長女の友達
「ありがとう。」
自宅のカーポートに着いた旦那の車の助手席から降りた結子は、車のドアを閉めながら礼を言った。
「どういたしまして。」
笑顔で応える旦那の答えに、結子も自然と笑顔を向ける。
私は幸せだ。
一足先に玄関の鍵を開けて自宅に入る。
旦那が追いついて入ってくるのを待ってから、玄関のドアに鍵をかけた。
長女の靴の隣に同じくらいのサイズの靴が並んでいる。
2階の長女の部屋から楽しそうな笑い声が聞こえて来た。
「にぎやかでいいな。」
旦那が結子に振り向いて笑顔を見せた。
階段を上がってすぐの長女の部屋のドアが勢いよく開いて、長女が顔を出した。
「おかえり。」
「ただいま。」
長女の後ろから長女の同級生が顔を出す。
「すみません、お邪魔してます。」
「あら、香恵ちゃん。いらっしゃい。」
長女の大学の同級生で、結子の通う大学がある県が地元だが、通うには遠い地域なので大学の近くに、下宿して一人暮らしをしている準ミスキャンパスである。
入学当時から苗字の頭文字が同じ「あいうえお」順の「ま」と「み」で何かと前後の並びになることが多く、長女とは気が合うようで、前後の座りになった入学すぐのオリエンテーションで、1泊2日を共に過ごした時間で、完全な仲良しになったらしい。
授業の合間は、香恵の下宿に長女がお邪魔させてもらって過ごしているようで、授業の終わりが早かったりすると、こうして我が家に長女が連れてくる仲になっている。
リビングに結子が入ると
「おかえり」と、テレビを見ていた次女が振り向いて声をかけてくれた。
「ただいま。」
「今日、お兄ちゃん、部活休みみたい。」
「そうなん?」
「うん。さっき帰って来てて、お母さんらが帰ってくるまでには帰るって、買い物に行ったから、もうすぐ帰ってくると思う。」
「あ、そうなん。じゃあ、どうしようかな。
ちょっと整理したいことがあったんだけど、先にちゃっちゃと晩ご飯の支度してからにするか。」と、結子がつぶやくと
「香恵ちゃん来てくれてるなら、回転寿司で寿司でも買ってくるよ。」
「あ〜!お寿司、賛成!私も行く!!」
「よし、スマホで予約して取りに行こう。」
「うん、行こう行こう。」
旦那と次女が盛り上がっているところに、長女が2階から降りて来たので、結子が声をかけた。
「お父さんが、回転寿司のお寿司買いに行ってくれるそうだから、晩ご飯、香恵ちゃんも一緒に食べられるかどうか聞いてくれる?」
結子が長女に尋ねると
「オッケー、大丈夫だと思うけど、苦手なものがないかだけ聞いてみるから、スマホの注文ちょっとだけ待ってくれる?
あ、トイレ行ってから聞くから、もうちょっとかかるけど。」
「それくらいは全然、待つさ。」
旦那が笑いながら答えた。
長女がトイレに入ったと同時に、玄関の鍵を開ける音がして、長男がリビングに入って来た。
「ただいま。あ、お母さん、おかえり。」
「ただいま。今日部活ないんだって?」
「うん、先生たちの会議で休み。
一旦家に帰って行くパターンかと思ったんだけど、道場の先生も今日は出張でいないから、完全な休みになった。」
長男は小学生の頃からやっていた剣道を高校までと決めてやってきていた。
「あら、お休みなん久しぶりだね。
そうそう、お父さんがお寿司買いに行ってくれるんだって。」
「マジでぇ!ヤッタぁ、俺も行く。」
「いや、注文したものを取りに行くだけだぞ。
お前は好き嫌いないし、食える量だけの注文だろ。」
苦笑いする旦那に、長男が頭を掻きながら
「まあな。
でもお父さんの車で出かけられるのは嬉しいんだよ、な。」と次女に声をかける。
「うん。」
次女が嬉しそうに長男に返事する。
長女がトイレから出て来て
「あ、おかえり。」と、長男に声をかける。
「ただいま。」
長男が返す。
「香恵がいる間に帰って来てくれてよかったよ。
男前に会いたいってずっとうちの準ミスキャンパスが言ってたからなぁ。
あんたが、ちょうど出て行くタイミングで私らが帰ってきたから、後ろ姿見ながら香恵が言ったんだよね。
部活、行くんでしょ?」
「いや、今日は休み。
お父さんとお寿司買いに行ってくる。」
「おお、それは準ミスに朗報じゃ!
あ、苦手を聞いてこなきゃ。」
「どうすりゃいいんだよ、おれ。」という表情を浮かべている長男を残して
「香恵ぇ〜!晩ご飯一緒に食べても大丈夫ぅ?」と、声をかけながら二階に上がって行った。
なんと和やかな平和な時間。
結子にとっては、かけがえのない自慢の家族の時間だ。




