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第109話 「雨女」今後の行方

「これは予想ですけど、御神体を埋めた時、絶対に僕しか居なかったと思います」

「それは誰かが無くなったから、探し回ったんじゃないの?」

「可能性もありますけど、土を掘り起こして埋めたんですよ、どうやって分かったんですかね?」

「???」

「神様が自分で戻る?いや、誰かに依頼したんじゃないですか?」

「つまり俺らと一緒で神様の意思で依頼されたって事か?」

「恐らく願いが叶う条件が、「御神体を戻す」だったらシンプルですよね」

「そいつは、何を叶えてもらったんだろうな?」

「でも、誰かがこれを戻したのは確かですね」

「その誰かってのを探し当てたらまた何か分かるかもな…」

「でも、どうやって…」

水島瞬はそう言ってまた黙り込んだ。


「あるとしたら、お前と会ったようにやっぱり「夢」なんじゃねえか?」

「夢?ですか…」

「あれ以来…結局お前夢見た自覚ある?」

「そう言えば、神崎さんと会った時以外で自覚ないですね」

「結局こちらの神様のコミュニケーションって夢なんじゃないのか?」 

「じゃあ、それが起こるまで、何もしないで過ごすってことですか?」

「しょうがねぇだろ。小雪ちゃんみたいに姿見せてくれねーんだからよ」

そう言うと東一郎は社の床に腰を下ろした。

水島瞬も何も言わずにその場に腰を下ろした。


「まぁ、たまにはここに様子見に来るからよ…」

東一郎は何となく水島瞬に言った。


「どのみち6年後にはもとに戻るのであれば、このまま何もしないほうが良いんですかね?」

水島瞬は諦めにも似た気持ちで弱音を吐いた。


「いや、違うだろ。この状況をもとに戻すんだよ。6年後に何が起こるかなんてわからないだろ。大体にして、御神体が戻ったてことは、滑落事故で御神体が現れたっていう俺の未来とすでに違ってる…」

東一郎はそう言って天井を見上げた。


「確かに…6年後の未来…もうすでに違う世界線って事ですか…」

「かもな…。でも、その時が来たときにしっかり戻れるようにするしかねーだろ…」

それ以外二人は何も言わずに口を閉じた。


「ていうか、お前。よくバチが当たらなかったよな…」

「え…?」

「いや、御神体埋めるってよほどの罰当たりだぞ…」

「まぁ、確かに…」

「入れ替わったのはお前に対するバチなんじゃないのか?」

「え?そうですか?」

「いや、だって、普通に考えたら、ある日オッサンに入れ替わってたら嫌だろ」

「いや、普通のおじさんだったら嫌ですけど…僕は神崎さんみたいになりたいって願ってましたからね…」

「え…ああ、そ、そうか…」

「!!?」

二人はそこまで話すと、気がついてお互い目線を逸した。


「いや!違いますよ!わきまえて下さいよ!」

「当たり前だ!馬鹿野郎!」

二人は顔を真赤にしてお互いに言い争った。


「ま、まぁ、そうは言ってもとりあえず、夢を見るまではなんとも言えないな」

「何をどうしたら良いのか…さっぱりですね…」

「とにかく、まずはお互い生活を崩さないように過ごすぞ」

「分かってますよ」

「よし、じゃあ、とりあえず行くか…」

東一郎は立ち上がると神社を去ろうとした。


「あの!神崎さん!」

「ん?」

「あの、今度あずささんと小鳥ちゃんに会ってもらえませんか?」

水島瞬は東一郎の別れた妻と子供に会うことを提案した。


「はぁ!?何でだよ!やだよ!」

東一郎は驚いた顔をしてから全力で否定した。


「お願いしますよ。いつ戻るかわからないこんな状況でもし戻ってしまったら、僕はあずささんや小鳥ちゃんと完全な他人になってしまう…」

「ええ!?ちょ、マジでいや、ちょっと…」

「お願いしますよ!」

「いや…それは…ちょっと…」

そう言うと東一郎はバツの悪そうな顔をしてさっさとその場から離れると自転車に乗って去ってしまった。


「絶対来て下さいよ!お願いしますよ!」

水島瞬は逃げるように去っていく東一郎に大声で声をかけた。

東一郎は振り返ることもなく、自転車に乗るとそのまま姿が見えなくなった。


「まずい…まずいな…」

水島瞬の焦りは一気に不安へと変わった。


彼が入れ替わり神崎東一郎になった時、絶望的な状況であった。

知り合いも無く、お金もなく東一郎の妻のあずさとは、冷めきった関係であったため、最初入れ替わった水島瞬にもそっけない態度であった。


だが、様子がおかしいと分かると、徐々に助けになってくれた。

彼女から見れば別れたばかりの夫と過ごすことは苦痛でしか無かったはずだが、それでも一緒にいると徐々に彼女に惹かれる自分が居た。


元々冷めた性格で、世の中に絶望していた水島瞬にとっては東一郎になれたことよりも、あずさに出会えたことのほうがよほど意味があった。

まだ小学生の東一郎の娘である小鳥と一緒に過ごす日々はとても満たされて安心できる日々であった。


そんな毎日は彼を大きく変えた。

仕事を見つけ遊ぶこともなく、ひたすら働いた。不思議と同世代の若者が青春を謳歌している事に何の感情も抱かなかった。

ただひたすらに、この家族と一緒にいたい。その思いだけが強く残った。


いつしか水島瞬は、絶望ではなく希望に満ちた世界に浸っていたのだった。

だからこそ戻ってしまうかもしれない現状に焦りと絶望を感じるのだった。


「なんとかしないと…」

水島瞬は一人でそうつぶやくと、神社を後にするのだった。

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