自分の経験にはないけれど
深く腰かけ直した男性が女性の胸に顔を埋めたまま、女性の背中に手を回して誘導するように、自分の身体を跨ぐように促した。
女性が男性の首に両手を回したまま、男性の両脚を跨ごうとする女性の股間が、結子の位置から一瞬見えた。
同じデザインの同じ色の下着を身につけている結子だから、女性の股間を覆うショーツの変化に気づいた。
濡れてる。
バージンで出会った旦那に処女を捧げて、3人の子供を授かって現在に至る。
受け入れた男性との性交渉経験が、旦那しかない結子の感覚からすると理解できなかった。
中学の頃から、身体が硬いので体操系の運動は苦手だったことを除けば、身体を動かすのは嫌いではなかったから、球技も水泳もそつなくこなせた。
外に出て走り回るより、家で漫画を読んだりやアニメを見たりする方が好きだったので、陰キャラと思っていた男子もいた。
スポーツ観戦が好きで、特に野球はプロアマ問わず、球場には足を運んだ。
高校時代は、6割強の割合で女子が多い商業高校に進学し、過去に全国大会にも出場したことのある野球部の試合も応援に行った。
少しきつめ印象の美人系の顔立ちで、話しかけられれば社交的に対応する明るい性格だったので、野球部の部員や同じクラスのみならず他のクラスの男子から交際を申し込まれたことも何度かあった。
しかしその頃は、女友達とカラオケに行ったり、感動すると声を上げることはないけれど、友達も引くほどとめどなく涙を流して号泣するので、それが恥ずかしくて一人だけで映画を見に行ったり、家で漫画を読んだりアニメを見る時間の方が大事な女子高生だった。
進学で県外に出て、短大時代に告白を受けた男性のうち、2人の男性と付き合った。
好きになった相手だったのでファーストキスは、旦那ではない。
別れた1人目のあと、半年ほどして卒業間近な時期に、野球が趣味で意気投合した2人目の男性と付き合った。
価値観も似ていた3つ上の彼に、初めて裸の胸を晒して触られることにも、揉まれることにも、乳首をしゃぶられることにも嫌悪感より恥ずかしさと嬉しさの方が上回った。
相手の男性が自分を求めてくれてそれに応えられることが嬉しかった。
好きになった男性だったから。
それでもショーツにシミを作るほどに濡れることはなかった。
遠距離恋愛が自然消滅した後に出会った、今の旦那と結婚して初めての夜、旦那の舌と指でじっくり愛撫された時、男性相手に初めて溢れ出す感覚で濡れた。
それ以降、旦那との行為ではキスの段階でも濡れることはあるが、他の男性に対してその感覚は全くわかない。
社会人になってからも、結婚してからも、近づいてくる男性や、明らかに目的にしている言い寄られ方もしたことがあるが、上手くかわすことはできても、恋愛感情もない男性に、性的感覚に身体が動くことはなかった。
ましてや濡れるなど想像にもない。
それはお酒が入っていても同じだった。
胸を揉まれて乳首を吸われたことで濡れる。
結子には旦那以外では起こり得ない感覚だった。
だから、この女性は相手の男性に否定的ではあるが、それは女性に残っている恥じらいと、この男性を身体に受け入れることで得るものが優っていることと、理性とのせめぎ合いの中で、身体が受け入れに動いているということだろう。
経験を持ち合わせていない結子には、そういう理解の仕方しかできないが、無理やりながら分からなくもないと思い込むことはできた。
愛し合ってはいないが、女性も同意はしている
部屋を出よう。
そろそろ電車が大きな右カーブのレールに乗って、自宅のある最寄り駅まで残りの一駅を通過する頃だ。
薄暗い影の中では、扉も開けなくても、人にも椅子や机にもぶつかることなくすり抜けられる。
ただし、そのエリア以外には見えない壁があるように出ることができない。
男性にまたがった女性のショーツに、男性が後ろから手を差し込んだ。
ずり下げられたショーツを手の甲にかけたまま、白く丸いおしりの肉丘の合間に、男性の右手が差し込まれていて、人差し指と薬指が左右に押し広げていた。
女性の尻肉の谷間にピンクがかった茶色のすぼまりが見え、その奥に見え隠れするぬかるむ割れ目に、男性の中指が侵入しているのが見えた。
「おおっ。」
女性の胸に顔を埋めていた男性が声を上げる。
クチュリという、大きくはないが男女2人の息遣いよりもはっきりと、淫猥な音が結子にも聞こえた。
結子にも聞き覚えのある、性的興奮状態になった時に、自分の分泌液で濡れそぼった女性器が発する音だ。




