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数多ある男性のエロ力

 結子の疑問に由依は答えた。

「これは、記憶の話とは全く違うもので、私が物心ついた時からありました。


 子供の頃からその人にちょっと意識を集中させると、その人が今頭の中で何を考えているか、何を思い描いているのかが、私も頭の中で共有できるんです。


 例えば、トランプのババ抜きとかするでしょ。そうすると意識を集中した相手の手札が、その人の目を通してみた画と同じ画が見える感じ。

 だから、その手のゲームで私負けたことがないんです。

 じゃんけんは、あらかじめ決めてる人には勝てるけど、瞬間の思いつき感覚で出す人には負けることもある。」


「それは相当特殊な能力ね。」


「そんな大げさな能力だとは思ってなかったんですけど。

 豊功《とよのり》がいるから私は無理だって思ってるんですけど、高1の時って豊功がまだ中学生で、高校には豊功《とよのり》のことを知らない人も多いでしょ。

 だから告ってくれる人もいたんです。

 私のことを好きでいてくれる感情は嬉しいんだけど、その下に見えるエッチな妄想がリアルに見えるのが嫌で、全部断ってました。

 見えるから、危険な場面に遭遇しそうな時も、早い段階で事前に回避できたことで助かったことも多いです。

 もっとも、中学の時からアダルトビデオの女優さんの記憶が入ってるから、他人の妄想もかなりリアルに生々しくて。」


「そうかぁ、そういう弊害もあるんだね。」


「はい。まあ弊害でもありますが、多感な女子中学生が妙な気を起こさずに過ごせた支えでもありました。

 ただ、とにかくありがたいことに豊功《とよのり》には、そういう妄想みたいなものが全然なくて、純粋に私のことを好きだって気持ちで接してくれてたんです。


 彼がこの大学に入って結子先生の講義を初めて受けた日からですね、私といるのに豊功《とよのり》が自分でするのを、明らかに我慢してる、ってなったのは。


 理由はさっき言った、私と豊功《とよのり》が共有して持ってる、愛し合ってる二人の前世の記憶。結子先生そっくりな人に恋い焦がれていた男性の記憶からきてるんで私は結子先生の姿と前世のその女性の気持ちに委ねれば、豊功《とよのり》の想いと行為は、嫉妬も無理もなく理解できるんですよ。


 それに豊功《とよのり》の専門書に没頭する姿や勉強する姿、時間があったらフグを釣りに行ったり、スズメバチやマムシを捕まえて毒を採取する実験に取り組む姿しか見てなかったから、私だけが豊功《とよのり》の男性の姿をそばで見れるのが嬉しくて幸せなんですよね。

 しかも、豊功《とよのり》の放精が、結子先生の『Healing』になってるんでしょ?」


「あ、それ!それも聞きたかったの。


 あの『Healing』の空間て、何なの?

 由依ちゃんが今まで話してくれたおかげで、『Healing』の中で液体を私にかけた一人は大島くんだということはわかった。

 でもあとの3人はわからない、見ず知らずの人ばかり。

 あの白いおたまじゃくしみたいなのは何?」

 結子は自分の身に起きた出来事を思い出して、思いつくまま由依に聞きまくった。


「あ〜、あれは…『Healing』は、私も大学生になる春に、家族割で持ったスマホとポケットWi-Fiを持ってからのことだから、結子先生より1年ちょっと先に経験して『こういうことじゃないかな』っていう推測の話なんですけど。


 入学してすぐ、何人かの男性に告られた夜、私に『Healing』がきました。

 告ってくれた人とそれ以外にも何人かの、自分でやって出してるシーン。

 私には、すでにアダルトビデオの女優さんの記憶がありましたから、パニックになることはなかったんでよかったですけど。


 それから毎日、10人から多くて20人くらい。同じ人もいれば全く新しい違う人もいる。

 夏になって薄着になった時は、もう少し増えたかな。

 その頃には割と冷静に分析できてきてて、男性が射精する20秒くらい前から映像が入ってきて、出されて10秒くらいで次の人の映像に変わるっていうサイクルも見えてきた。」


「ああ、そのくらいの時間だったと思うわ。」


「じゃあ、結子先生のも私と同じ『Healing』みたいですね。

 白いおたまじゃくしの元は精子でしょう。

 卵子がいる場所までたどり着ける元気のある精子が、おたまじゃくしのような姿のまま、卵子に入るような力でドクターフィッシュみたいなことをしてくれているんだと思っています。

 私への思いが強い精子が多いほど、私の古い角質を取ってくれてる気がしています。

 実際、『Healing』の後は、肌トーンが上がる気がしますもん。」


「それは私も実感した。

 その夜お風呂に入った時、肌のトーンが違った気がしたのは気のせいじゃなかったんだ。」


「じゃあ、豊功《とよのり》のも結子先生の美肌効果の役に立ってるってことですね。


 二人のアダルトビデオの女優さんの記憶には、撮影や実体験じゃないところで、多数の男性から放精を受ける『HeaLing』の記憶があったんです。

 ご本人たちの意識のないところでの記憶です。


 それが何かわかったのは、スマホとポケットWi-Fiを持ってからのことでした。

 ここからは私の憶測ですけど、人前に出る機会が増えると綺麗になっていくグラビアアイドルの子や女優さんがいるじゃないですか。

 あれって本人たちの意識のないところで『Healing』を受けてるんだと思うとなっとくできるんですよね。」


「なるほど、数多ある男性のエロ力が役に立ってるって話ね、わかるわ。

 もっとも、私も『Healing』の経験がなかったら、まったく信じられる話ではないわよね。

 一回だけの経験なのに。」


「それだけ結子先生が柔軟な考え方の持ち主なんだということだと思います。


 女の勘というのが強く働く女性に見えるとしたら『こんな人に』と嫌悪感を抱く人もいれば、密かに思いを寄せていた人のを見て『この人が私に?』と、すんなり両思いを叶えられる人もいるのかもしれませんね。」


「納得できることが多すぎて、すごいわ。

 もう一つ聞いていい?」少し恥ずかしそうにして結子が由依に尋ねた。

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