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第119話 「プールの幽霊」村山璃子という生徒会長

「あの、会長。すみませんでした」

こころは璃子の前に行くと頭を下げた。


「あー。良いの良いの!あんなの気にしない!気にしない!」

璃子はそう言ってこころの頭をポンポンと叩いた。


「で〜?勉強は捗ってるの?」

璃子はそう言って当たり前のように東一郎の前にやってくると東一郎にピッタリとくっつくようにしてノートを眺めた。


「ちょ!?何やってんのよ!」

エマが二人の間に割り込むようにして入り込んだ。こころは明らかに動揺した顔をしたが、どうして良いか分からなかった。


「あはは。そんなマジにならない!かわいいねぇ〜アナタがエマちゃんだ!」

璃子はそう言うとエマに抱きつくようにして抱擁した。


「ちょ!なんなのよ!」

エマは慌てて離れると東一郎の影に隠れた。


「あれぇ〜嫌われちゃったぁ〜」

璃子は悲しげな顔をわざと作ってこころに泣きついた。

こころに抱きつこうとして、こころもスッと後ろに引いた。


「うわ〜ん。後輩たちから嫌われちゃった〜。で、君がやまと君だね」


璃子はそう言って泣く真似をしながらヤマトの所に行くと、また笑顔に戻ると

ヤマトに言った。


「てか、アンタ俺はてっきり幽霊かと…」

東一郎は信じられない顔をしながら、璃子に言った。


「ひどいなぁ!こんなカワイイ幽霊がいるわけ無いでしょ!?アタシは村山璃子!3年生だよ!後輩諸君!あ、一応ここの生徒会長なんでよろしくね!」

璃子はそう言うとピースサインをしながら決めポーズを作った。


当然誰もが唖然とした表情のままだった。


「あ、あの。会長と水島さんって知り合いだったんですか?」

こころはおずおずと二人に聞いた。


「え、あ、ああ。まぁ…」

東一郎はお茶を濁すような言い方をした。


「うん。てか、昨日!?知り合ったよ。こころちゃんが帰った後で〜」

あっけらかんと答える璃子の言葉に、こころが目を見開いて全身を震わせた。

どういう事が起こったのか、想像がついたからだろう。こころの後悔の念が伝わってきそうな勢いだった。


「さあ。勉強しようよ!水島くんはアタシが教えてあげようか!」

璃子はそう言うと、東一郎の隣の席に移動するとピッタリとくっつこうとした。


「だから!距離!距離!!」

東一郎は慌てて離れると、狼狽した表情で璃子に言った。


「ちょ!?な、何なのあの人!?本当に生徒会長?」

エマはこころの所に移動して来て苦々しげに、璃子と東一郎を見ながらこころに聞いた。


「はい…。あんな感じの人です。悪い人ではないのですが…」

こころも珍しく苦々しげに二人の様子を見ながら答えた。


「生徒会選挙の時とか、凄いシッカリした人に見えたけど?」

「はい。オンオフが明確な人ですが、大半がオフです」

こころは、尊敬も感謝もしているはずの先輩に対して、刺々しい言い方をした。


「だから!ちょっと離れろよ!」

「ほらほら。照れなくてもイイじゃん。アタシと君の仲だし!」

璃子は遠慮なしに東一郎の腕を組んで東一郎に迫っていた。


「ちょ!いいかげんにしなさいよ!」

「や、やりすぎですよ!」

エマとこころは耐えきれずに、璃子の所に乗り込もうとした。


「きやあああ!怖い〜」

そう言って璃子は東一郎のところを離れるとヤマトの所に来るとやまとを後ろからギュッと抱きしめた。


「え!?えええええ!?」

ヤマトは突然の事に驚きながら、ショートカットの美少女の色香にやられてデレデレとした顔をした。


「やまと君最低!あかりちゃんに言いつける!」

「失望しました!やまとさん」

エマとこころはヤマトを批判した。


「ちょ!?俺は関係ないって!そ、そんなぁ!」

ヤマトは焦りながらも否定した。


「それにぃ。アタシ達お互いね。見られちゃいけない姿見られちゃったしね」

璃子はヤマトの耳をイジイジといじりながら、上目遣いに東一郎を見た。


「はぁ!?」

「え?」

エマとこころは、東一郎の顔をじっと見た。


「い、いや!ちが!違うぞ!アレは、不可抗力と言うか…」

しどろもどろの東一郎にエマもこころも冷たい視線を向けた。


「最低!」

「見損ないました」

エマとこころの言葉がぐさりと東一郎に刺さった。


「まぁまぁ、二人とも。そんなに怒らないの。二人共とてもカワイイもの。水島くん。あの日のことは言っちゃ駄目だよ。女の嫉妬は怖いのよ〜うふふふ」

璃子は東一郎にそう言うと、ササッと立ち上がった。


「お、おい!!変なこと言うなよ!何もなかっただろうが!」

東一郎は弁解の意味も含めて敢えて言った。


「ふーん。二人であんな事しといて、何もなかったって言っちゃうんだ…。アタシ初めてだったのに…」

そうして悲しげな顔をして東一郎を見た。


「な!?だから!そういう誤解を生むような言い方をするなっての!」

「いいの。いいんだ。アタシはいいの。だから二人に優しくしてあげて。君が否定しても、アタシはあの夜のこと忘れないから!」

璃子は目をうるうると潤ませると、いつの間にか撮った携帯に二人共半裸の状態のスマホの画像をそっと見せた。そのまま何も言わないままに教室から出ていった。


その場に残された4人の空気は、凄まじいものであった。

四人の思いはそれぞれ違えど、璃子に対する思いは一致していた。


「小悪魔」


誰もが生徒会長の事をそう思った。


その後、東一郎はいわれなき誤解を解くのに小一時間ほど掛けることになり、テスト前の貴重な勉強時間が大幅に削られたのであった。

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