第120話 「不登校」テスト明け
東一郎にとって、テスト期間ほど憂鬱なものはなかった。水島瞬の優等生ぶりに比べ東一郎の学業における苦戦ぶりは傍目にも非常に目立つほどの違いであった。
「おつかれー!どうだった?」
エマは東一郎の教室にやってくると、早速声をかけた。
「いや、それ聞く?」
東一郎はうんざり顔でエマに答えた。
「でも、普段よりは良かったんじゃないの?」
そう言ってヤマトが会話に加わった。
「いや、理数系はさっぱりだわ…」
東一郎はそう言って頭を左右に振った。
「ああ、入学当初は成績上位だったのに…」
そう言ってヤマトはため息を付いた。
「ねぇねぇ!テストも終わったんだし!遊び行こうよ!」
エマはそう言って東一郎とヤマトを見た。
「まぁ、そうだな。とりあえず結果はまだ出ないわけだし!」
東一郎も伸びをしながら言った。
「じゃあ、カラオケでも行こっか!ユリも多分くるよ!唯も行く?」
エマは少し離れたところに居た唯に声をかけたが、唯は複雑な笑顔で首を振った。
彼女はカラオケボックスにややトラウマを抱えたようだ。
「ああ、ごめん…」
エマはバツが悪そうな顔をした。唯は気にしてない風に笑顔を返した。
「まぁ、別にカラオケじゃなくても…」
東一郎がいいかけた時だった。
「じゃあさ!友達の家に行こうよ!」
いきなり声をかけてきたのは、生徒会長の璃子だった。
「うわ!?な、何!?」
エマは璃子に驚いて思わずのけぞった。
「あはは、大袈裟〜」
璃子は驚いたエマの表情を見て笑いながら言った。
「ちょ、ちょっと!驚くに決まってるでしょ!?」
少し起こりながらエマは璃子に言い返した。
「もう〜そんなに驚かなくてもイイじゃん。ね!水島くん!」
璃子はそう言うと東一郎の隣の席に勝手に腰を下ろすと頬杖を付きながら、東一郎を下から覗き込むように見上げた。
「ちょ!ちょっと!何してんのよ!」
エマが半分キレながら璃子に文句を言った。
「あ、あの…すみません」
「う、うわ!?びっくりした〜!委員長ちゃんもいたの!?」
エマは桜井こころがいつの間にかすぐ横に居たことに驚いた。
「何なの!?もう!生徒会ってなに?忍者?スパイ!?意味分かんない!」
エマは最早何にキレているのかわからないくらいに喚き散らした。
「だーからー友達のお家に行こうよ!」
璃子は食い気味にエマに言った後、東一郎を見た。
「え、いや。何?友達って?誰のこと?」
東一郎は一連のやり取りに少しうんざりしながらも返答した。
「え?そりゃ決まってるよ。小山内累くん!」
堂々と璃子はそう言って目をキラキラさせて言った。
「??」
「え?」
「だれ?」
ぽかんとした顔で皆呆然と璃子のことを見ていた。
「いや、ていうかさ。そもそも誰?」
エマはそう言って璃子とこころを見た。
「うーん。まぁ、友達?みたいな?」
璃子は悪びれもせずに言った。
「みたいなって…ナニソレ?」
エマはそう言うと呆れ顔で言った。
「あ、あの、すみません。小山内累という1年生が先々週から学校に来ていなくて、担任の先生とも連絡がつかないという事で、生徒会で様子を見に行くことにしたんです」
こころは、埒が明かないことを悟り話し始めた。
「え?うちら関係なくない!マジで!」
エマは半ばマジギレ気味に璃子に文句を言った。
「だってぇ。生徒会で頼りになる男子いないし、一応ほら。男の子の家に行くのに女の子二人じゃ心細いじゃない。何かあったらね!」
璃子はそう言いながら東一郎の腕を組んだ。
「お、おい!ちょ!やめろってば!」
東一郎は慌てて璃子から離れようとしたが、璃子はガッチリと腕を組んで離れなかった。
「で?来てくれるよね?」
「行かないって!何で俺が?生徒会でどうにかしろよ!」
東一郎は顔をしかめていった。
「へぇ〜、じゃあ、この写真皆に見せちゃおー」
そう言うと、璃子はスマホを片手に何故か唯のところに走っていってスマホの写真を見せようとした。
「お!おいちょっと!待てよ!わかったから!行くから!」
東一郎は慌てて璃子を唯から引き離した。
「あ、本当!?助かるぅ!ね!こころちゃん!」
璃子はこころに向けて満面の笑みを浮かべた。こころは引きつった顔でその様子を見てた。エマは般若のような顔をしながら苦々しげに、自由に振る舞う璃子を睨みつけていた。
「よーし!そうと決まれば、サクッと行っちゃうよ!レッツゴー!」
璃子は勢いよく立ち上がると、東一郎の手を引いて教室から出ていこうとした。
「あのクソ生徒会長めぇ!」
エマは顔を真赤にして怒りを抑えながらその後をついていった。
「あ、あのさ。俺も行ったほうがいい??」
ヤマトはこころに聞いた。こころは申し訳無さそうにコクリと頷いた。
結局、東一郎、璃子、エマ、ヤマトとこころの5人は郊外にある小山内累の家に向かうことになったのだった。




