47 ワンオペ
頬と腰に手を当て、キャピンと効果音が鳴ってそうなアイドルポーズを取る妖精。
いかにも自分がカワイイ存在だと知っているあざとさがフルオープンしていた。
「…………あ!? なんだてめえ」
「ひゃあコワイッ泣いちゃうかも~ぴえん」
切羽詰まった状況で、能天気に現れた妖精に苛立ちを隠せず、マジギレするリーダー。持っていた武器を振るもひらりと躱され、あからさまな泣き真似で煽り返されてしまった。
「こンの虫がぁああ!」
「あ~らら、いいのかしら~そんな態度とっちゃって。短気は損気って言うでしょ? 知ってる? 知らない? まーどっちでもいいけどー。とりあえずサポーターの話は聞くべきなんじゃないかなー。どうかなー?」
「うるせえ! 今はお前なんかにかまってる暇はねえんだよ!」
「そっちはなくてもこっちは仕事なんで一方的にやるだけですぅー。ぷー残念でしたー。どうしてもっていうなら~、あなたが日本名物☆ど☆げ☆ざ☆を披露してくれたら黙ってこの場からいなくなりますよ~」
「調子に乗りやがって虫けらがあああああ!!!」
バカにされたリーダーは顔を真赤にして激怒した。手に持つ武器を捨て慣れ親しんだ拳でリボンに襲いかかる。しかし当たらない。ひらりひらりとまるでダンスを踊っているかのようにあしらう様に、実力の差は歴然だ。
「リーダー! さっさとずらかりましょうぜ! じゃねえと死んじまう!」
「ああくそ! カッとなっちまってつい……よし、俺の背中に乗せて敵はガン無視でつっきっていくぞ」
我に返ったリーダーは頭を振り思考を戻し、仲間の手を借りヤンキーを背負い、来た道を戻ろうとした。
そこに指摘が入る。
「あれあれ~、そんなに急いでどこ行くのかな~? そっちの扉は開かないよ~」
「はあ? じゃあどうやって帰れって言うんだよ!」
「だーかーらー私の話を聞けって言ってるんですよー。これだから頭ミジンコは困るなぁ」
リボンはやれやれと肩をすくめため息をついた。
「「てめえこらくぁwせdrftgyふじこ」」
煽りに煽られた一同は、見たこと無い剣幕でブチギレ、声にならない罵声を上げ掴み取ろうとするも、やはり逃げられてしまう。いい加減おちょくりすぎたか、次の人たちも近づいてきてるしこの辺にしておくかと思い、リボンは動きを止め【光魔法:閃光】を唱えた。
「「ぐあッ」」
強烈な光が網膜を焼く。たまらずのけぞり目を瞑る姿を見てコホンと咳払いをひとつ。
「さて、遊びはここまでとしまして。あらためて4階突破おめでとうございます。
ここまでがこのダンジョンのチュートリアルとなっております。楽しんでいただけましたでしょうか。
これより先は危険地帯。覚悟ある者だけが中央の下り階段にお進みください。
今日はここまでという方は、あちらの扉が出口となっております。
魔石やアイテムを精算して現金にしたり、特別なアイテムにも交換可能となっておりますので、一度足を運んでみてはいかがでしょうか。
なおこのフロアは滞在時間に限りがございますのでお早めの行動をお願いいたします。
それでは皆様! よき冒険者生活を!」
リボンはペラペラと喋り終わると、最後に可愛く決めのポーズをして、出口の扉に消えていった。
「なんなんだよあいつはッ出口があるなら初めから言え!」
憤慨。文句を撒き散らしながら、かといって出口があることに安心する一行。
足早に指定された扉を抜けると――
「へいらっしゃい! こちらで精算できまっせ。さあさあよってらっしゃい見てらっしゃい!
ダンジョンで役に立つ品々で~~~ございます!
もちろんダンジョン外でも使える物、用意してありますよ!
武器に防具に道具や日常品。プレゼントに化粧品などいかがでしょうか!!
喜ばれること間違いなし! ええーいもってけ―ドロボー!」
ハリセンでペシペシと音を立て客引きをする、はちまきを巻いたピクシー・リボンの店があった。
「くそ虫……ッッいや、かまってる暇はねえ、無視だ無視。出口に走るぞ!」
時間がない。世紀末集団は妖精と目を合わせず素通りしようとした。
ここから出てすぐに救急車を呼ばなくてはならない。間に合うのだろうか。
待っている間に……なんてことも十分ありえる。
外にいる連中に緊急手当ができる奴がいれば助かるのだが。
血塗れた手が滑りそうになる。野郎一人運ぶ難しさ。焦る気持ちが増していく。
「おやお客さん、怪我してるじゃーないですか。うちの商品を使えば治るかもしれませんぜ」
「あ?」
幻聴か? 都合のいい風に聞こえてしまったのだろうか。
妖精の憎たらしい顔を全員が注目した。
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