IOに来ない理由
「全身あのぬるま湯につかったことある?
VIOってあるじゃない?あと目と鼻と口と耳には、あのおたまじゃくしたちは入ってこない、ってくらい来なくてよかったんだけど、あの安心感は信用できるの?」
「ああ、先生もやっぱり沈んでみたんだ。
口に水が入ってくることもなく呼吸できるんですよね。
私も今まで先生が言うところに、あのおたまじゃくしが入ってきたことはなかったです。
記憶の人たちの記憶で、高校3年生の初体験を持ってる女優さんの方は、お相手の方と両思いになられた日に、彼女を思い浮かべて彼氏が自分でした日に、VIOのIOのギリギリまできたけど中には入らなかった。
事務所の社長に騙されていた女優さんは、一緒に戦ってくれた男性に心許した日からIOのギリギリまでくるけど中には入らなかったと言う状態でした。
私も、豊功が私で抜いてくれる時だけは、IOのギリギリまでくる。
それ以外の人のが先に出てる時でも、それまで避けられているくらい来ないのに、豊功のが出ると、IOのギリギリまでくるんですよ。
なので思い合っている相手の人のは、IOのギリギリまでくるのかなって思ってます。
だから、結子先生のご主人が結子先生のことを思って抜いてくれた時には、IOのギリギリまでくると思いますよ。
私はまだ結ばれてないからわかりませんし、記憶のあるお二人の記憶では結ばれたあとの『Healing』の記憶が私にはないんで、『Healing』の時のどうなってるかわかんないんですよね。
女子大生デビューされた女優さんは、初体験のお相手とデビューと同時にお別れしてます。だけど、アダルトビデオで活動中に何度も元カレさんの『Healing』がありました。
結局4年足らずで業界を引退した彼女は、その元カレさんと結婚したんです。
だから、元カレさんの『Healing』では彼女のIOのギリギリまできてました。
ずっとお互いのことを思い合っていたんですね。
そのあとスパン!とその人の記憶は切れていて私にはありません。
もう一人の女優さんと同じく、過去を切り断つ決心をされて、彼氏の方と新たな人生を歩み始める区切りをつけられたんで、前世の記憶扱いで私の中に入ってきたんでしょうね。」
「じゃあ、お互いのことを思い合っている相手のだとギリギリまでくる。ひょっとしたら中に入ってくる可能性があるってことか。」
独り言のように結子が呟いた。
「そもそも思い合ってる好きな相手と一緒にいて、お互いの気持ちが一緒なら、男の人もご自分ですることもないでしょ、たぶん。
先生のご主人がご自分でされてると思います?」
「そんなこと考えたこともなかったわ。」
「それが普通ですよ。」
「そうかな。でもそう聞くと、出張中の旦那が私のことを思って自分でしてくれたら私の『Healing』に旦那が出てきてくれるってことね。
なんか、出てきてくれたら嬉しいって思ってしまうわ。逆に言えば
『なんで出てきてくれないのよ』って、文句を言いそうになるこの気持ちはなんなんだろう。ハハハ。」
結子の笑い声に和まされて、由依も一緒にくすくす笑って笑顔になった。
そこに、結子の控え室のドアをノックする音が響いた。
「はい。」と、返事して結子が立ち上がり、ドアを開くと丸山桃花助教授が笑顔で立っていた。
両手に提げた弁当のレジ袋を持ち上げて
「食べに出るより、お話しできるかなと思って買ってきたの。
北岡さんもいらっしゃる?」
「はい。あ、どうぞお入りください。
え?丸山先生、北岡さんをご存知なんですか?」
「はい、研究チーム生です。」
「そうだったんですか。」
「丸山先生、こんにちは。」
「こんにちは、北岡さん。
今日、水戸先生がご講義の日で、ふたコマ目が空いてるとおっしゃってたんで、一コマ目終わりに来てみたんです。ちょうど北岡さんと水戸先生がこの部屋に入るのが見えて、一旦出直したんだけど、まだかなり話し込んでるみたいだったんで、お昼ご飯買ってくれば、一緒に食べられるかな、と思って。」
「うわぁ!ありがとうございます。お茶淹れますね。」
結子は、お湯を沸かし直して、湯飲みを一つ追加してほうじ茶を淹れた。




