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第121話 「不登校」少年の家

小山内累の家は、駅前からバスに乗って20分ほど走った場所にあった。駅前の栄ぐらいからするとやや寂しい印象を受けるのどかな街並みだった。


「で、その累くんとやらは、何で不登校?」

東一郎は諦めのたのか璃子に素直に聞いた。


「うーん。それが全然わかんないんだって。1学期の期末考査受けないと、追試もできずに、そのまま留年てことになっちゃうから、とにかくテストだけは受けさせないとねぇ〜」

緊張感のない璃子の言葉を聞いたエマは、怒りの態度を隠さなかった。


「おー、ここかぁ」

璃子が指さした家は、比較的大きな一軒家だった。

周りの家とは少し離れており、ポツンとした印象があった。


家のチャイムを押すと、しばらくして母親らしく女性が玄関から出てきた。

彼女は明和高校の学生が5人も来たので、何事かという警戒した雰囲気であった。


「明和高校の生徒会のものです。累くん居ますか?」

璃子は先程までのふにゃふにゃした態度を一変させて、シャンとした態度で母親に言った。


「あ、そ、そうなんですか。わざわざすみません…」

母親はそうは言うものの、だからといって類にあわせようとする雰囲気を出さなかった。


「あの、累くんと少しお話をしたいのですが」

璃子は空気を敢えて読まないようにして、母親に言った。


「あ、ええ、そ、それじゃあ、ちょっと聞いてきますね」

母親はそう言ってそそくさと家に入っていった。


「ふーん。ちょっとこれは駄目っぽいね」

にやりと笑うように璃子は呟いた。彼女はどうやら心の奥底ではお見通しのようだった。


璃子の想像通りに母親が出てきたが、返事は予想通りだった。


「皆さん。すみません。息子の累は少し体調が悪いので、皆さんにはお会いできないとのことです。またの機会に…」

母親はそう言って頭を下げた。


「あの、累くんは病気なんですか?」

こころはそう言って、母親に聞いた。


「あ、いえ…それは…」

母親はモゴモゴと話をしようとしなかった。


「そうですか。では日を改めてまた来ますね」

璃子はまた深々と頭を下げると、踵を返してもと来た道を引き返した。


こころや他のメンバーもそれに従うように歩いていった。

東一郎も列の最後に加わるとそのまま類の家を見た。


「……」

東一郎は鋭くある部屋のカーテンが少し揺れたのを見つけた。その窓から視線を感じる。


一行が少し離れたタイミングで、類の家からガチャンと何かが割れるような音がした。


「あー、俺ちょっと、あいつの家にもう一回行ってくるわ」

東一郎はそう言うと、さっさとまた類の家へと歩き出した。


「うん。任せた!」

璃子はこうなる事がわかっているかのように、あっさりと言った。


「ちょ、ちょっと。待ってよ」

エマは東一郎を追いかけようとしたが、璃子がすっとエマの腕を掴んだ。


「こういうのは、男の子同士のほうが話が早いって!」

そう言ってエマにウィンクをした。


「っく…」

年齢の割に大人びていて、モデル業もこなすエマにとって、普通の女子高生以上に経験があり、また世間を知っていた。だが璃子のような存在はどうにも掴みどころがなく彼女と一緒にいるだけで、自分の築き上げてきたアイデンティティすら崩されるのではないかという不安に襲われた。


「ふん」

エマはそう言ってそっぽを向くのが精一杯の強がりだった。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

「あの、どうして?」

類の母親は、そう言って困惑した。


「ああ、ちょっと累くんと会話させてもらえますか?」

東一郎は満面の笑みでそう言った。


「でも、累は…その…」

母親は相変わらずモゴモゴと要領を得なかった。


「じゃあ、お邪魔しますよ」

東一郎はそう言うと、勝手に家に入り込もうとした。


「あの、困ります!」

母親は必死になって東一郎を止めようとした。


「ん?何が困るんですか?」

東一郎は母親に聞いた。


「その、急に来られてもお部屋に入れられる準備が…」

「ああ、構いませんよ。それとも入っちゃまずい理由がなにか?」

東一郎は母親に向かって見下ろすようにしていった。


「あ、いや、その…」

「大丈夫ですよ。お母さん。男同士ちょっと話をするだけですから」

東一郎はそういって家に上がると、母親に部屋の前まで案内してもらった。


「おい。累くん。開けてくれよ」

東一郎は満面の笑みで、優しい言葉で類の部屋のドアの前から声をかけた。

類の部屋からは何も聞こえなかった。


「おい。開けてくれよ」

東一郎は再び声をかけた。と、同時に勝手に部屋に入り込もうとドアノブをガチャガチャと回した。ドアノブは鍵がかかっており、中に入れなかった。


「息子さんずっとこんな状態ですか?」

東一郎母親に聞くと、母親は黙って頷いた。


「じゃあ、お母さん。後は任せてください。どうぞお戻りになって」

東一郎は口調こそ丁寧だが反論を許さない態度で言った。母親は心配げに様子を窺いながら戻っていった。


「おい。累。開けろ」

東一郎は、先程の優しげな口調とは異なり低い声で言った。

返事はなかった。


「おい。もう一度だけ言う。開けろ。10秒待つ」

東一郎はそういってカウントを始めた。


「1、2、3、4、5…」

とまで言ったところで、いきなりドアノブを蹴飛ばすと扉が開いた。ドアノブについて鍵ごと破壊したのだった。かなり大きな音がなったが、母親はやってこなかった。


「く、くるな!!!うわあああ」

部屋の奥の方から声が聞こえる。


「あ?俺だって来たくてきてねーわ」

そういって東一郎はツカツカと部屋の中に入っていった。

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