↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
34/36

女子大生の母

「ハハハ。なるよね。

 そうなりますよね、結子先生でも。」


「ごめん。いや、あまりにも唐突すぎて…。」


「ですよね。

 わかりますから大丈夫です。

 でも、そうなんです。


 私は、家庭の事情で両親と一緒に母方の祖父母の実家のある地域に引っ越した。

 そこはたまたまですけど、豊功《とよのり》のお父さんの地元の方に引っ越した、って話させてもらったじゃないですか。

 あの家庭の事情は、私が中学の頃まで母がこの大学に勤めていて、この大学に当時通ってた国会議員の孫が主導する暴行事件に巻き込まれたことなんです。

 巻き込まれた、というよりその議員の孫の親、つまり議員の息子が、私の母と関係を持つために仕組んだことだったんですけどね。」


「え?え?サラッと言ってるけど、それって、え?

 由依ちゃんのお母様って、まさか…え?」

 結子は理解が追いつかない頭を懸命に動かして辿り、探り当てる。


「よ、横川義果《よこかわよしか》先生のお友達?

 まさか『希望の奇跡』、え…っと『山間の町で見つけた奇跡』の美女。」


「母です。」


「ええぇ?!」

 その後、結子の口からは、息が漏れるだけでしばらく言葉が出てこなかった。


「じゃあ、由依ちゃんと横川先生は、顔見知りってこと?」


「横川先生のことは知っています。

 私が子供の頃、よくうちにも来てくださってましたし、先生のお宅にも遊びに行かせてもらって、可愛がっていただいたし。

 先生の結婚式にも呼んでいただいたんですよ。

 バージンロードで先生とご主人の指輪が入った箱を持って、先生たちの前を歩きました。

 ただ私、小学生に上がると、水泳に夢中になって、家にいないことが多かったものだから、小2頃くらいからは、まともにお会いできてないんですよね。

 だから、大学でお会いしても先生にはわかんないみたいです。

 バレてないっていうのが正しいかな。

 私もなるべく先生には、私だと気付かれないように気をつけてるし、できる限りお会いしないように避けてるし。

 苗字を、今も実家で同居している父方祖父母の祖母の旧姓にしているのは、そのためでもあるんです。」


「え?父方の祖母の旧姓?なんで?」


「私がこの大学に進むことへの母の懸念でした。

 解決したとはとても言えないあの事件を、自分の名前で呼び起こすことになるのは娘によくないし、在学されてる横川先生にもご迷惑をかけることになる、と。


 そこで大学の合格が決まった後早々に、この大学での母の事件のことを話して相談したら、祖母の旧姓を名乗るのはどうだろうと提案してくれたんで、それで。

 だから、横川先生もお気付きではないはずです。

 できるだけ余計なご心配をおかけしないように、気づかれたくありませんし。」


「でも横川先生、随分心配されてたわ。

 由依ちゃんのお母様に悪いことをした。

 あの時自分も一緒にいれば、あんなことにはならなかったんじゃないかって、未だに悔やまれていらしたわよ。」


「横川先生は、な〜んにも悪くない。

 むしろ母は、ずっと今も感謝しています。

 あの時もし、横川先生もご一緒だったとしても、悲惨な被害者がもう一人増えることになっただけだっただろう、と母は言ってます。

 それほど用意周到に練られて計画された、巧妙卑劣な罠だったんです。」


「そう、だったの…。」


「はい。

 事件が発生してからずっと、横川先生は母に寄り添ってくださってました。

 おかげで随分救われました。

 でも、あまり母といると横川先生にも被害が及ばないとも限らないので。


 犯人は執拗なまでに母に執着していましたが、なにしろ『山間の奇跡』で話題になったのは、最初こそ母だっただけで、後々は横川先生の人気の方がすごかったそうですから。

 それなのにいつも母を支えてくれて、かばってくれて、守ってくださった恩人だと、母は今でも言っています。

 それだけにあの事件の後、横川先生のご迷惑にならないうちにと、父と母が引っ越すことを決めて早々に街を去ったんです。」


「私も横川先生や、丸山先生と伊勢崎先生からお母様のお話を聞いた時に、怒りに震えたわよ。絶対許せないことだから厳罰に処したい!って。

 だけど今、ちょっと言葉がないんで申し訳ない。」


「いえいえ。

 豊功《とよのり》も協力してくれるし、あのマンションが怪しいって突きとめてくれたのも、豊功《とよのり》なんですよ。」


「と、いうことは今更だけど、あのマンションって実在してるの?」


「はい。私たちの大学がある市内に存在します。


『dungeon』の中で私が撮った写真で、豊功《とよのり》が突き止めてくれました。

 あのマンション周辺から出て散策できないんですよね、あのモードって。

 だから2回目から使えるようになった、写真機能使って撮った写真で。」


「ああ、あの薄い暗がりのゾーンから出ようとすると、見えない壁みたいなのがあって出られないよね。」


「そうなんです。

 出られないんですよね。

 だから写真が撮れる範囲も決まってる。

 その中で撮れた道路や周辺の看板とかと、もともと豊功《とよのり》が、過去のネット記事で割り出してた場所と照合して、実際に行ってみたらあったんです。


 豊功《とよのり》は、私と同じポケットWi-Fiを持ってくれて、スマホの機種まで一緒にしてくれたんですけど、残念ながら私のようにポケットWiFiの画面にも『Healing』と『dungeon』の文字が出ることもなく、鬼の面のアイコンと『BDFD』と言うタイトルのアプリが、スマホに追加されることもありませんでした。」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。