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鬼畜外道の横恋慕

「ごめんなさいね、水戸先生。

 私たちの中でも義果は、犠牲になった同僚と小中高の同級生で、特に仲が良かったの。

だから彼女のことになるとつい、怒りの力が入ってしまって。」


「いえ、全然。

 それは当然でしょう。

 同い年の同僚、しかも仲のいいお友達を、理不尽に傷つけられてお辛い思いをお察しするといたたまれません。

 横川先生のお怒りはごもっともですわ。」


 目を真っ赤にして今にも涙が溢れそうな目で、結子に向き直った横川は

「ありがとう、水戸先生。

 あの時、私が一緒にいたら防げたかもしれない、って思うと今も悔しくて。

 その後も彼女がそこまで執拗に呼び出されてたなんて知らなくて、それも悔しいの。」

 横川が天井を見上げて葉を食いしばる。


 結子は、横川の顔を見つめて


「残酷な言い方ですみませんが、手口を聞く限り、横川先生がご一緒してたとしても、むしろ横川先生も犠牲になっていた可能性の方が高いんじゃないでしょうか。

 ご同僚の先生はお気の毒で、横川先生と同い年ということは私も同い年です。

 同じ年齢の女性としても絶対に許せない。」と言った。


 結子の言葉に3人が頷いたのを見て、結子が続けた。


「それにしても、横川先生や私と同い年の方に、なぜそこまで?」


「そこが問題でね。

 親子ほどの年齢差の相手でしょ?

 男生徒からすれば、自分の母親みたいな年齢じゃないですか。」


「鬼畜一族の血筋の所業なので、一般常識で図るのは無理として。

 それを差し引いて、年上の女性に興味を持つ子もいる、とはいいますけど…それにしても。」

 と疑問を口にした結子に対して、リーダー格の丸山が答えた。


「この事件で犠牲になった私たちの同僚の心身を蹂躙し続けていたのは、生徒の親父の方なの。」


「はあ?」

 この店に来て何度目の「はあ?」だろう。


 横川が努めて冷静に語り出す。

「犠牲になった私たちの同僚は、私と同じ県北山間の小さな町で育ったの。

 彼女が注目されたのは、当時流行ってた『ミスなんとか』っていう町主催の女性のコンテスト。

『出ればハワイ旅行よ。優勝間違いないんだから。』って親戚の人が勝手に応募してて、彼女も人がいいから呆れながらも出場したの。

 もちろん彼女が優勝したんだけど、そのあと彼女が掲載された町の広報誌での写真が全国的に話題になってしまったのね。」


「あ!希望の奇跡!

 山間の町で見つけた奇跡の美女。」と、思い出した記憶のままに結子が言った。


「そう!それが彼女だったの。よく覚えていらっしゃいましたね。」横川が感心していう。


「あのあと、自治体ミスコンのちょっとしたブームになったじゃないですか。

 私でも親戚に担ぎ出されて『観光親善小町』になれたんですよ。

 希望の奇跡のおかげで自治体が浮き足立ってる隙をついたようなもので。

 それで覚えてました。」


「いえいえ、水戸先生も知らなければ、3人のお子さんのママさんだなんてとても見えない。一昨年でしたか、全国ミセスのコンテストで上位に入られたのも拝見しましたよ。」伊勢崎が場を和らげるテンポと口調で会話に入った。


「ありがとうございます。あれはまぁ運が良かっただけで。

 でも、希望の奇跡の方ともう一人一緒に写ってた方も話題になりましたよね?

 奇跡は二人って。」と横川に問いかけながら顔を見ると思い出した。


「あの時の奇跡のもう一人って、横川先生だったんですか!」


「まあ、私は彼女の添え物みたいなもので、写真の写り具合が奇跡だったというか。

 まあ、それでも全国からたくさんの人が来てくれて、彼女から

『二人で町の賑わい創出に、一役買えたかもって嬉しいね』って言ってもらえて、二人で喜べたのが嬉かったです。

 一方でよく東京の代理店の声がけで、全国的な自治体イベントに二人で出かけさせてもらったんですけど、その時仕切ってた代理店の現場にいたのが、主犯格学生の父親だったんです。

 しつこく彼女に言い寄ってました。

 彼女が手厳しく拒絶した後は、陰湿で執拗な嫌がらせになりました。その都度私がブロックしてたんで、当時は問題なかったんですけど。

 何年か後に代理店をやめた父親が隣県の会社に就職してたらしく、息子が入学したこの大学の入学式で、同僚を見つけてしまったらしいんです。」と言って、横川はテーブルに目を落とした。


 丸山が整理する。

「つまり、首謀者の男生徒が、仲間と行った睡眠薬を混ぜたお酒で、女性講師と女生徒二人を眠らせて起こした集団猥褻行為は、あくまで女性講師に首謀者男生徒の父親が行為に及ぶための犯行だったってことなの。

 仲間の男生徒もみんな帰った後に、父親が部屋に入ってきたんですって。」


 丸山に伊勢崎が続く。

「女生徒たちより早く目を覚ませた同僚も、眠らされたまま5人の男生徒に弄ばれている女生徒と同様に、自分も全裸にされていたことに言葉を失った。

 自分にはまだ行為が及んでいなかったこともとっさに確認できたけど、それよりも目の前の女生徒二人の無惨な姿に我を忘れて、叫びながら止めに入った。

 だけど全裸の女一人の抵抗なんて、5人の男たちの前では全く無駄だったって。

 女生徒と交接中の2人以外の3人から、はがいじめにされて晒されて、写真と動画を撮られたそう。それでも彼女は女生徒たちを助けようとした。

 彼女の叫ぶように名前を呼びかける声に、二人はやっと目を覚ました。


 けれど自分たちに起きている惨状を目の当たりにして、まだ動きもおぼつかない身体を動かして抵抗して、絶望の声を上げて否定し続けるしかなかったのよ。


 脅されて無理やり笑顔を作らされて写真を撮られた女生徒二人は解放されたけど。」


 結子もなんとなく想像していたが、どいつもこいつも想像以上の鬼畜外道すぎて、絶望的な状況に言葉が出ない。

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