48 撤退者
「なに熱い目で見つめてんねん! 興奮してまうやろがい!」
リボンは持っているハリセンで近くにいたリーゼントの頭をスパーンとはたき、軽快な音を奏でた。
「――――こんッッッッのッッッ!!! もう許せんぞコイツあああ!」
その速いハリセンさばきに一瞬何をされたのか理解できなかったリーゼント。しかし長い時間をかけセットした自慢のリーゼントヘアーを叩かれたと気付き、感情は沸点を超えた。
リーゼントは持っている武器を振りかぶりリボンを攻撃しようとする。
「あれあれ~? いいのかなー? 私に危害を加えるとお仲間さんが助からないよ~?」
「ぐっ……ぐぎぎぎ! くそがあ!」
至極当然のこと。仲間の命と自分のプライドを天秤にかけ、プライドを優先するやつはこの中にはいない。
自分の愚かさ、未熟な精神、弱い心。振り上げた武器がそれを表していた。だがここで止めることができたリーゼントは一歩成長できたということだろう。振り下ろした先は地面。乾いた音が虚しく鳴った。
「お前が言った治せる商品を早く出せ。もう危険な状況なんだ」
リボンの店にずいっと身体を寄せ圧を掛ける世紀末リーダー。
「謝って。あなた群れのリーダーでしょ。この私にしてきた数々の非礼を心の底からちゃんと謝って」
そんな脅しなど通じないと言わんばかりの態度をとるリボン。逆に上からの圧を返した。
「ッ――すまん。これでいいだろ! 早くしろ!」
「はん。ダメね。そんな言葉じゃ毛の一本もなびかない。もう閉店しちゃおうかしら」
「謝っただろうが! テメーがくだらねえ冗談を言ってる間にこいつが死んじまうぞ。それでいいのか!」
リーダーは背負ったヤンキーを見せつけ訴える。目を閉じ汗を浮かべ苦しみの声をこぼす姿があった。
だが――
「別に? 冒険者がどうなろうと自己責任でしょ? それに私達の仲間を倒しておいて自分達がやられたら助けてくださいって都合良すぎでしょ。どんな思考回路してるんだお前。ちょっと頭かっさばいて脳を見てみたいんだがいいかな? たぶん米粒より小さいと思うんだ」
リボンは冷たく言い放つ。ダンジョンのサポーターである前に一匹のモンスターとしての立場から当たり前の発言だった。ケガをし命を落とす。甘えの無い世界。それがダンジョンであり脳内麻薬がドバドバと吹き出す魅力の一つ。それを望んできたのではないのか。リボンは世紀末集団を不思議な目で見つめた。
「本当に治るんだよな……じゃなきゃ許さねえからな。おいお前ら! 全員で土下座するぞ!」
「「――すみませんでした!! 助けてください!」」
立場の違いを理解したリーダーは自分の愚かさに気づいた。会話をしている相手はモンスターなのだ。
人間の一般常識を求めるのは筋違いというもの。野生の動物を狩猟して傷つき倒れたのなら、抱く感情はおいしそうだ。会話ができるから通じると錯覚してしまった。
こいつは敵だ。改めて認識した。
「ん~……まあいいでしょう。あなた達にこれ以上時間を割いてもつまらないし。じゃあはいこれ。ご所望の回復薬ね。傷口にかけてもいいし飲んでも効果は同じ。しばらくしたらそれなりに傷口は塞がるよ。お値段は20ポイント。つまりさっき倒したオークから出た青の魔石2つ分ね」
「青の魔石? しまった! 急いでいたから拾ってねえ」
「それなら大丈夫っす! 俺が拾っておきました! これっす」
どうやらトサカ頭が拾っておいてくれたようだ。魔石入れから取り出すとリーダーに渡す。
「おお! よしっこれでいいだろ! さっさと寄こせ!」
「まいど~」
リーダーは回復薬をぶんどる形で取るとヤンキーを背中から下ろし、瓶のフタを開け傷口に青色の液体をかけた。
「ぐうぅ……ッ」
「しみるだろうが耐えろ! おい! 本当に治るんだよな!? いいんだよなこれで!?」
「あー、うるさい坊主だねー。ほっとけば治るって言ってるでしょー」
リボンは頬杖を付き、もう片方はハンドスピナーを回しながら答える。やる気の無さがどうどうと現れている態度だ。職場放棄も甚だしい。だが何かを思い出したかのような顔をすると、ハリセンを叩き注目を集めた。
「おっといけねえ。あっしとしたことがもう仕事を終えた気分でいやした。これにはお上もおかんむり。以降まじめにちゃちゃっと終わらせちゃいます。ここでは魔石をポイントに変換してお買い物ができます。黒は1ポイント、青は10ポイント、紫は100ポイント、赤は1000ポイント、金は10000ポイントとなります。商品のラインナップはこちらを御覧ください」
そう言うとカウンターにあった大量のプリントを手に取り各自に手渡した。
そこには回復薬をはじめ、武器や日常雑貨がリストアップされており購買意欲をかきたてた。
「記憶力アップのドリンク? 体型維持薬? 痩せる薬? 視力回復薬に育毛剤って……どれもこれもうさんくせえな」
「パワーレビリングスーツのデザイン変更だぁ? 誰が選ぶんだよこんなもん。お、このどこでも帰還パスポートはすごくいいがたけー」
書かれている内容に目を通し感想を述べる世紀末集団。そそる商品が数多くあるが二言目には「高い」の一言で終わる。そう、ここまでの階層では手に届かない品々ばかりなのだ。厳密に言えば何回も繰り返せば可能だが、もっと下の階に挑戦したほうが早い。実力をつけ挑めということだろう。
「なにか質問はありますかね? 無ければ出口に行くか下の階に行くか決めてほしいんですけど」
早くしてと急かすリボン。ヤンキーをちらりと見ると容態が安定したらしく呼吸が落ち着いていた。
「……今は帰る。だが次は下の階に行ってやる。絶対に10階まで行ってやるからよお。俺たちをなめんなよ」
「あら~。ザコの遠吠えありがとうございます。せいぜいがんばってくださいねー。それでは出口はあちらになります。お帰りくださーい」
無言で指された先に進む一行。敗走の重い二文字が態度に見て取れる。
突き当りには横穴が空いており一人ずつ入れと書いてあった。
奥は暗く見えない。怪しさでいっぱいだがここで嘘はないだろう。
意を決し一人、また一人と入っていく。
滑り台のようにスッと動いたかと思うと1階から落ちたときの逆バージョンだった。
触手に掴まれ、一瞬にして気づいたら洋服店にある試着室みたいなところに吐き出されていた。
「なっ……全裸かよ。スーツがどっかいっちまった。ブレスレットは――外せねえ。ちくしょう。なんなんだよこれ。ん? おお、俺の服じゃねえか」
試着室にはかごがありそこには身ぐるみを剥がされた服と財布が入っていた。
世紀末リーダーはいそいそと着替える。
「はぁまったく……あ? タバコがなくなってんじゃねえか! てか俺のバイクはどこいったんだよ! 返せよくそがあ!!」
ダンジョン。そこには持ち込むことはできない。己の肉体が唯一の武器だ。と後に知れ渡った。
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