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半現実と半異空間を同時に過ごす時間が終わり頃

 今の放出を浴びた結子の胸の液体は、増量に耐えきれず右胸の裾野からも流れて、プールのぬるま湯に滴り落ちた。

 これによって、結子の左側に多かった3cmくらいの白いオタマジャクシのような生き物が、右側からの量が増えて、結子の濡れた素肌を突き始めた。


 ふと結子が、全身を沈めてみようかなと思い立った。


 どこかに湯が注がれる蛇口があるなら湯量を増やしてみよう、と思って見回そうとしたが、身体も首も動かず、顔を上げることもできなかった。

 だからといって苦しい、という感覚は一切ない。

 押さえつけられている感覚もまったくない。

 全裸で仰向けで大の字になって、半身よりちょっと深めに、浮くか浮かないかの絶妙な感覚でぬるま湯に浸かっている、というゆったりとした感覚がある。


 ただ水音は、結子が浸かるプールに絶え間無く掛け流し的に注がれ、見えないので確認できないプールの縁から溢れ出している感覚はある。

 結子の全身に群がる白いオタマジャクシのような生き物も、溢れ出す流れには乗らないように結子から離れないようにしているようにも思える。


 そういえば俯瞰の夢遊映像の時に、動きの止まった白いおたまじゃくしが、プールの端に流れて消えていくのを何度か見た。



 現実世界の感覚もちゃんと結子には残っている。

 斜め向かいに座って寝ていた女子高生が、カバンを持ち直して起きる気配がした。

 同時に電車は減速を始めた。


 この時間の大学からの帰りに、結子が利用している電車は、結子が住む最寄り駅までの間に一駅しか停車しない特急が便利なので、この時間に帰ることがあったらこの電車にしようと決めていた。


 その一駅に着いて停車すると、女子高生は立ち上がり電車を降りて行った。

 結子が見ている車窓の外のホームを、さっきの女子高生が通過して改札口に歩いて行くのを見送った。


 走り始めた電車の車窓から街明かりが一気に減った。



「この駅を出たらあと20分くらいやな。」


 そんなことを思っていた結子の脳内に、結子と同じくらいの男性がマンションと思しき一室で、結子の画像をパソコンで見ながらしている夢遊映像が始まった。

 薄いカーテン越しの窓から見える街明かりの感じからしても、結構高い階にある部屋だと伺える。


 パソコンに画面に映っているのは、結子が以前出演していたインターネット生配信番組の映像だ。

 そういえば過去に、身体のラインが出るドレスを着て出演したこともあった。

 川下りや水鉄砲サバイバルゲームの体験取材で着ていたTシャツがびしょびしょになったこともあった。

 それをこの男性は見ているらしい。


 しかし、この男性のノートパソコンの隣にも、結子の受講者用資料が、結子の顔写真入りの講師紹介ページで開かれている。


「大学の関係者?」


 結子は、男性の顔を確認しようと意識を寄せたが、今回だけは動かない。

 斜め後ろの上からの映像から寄りもしない。

 ロックがかかったように画角も変わらない。


「誰?」


 男性のノートパソコンの画面では、結子が水鉄砲サバイバルゲームでずぶ濡れになった笑顔で

「楽しかったぁ!」と感想を述べている。


 そのあと引きの画で、下に着ていた水着のラインを浮かび上がらせた、ずぶ濡れのTシャツで笑っている結子の画像で終わる。

 そこで、男性は動画を止めて手の動きを早めた。


「結子、結子、ああぁ、結子ぉ〜!」


 迸りが椅子の上から床の絨毯に飛んだ。

 声を聞いても誰かわからない。


 こんな芸能人でもタレントでもない、ただの主婦素人をおかずにする男の人もいるんだな。

 前の3人ほどではないにせよ、同じ世代の男性にしては量が多いな、とも思った。


 結子の脳内映像が、薄暗い広いプールで全裸で仰向けになってぬるま湯に浮いている結子の俯瞰映像に切り替わった。


「もう一度声を聞いたら、誰か思い出すかな。」そう思っているところに


「結子、結子、ああぁ、結子ぉ〜!」という、さっきの男性の声が響いた。

 ただ、その男の粘液は降り注がれなかった。


 やっぱり誰かわからんなぁ、と思った。


 ぬるま湯に身を沈めてみようと意識したら、ゆるゆるゆるっと身体が沈んでいく。

 沈んでいくというか、背中に当たるプールの底の感覚はそのままに、周りのぬるま湯の水位が上がった感じが近い。


 やがて仰向け大の字のまま、結子はぬるま湯の中に沈んだ。

 結子から見えるのは、淡いカラフルな色の照明で彩られた、穏やかに揺れる水面越しに、白い天井である。

 ぬるま湯の肌感覚はまさにリアルで、全身拭くタオルの心配をしたくなるほど。

 車窓に映る服を着ている自分を見ているから、これは体験型タイプの脳内拡張現実なのだろう、と納得している。


 耳に聞こえてくる音の響き方や肌感覚は、まさに水の中なのに違和感なく呼吸ができている。

 けれどそれを全く不思議と思わない。


 俯瞰の映像に切り替わった。


 水面から5cmほど沈んだ大の字の結子の輪郭を覆うように、白いおたまじゃくしのような生き物が繊毛を振り続けて、結子の身体の中心部を目指して集まってきている。

 その状況でも、VIOと言われるエリアの結子のIラインとOライン、目や鼻や口、耳という部分には、意識して避けるように全く来ない。

 俯瞰の映像でもその状況がはっきりとわかる。


 眠たくはない。

 むしろ、心地いい疲労感の取れ方で、明日に回そうと思っていた本業の事務処理を、お風呂の後にでもやろうかな、という気にさえなっている。

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