回の緊急の指名依頼については片が付いたかな。
『ところでガレス殿、今回の指名依頼の報酬についてだが、これを渡そう』
小さな瓶に少量の液体が入っていた。
「これは?」
『世界樹の雫。世界樹が数十年に一度生み出す霊水よ』
「そのような貴重な品をいただいてよろしいのでしょうか?」
『構わぬよ。我らエルフは長寿で他種族に比べ優れているとはいえ、不得手なことはある。ガレス殿とは長く付き合って損はない。そう判断した結果だ』
世界樹の雫か。数十年に1度と言っても長寿であるエルフならそれなりに貯め込んでいるのだろう。これを渡してくる意図も分かる。今後も不得手な問題が発生した場合は助けろということだろう。エルフとの仲が良くなることは喜ばしいことだし、ここは遠慮なくもらっておこう。
「では、ありがたく頂戴いたします」
こうしてハイエルフからの緊急指名依頼は、ウチのクランに犠牲をだすことなく、貴重な素材を入手し、大成功の内に終わった。
ただ一つ、気になることがある。バーバラを抱いたにも関わらず、どのステータスも補正がかからなかった。以前、リディアを抱いたときもそうだった。何か条件があるのだろうか。1万年生きたエルダートレントだからかなり期待していたのにとんだ肩透かしである。まぁそれは追々調べていくか。ステータスが上がらないパターンが2例では共通項を見つけるのは無理だしな。
・・・・・・
バスクに戻って数日…うざい!
何がうざいかって?貴重な素材を売ってくれと商人どもが群がってくるのだ。別にウチのクランメンバーが言いふらしたわけではない。エルフ側から情報が伝わったのだ。エルフが排他的な種族とはいえ、アイザックのようにお役目を担っているエルフが多数いる。アルフォンス様は特に情報統制をしなかったので、人間の生活圏で活動するエルフから普通に漏れたわけだ。SSランク冒険者パーティ弧月もクランメンバーなので、弧月が睨みをきかせれば、まともな商会は大人しくなるのだが、それでも限界があり、突撃している商人が後と断たない。どうしたものか…まぁ一つ手はあるのだが。
そんな折、世界一と謳われる商会からコンタクトがあった。サルマン商会当主ムハンマドからの直々の呼び出しだ。さすがに無視できないかなぁ。




