マスコミは、被害者に騒いで、加害者に沈黙する
「隣県から選出の親族国会議員って、水戸先生の地元議員って、ご存知でした?」
「知ってました。
だから私、市議経験なしで飛び越えて、手下が巣食う県議に追求のために、県議選に出ようと思ったくらいなんですから。」
「そうなんですか ⁈
地元の権力者なので、水戸先生もお仕事や生活の関係で、私たちのようには感情を動かせにくいかなと思ってました。」
「関係ありませんよ。
都市部の大学事件の時に、地元地域選出の国会議員の息子が首謀者、と聞かされた時も地元マスコミの沈黙が許せなかったし。
今お聞きしたら、まさかその孫もって、どこまで腐った一族なんでしょう。
被害者の女生徒の気持ちの痛みを考えると胸が痛いです。」
「それが私たちの大学の事件は、女生徒だけじゃなかったの。」
「え?どういうことですか?」
「主犯格の男生徒以外の男生徒たちは、女生徒二人だけを弄んだんだけど、主犯格の男生徒はその後もずっともう一人の女性だけに固執していたの。」
「学生同士だけじゃなかったんですか。」
「一人は私たちの同僚だったの。」
女性助教授たち3人が、グラスを置いて押し黙った。
横川義果にいたっては明らかに震えていた。
「証拠不十分で不起訴。そんなの納得できないけれど、彼らのスマホを押収すれば証拠なんていくらでもあるのに、脅されて無理やり作らされた笑顔で撮られた写真で同意の上とか言われて。」
「お金も積まれたみたいね。」
「それでご本人たちも黙ってしまわれたんですか?」
「動画や写真を公表される、と言われてはね。」
「マスコミを使って、被害者の行動を取材させたのよ。
『カウンセリングの効果はどうですか?』とか『相手への言葉はないですか?』とか『妊娠してなくてよかったですね。』って、セカンドレイプよ。」
「そんな…ひどい。」
「でしょう?
で、被害者側が被害届を出せないことをいいことに、不起訴だから不問。挙句合意の出来事にされて、男生徒はそのまま何事もなかったかのように全員卒業。
女生徒は、結局泣き寝入り。二人とも大学を辞めていった。」
「なんですか、そんな理不尽。」
「そうなのよ。ほんと悔しい。」
「同僚の方は?」
「国会議員の孫に、その後も何度も秘密裏に呼び出されて監禁状態で。
家族もいるし、言うに言えないほど精神的に痛めつけられてたの。」
「はあ?」
「当然だけど、孫の棲家は寮とかアパートじゃないのよね。」
「私たちの生活レベルじゃ、まず選択肢から外れる高級マンションの最上階よ。セキュリティが厳重だから、一度入ってしまうと外からは何もわからない。」
「ところが、その部屋には父親、つまり議員の息子が出入りしていたのよ。」
「はぁ?息子ってことは…
都市の事件の時の主犯格のヤツがってことですか?」
「そう。
そいつがマンションに出入りしてるのを、ネット情報に何度か上がってきてるにもかかわらずよ。」
横川が、怒りに震える声で言った。
丸山、伊勢崎が常勤助教授で、横川は結子と同じ非常勤講師である。
横川にとっては、小中高校の同級生で幼馴染というだけでなく、非常勤講師としても同じ立場で苦楽を分かち合え、講義内容の研鑽にも切磋琢磨しあえていた友人で同僚だったという。




