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第118話 「プールの幽霊」枯れ尾花

勝ち誇った顔をした佐々木は東一郎を見下ろしながら、挑発的な視線を送っていた。


もし東一郎が殴りかかりでもしたら、こころはその瞬間に全ての支持を失い、生徒会役員を辞めることになるだろう。東一郎もそこが分かるだけに何も出来ずにいた。


「卑怯じゃない!」

エマは我慢ができずに、佐々木に文句を言った。


「卑怯?何がですか?」

佐々木は全く動じること無くエマに冷たい目線を送っていた。

エマは怒りの表情をしたまま何も言い返せなかった。


「あら?この騒ぎはなあに?」

その時、突然場違いな声が一般生徒たちの後ろからした。


「よいしょ。よいしょ。ちょっと通して…」

人をかき分けながら出てきたのは、ショートカットの夏服の女子生徒だった。


「あ、会長…」

こころは驚いた表情でショートカットの少女に言った。


「おやあ。これは生徒会長さま!ちょうど良かった。今、生徒会役員の桜井こころさんの私的な教室利用を発見したところです。どうやって責任を取るつもりですか?」

佐々木は、現れた少女に向かって言った。


「え?なんのこと?」

ショートカットの少女はキョトンとした顔をしてキョロキョロと辺りを見渡した。


「あー!アンタは!?」

思わず東一郎は声を上げた。そこに居た少女は、先日散々振り回された村山璃子だったからだ。


「あ!水島くん!やっほー!元気?」

璃子は東一郎に向かって、ニコニコしながら手を振った。


「え?」

こころは二人が知り合いだったことに驚いたようだ。


「え?会長って?」

東一郎は混乱しながら、こころに聞いた。


「もう!自分の学校の生徒会長がこんな美少女なのに分かんないなんて…ふぅ…」

璃子はそう言って呆れた顔をしてすぐまた笑った。


「どうして?」

こころが混乱しながら呟いた。


「オー!やってるねぇ!事前補習の実験!」

璃子は机の様子を見て、敢えて皆に聞こえるように言った。


「え?」

「??」

「は?」

東一郎やエマだけでなく、こころも佐々木も集まった一般生徒まで皆ぽかんとした顔をした。


「一体何の事ですか?生徒会役員の私的な…」

「あー、これね。生徒会の今期の施策の1つ!名付けて赤点撲滅作戦!事前補習なのだ!」

佐々木は大きな声で抗議しようとしたが、璃子は笑顔のままに遮って大袈裟にこころを指さした。


「は!?何をわけのわからん事を…」

佐々木はそう言って、再び抗議しようとしたが無視するように璃子は続けた。


「だから、赤点取って補習する前に、生徒会主導で赤点の恐れのある生徒を事前に勉強会を行い赤点を回避させるための試み!それの実験第一号でーす!」

一般生徒に向けて大きな声で璃子は言った。

ザワザワとしだす一般生徒たちに向かって璃子は目の前まで言った。


「ねぇねぇ。せっかく来たんだから協力してくれない?これから事前補修するの!たったの2,3時間勉強に付き合ってくれるだけでOK!」

璃子はそう言って集まった生徒たちに声をかけた。


「ねぇ。ほら生徒会に協力してよぉ〜」

璃子は生徒たちの手をとらんばかりにお願いし始めた。


「あ、いや、ちょっと俺そんな補習とかじゃないから…」

「ちょっと俺も予定あるし…」

「自分で勉強したほうが良いし…」

「なんだ、生徒会の試みだったのか、がんばってねー」

口々に白けた雰囲気のまま、生徒たちは散り散りに去っていった。


「あちゃー。これだから進学校の生徒たちは…」

璃子は呆れながら笑った。


「な、何だその取って付けたような理由は!騙されるか?」

佐々木は璃子に対して言い放った。


「生徒会は、全ての生徒に学校生活を充実して過ごしてほしいのです。善い行いをする事に批判をするのは勝手ですが、歩みを止めるなら対抗措置を講じた上で処分します!」

璃子は突然毅然とした態度で佐々木に向かって言い放った。


「っつ!だからって…」

「そうですよ!横暴です!生徒会なら私的に特権を持っているのですか!?」

立花美春は佐々木に変わって璃子に言い返した。


「ふーん。でもねぇ。4月19日の放課後、風紀委員会室。午後7時半ころ。風紀委員長の佐々木くんと立花三春さん。あなた達何してたのかな〜?」

璃子はそう言って不思議そうな顔で二人を見た後、随行してきた風紀委員の3名に向かって歩いていった。


「ねぇ。ちょっと聞いて聞いて!あのね。この日ね。佐々木くんの誕生日だったの。それでね。風紀委員の教室でね。立花さんがね…」

璃子は突然わけのわからない話を風紀委員の3人に言い出した。


「ちょ!ちょっとまて!!!な、何いってんだよ!」

佐々木は慌てふためいて璃子を止めに入った。


「そ、そうですよ!何を見たっていうんですか!?」

立花美春は顔を真っ赤にして璃子に迫った。


「え〜。それ、言っちゃう?言わせちゃう〜?」

璃子はいたずらっぽい目で二人を交互に見るとキャッと恥ずかしがる仕草を見せた。


「も、もう良い。行くぞ!」

佐々木と立花三春は、慌てながら教室を出ていってしまった。それに続くようにして、風紀委員の三人も怪訝そうな顔をしながら出ていってしまった。


「ふぅ〜大袈裟だなぁ。楽しみ給え!青春を!あははは」

璃子はそう大きな声で佐々木たちに声をかけて笑った。

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