同期化下着
カチャリ。
結子が鍵を開けると、それまでドアノブを力任せにガチャガチャ回していた音が止んで、ドアノブが回りドアをゆっくり開けて、顔色を変えた男性が飛び込んできた。
冷静ならば、今鍵を開けた女性がそこにいるはずなのに、その女性がいないことをもっと怪しむのだろうが、裸にガウンを纏っただけの姿で締め出された恥辱と屈辱感が、男性の冷静さを失わせていた。
それでも開けたところに女性がいないことに、一瞬「え?」と言う表情を浮かべたが、怒りの方が勝ったようで、結子をすり抜けて
「ふざけんなよ!この女ぁ!」と廊下を走って、リビングに駆け込んだ。
「どこ行きやがった?おい!」
リビングから、身を隠せやすそうなキッチンから奥の寝室に向かって足音が遠ざかり、奥のクローゼットの扉を片っ端から開けているようだ。
女性はその隙に、玄関すぐ横の部屋からそっと出て、玄関の扉をできるだけ慎重に開けて、素早く外に出て、音を立てないように扉を閉めた。
結子は、内側からロックして、チェーンロックもかけてやった。
男性は、徐々に落ち着いてきた。
限られた空間だ。
しかも、探し出す相手は、自分好みの乳をさらけ出させて、自分が発情に導いたばかりの股間を潤ませた全裸の女性。
探し出すのは時間の問題、と言わんばかりに余裕の表情を浮かべた男性は、かくれんぼの鬼を楽しむように、女性の名前を呼びながら部屋を探し始めた。
結子は、玄関ドアをすり抜けて出ると、女性の姿はなかった。
再び玄関に来た男性は、玄関ドアにチェーンロックがかかっていて、内鍵が閉まっているのを見て、外には逃げてはいないという確信を持って、再び部屋の中を探しに向かった。
結子が誰もいないエレベーター前に立つと、すでにボタンが押されていた。
15階まで上がってきていたエレベーターがすぐに上がってきた。
近くの物陰に隠れていたのだろう。
逃げ出した女性がエレベーターに乗ってきて、閉のボタンを連打して扉を閉めた。
ノーブラの胸元が気になるのか、カバンを胸に抱えて、交互に片手で落ち着きなく乱れた髪を手で整えていた。鞄に回収したブラジャーの肩紐が、鞄の外にほんの少しはみだしていたのを見つけて、慌てて奥に押し込んだ。
物理的にも視覚的にも降りていっているエレベーターだが、結子の感覚は少しずつ明るい地上に向かっている感覚だった。
マンションの1階に着く頃には女性も落ち着いてきた様子で、1階に着いてエレベーターの扉が開くと、少し小走りでマンションの玄関に向かって行った。
その姿を見た結子も少し安心して、ゾーンが示すルートでマンションの外に出た。
驚いたことに、そこに由依が立っていた。
「先生、やっぱり中に入ってたんだ。」
少し心配そうな顔をして声をかけてきた。
「うん。あの人と一緒にいたの。」
ちょうど玄関を出てきた女性が、結子と由依の間をすり抜けていった。
「一緒に?」
「ああ、一緒にいたっていうのは正確じゃないな。
マンションの部屋に入っているところを見てた、と言うのが正確かな。
私が行ったと言うより、そこしかいけないゾーンみたいな感じで行った先にあの人と男の人が一緒にいた、ってことなんだけど。」
「そうですよね。相手には見えないし、こっちの声も聞こえないし。
17階ですか?」
「うん、17階。
あ、もう電車が駅に着いちゃうから、またゆっくり話させてもらえない?」
「そうですよね。
先生まだ電車の中ですよね。
じゃあまた、大学で。」
「うん。また大学で。」
そう言って、結子はスマートフォンの画面で、鬼の面が表示されているアプリケーション『BDFD』の『閉じる』をタップして『dungeon』から退出した。
結子が電車に戻ると、結子の住む町の象徴みたいな川を渡る鉄橋を、電車は走っていた。
そして、これも車窓から見えていた町の象徴的な存在のお椀を伏せたような山が、建物に見えにくくなったと同時に、電車が徐々に速度を下げて停車態勢にはいってきた。
電車を降りて、改札を抜けて駅の南口に出ると、思いがけないことに旦那が迎えにきてくれていて、笑顔で待っていた。
「おかえり。」
「ただいま。この時間が、よくわかったね。」
結子も笑顔になれて返す。
「だいたいの時間は知ってたからね。」
「ありがとう。」
迎えにきてくれた旦那の車に乗って自宅に戻る。
「明日休みだっけ?」
結子の質問に
「出張明けの代休や。結子は?」
「私も明日は休み。」
「そうか。」
なんでもない会話が幸せを感じる。
さっきの同い年くらい女性が同じ下着を着けていたことを、今再び思い出して、胸元がぞわぞわっとした。
渡した脱ぎたてのブラジャーの匂いを嗅がれ、むき出しにさせられた乳房を揉まれて、命令されたとはいえ自ら乳首を男性の口に含ませた。
そして男性に広げられて濡れた秘部を弄られていた。




