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第110話 「プールの幽霊」期末テスト

「なんで俺らこのクソ暑さの中、バスケ?死ぬぞこれ?」

東一郎はヤマトに文句を言った。


「まぁ、流石にこれはきついな…」

ヤマトも流石にうんざりしていった。


「で、何で女子はプールなんだよ!?めちゃいいじゃん!」

東一郎は汗をタオルで拭きながら文句を言った。


「まぁ、プールの授業は男女一緒って訳にはいかないでしょ」

「ああ、それは良いんだけど、何もこの暑さで体育館でバスケって…もうちょいなんか考えられるんじゃねーの?倒れるぞこれ…」

「それより、そろそろ期末テストじゃん。今回は大丈夫?」

「だ、大丈夫なはずないだろ!?お前、俺が常にこの赤点かどうかの瀬戸際を耐え続けているっての知ってるだろ!?」

東一郎は、水島瞬と入れ替わったが、学力だけはどうにもならず、入れ替わってここまでギリギリで赤点を回避、もしくは補習で回避してきていた。


水島瞬は秀才であったため、東一郎に入れ替わったマイナスの影響が明確に現れた部分である。


汗を拭いて教室に戻ると、女子たちもプールから上がって教室に戻ってきていた。


「てかさ、汗拭いただけって、気持ち悪くね?こんなの人権侵害だぞ!」

東一郎は着替えたものの汗でベタついた自分の体を不快に感じていた。


椅子に座ってヤマトと話していると、唯が戻ってきた。

プールから出た唯は少し髪の毛が濡れていて、タオルを肩に掛けて乾かしているようだ。


東一郎は思わず唯の姿に目を奪われた。


「おい!何処見てる!」

突然声をかけられると、東一郎は驚いて椅子から落ちそうになった。


「な、なんだよ。ユリかよ…脅かすなよ!」

東一郎はそう言って、ユリを見た。隣には仏頂面のエマが立っていた。


「ねー!唯!水島くん!何か見てたよー!」

ユリは少し離れたところに居た唯にわざと聞こえるように言った。唯はこっちを見るとニッコリと笑って手を振った。


「おい!な、何でだよ。別に見てねーって!」

東一郎は一瞬笑顔で手を振ってから、焦って否定した。


「へー、そうだったのー?なんか〜熱い視線でみてたよ〜」

「ふ、ふざけんな!お前!」

ユリはそう言って東一郎をからかった。隣でエマが無表情のまま立っていた。


「ふーん、水島くんはプール上がりのJKをじっと見る変態ですか?へー」

エマは冷たい目のまま冷めた口調で言った。


「なんだよ。エマまで!んなわけ無いだろ!?」

東一郎は憮然とした表情で二人に言った。


「で、どうしたんだよ?汗臭い俺らに近づかないほうが良いぜぇ〜」

東一郎は自虐的に笑いながら言った。


「ねぇ。来週から期末試験じゃん。今回はどうなの?ヤバいの?」

「おぉ、お前、嫌なこと平気で言うのな…。ヤバいに決まってんじゃんか!」

「ふふーん。で、皆で水島くんを救う会やったげる」

「え!?マジで!勉強教えてくれんの!?」

東一郎はそう言うと嬉しそうに立ち上がってエマの手を取った。


「え!?ちょ…」

エマは思わず東一郎に手を握られて焦って顔を真っ赤にした。


「で、何処でやんの?いつやるの?」

東一郎は食い気味にエマに聞いた。


「え、ま、まぁ。どこでも良いんだけど…」

エマは初夏の陽の光に照らされて、顔が紅潮して見えた。


「ん?まぁ、どこでも良いけど、ファミレスとかは勘弁な。落ち着かねーんだよ」

「あーっと、ちょうどウチ誰も居ないんだよね。今週。だからウチでもいいよ」

エマは東一郎に目を合わせないように言った。


「おいおい!マジ!?だったら帰りとか気にしなくていいな!」

東一郎は嬉しそうに言うと、エマはコクリと頷いた。


「で、いつからやってくれんの?」

「今日からでも…」

「マジか!?ちょっと間に合わないかもって焦ってたんだよ。ありがとうな!」

東一郎はほぼ目を合わそうとしないエマに笑顔で礼を言った。


「ま、まぁ、そんなに期待しないでよね!」

エマはそう言うと少し照れくさそうにと笑った。


「へ〜。成績上位でもない人が教えて意味あるの?」

突然会話に割り込んできたのは、お嬢様の金刺遥だった。


「え!?何で!?」

エマは驚いて思わず言った。さらに遥の隣りにいた完璧女子、生徒会役員の桜井こころを見かけると一気にテンションが下がった。


「水島さんはどの教科が不得意なんですか?不得意な教科を多めにしたほうが良いですよ」

普段はあまり積極的には発言しないこころが、こうして突っ込んできたのはエマの家で勉強会をするというエマの魂胆を見抜いていたからに違いなかった。


「な、ちょっと!委員長ちゃんいきなり何?」

エマは慌ててこころに文句を言った。


「いえ、水島さんが困ってるんだったら、力になりたくて…」

言葉こそ控えめだが一切引く姿勢を見せなかった。エマは苦虫を噛み潰したようなかおをしながら恨めしげにこころを見上げた。

学年常にトップ5に入り続けているこころは、勉強という点においては敵うはずがなかったからだ。


「ねぇ、勉強って女の子の家でやるのってどうなの?」

金刺遥は、エマの魂胆を見抜いて先制攻撃をしてきた。


「まぁ、それもそうか…あんまり気にしてなかったよ…」

東一郎は少し考えた上で、笑って答えた。


「え!?そ、そんな…」

エマは思惑が外れて少し焦って、顔を曇らせた。


「じゃあ、せっかくだから放課後、教室でやるってのはどう?」

見かねたヤマトが少し控えめに提案した。


「ああ、それがいいんじゃない!?」

金刺遥は間髪入れずに答えた。


「でも学校って7時過ぎたらもう駄目じゃん!」

エマは必死に食い下がろうとした。


「9時までだったら生徒会管理の部室借りれますよ」

そう声を上げたのは、生徒会役員の桜井こころだった。


「元水球部の部室で、今は使ってないので生徒会管理です。机とか椅子も4つくらいならありますよ」

こころはそういって提案をした。


「お!じゃあ、そこでお願いしたい!」

東一郎は嬉しそうに、こころに言った。


「はい。良いですよ」

こころもニッコリと笑って東一郎に答えた。


「やった!じゃあ、エマ!こころちゃん!頼むぜ!」

東一郎はそう答えると、自分は用無しと思っていたエマはパッとにこやかな表情になった。

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