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複数の人の記憶を持つ前世で夫婦だった二人

「明らかに大人の彼の顔をした戦国武将姿の男性で、名前は『功元《のりもと》』。


 藩主の四男で、毒使いの腕と知識を評価されて、藩の領地に攻め込んでくる敵を迎え撃つ刀や槍先、弓矢の先に塗り込む毒を作ったり、自ら忍びチームを率いて秘密裏に消滅させていく班のリーダーでした。

 その傍らに座る女性は、今なら私の顔なんですけど、当時は父親似と言われていた私だったで、むしろ若い頃の母の顔でした。

 私の顔をしている人を見ているんですけど、その人としての意識は私にありました。説明しきれない感覚なんですけど。」


「その人を見てるのに、その人としてそこに居るのよね。

 うん、何となくわかるから大丈夫。」

 結子の相槌に、由依は安心したように頷いて続ける。


「私を見て『功元《のりもと》』が言ったんです。


『今日からまた3日、二つ上の姉さん奥方だね。』多分こんな意味のことです。それで、私は

『不束者の豊珠ではございますが、何卒引き続きおそばにおいてくださいませ。』みたいなことを言ってました。豊珠姫《とよたまひめ》なんです、私。


 現実の隣で、豊功《とよのり》が

『今日誕生日だね。ケーキ買いに行こ。』と笑ってました。

 幼い頃から先に功元《のりもと》の記憶に慣れている豊功《とよのり》は、二人で同じ記憶を見ても、違和感なく受け入れられて冷静だったんでしょうね。


 その豊功《とよのり》の笑顔を見た直後に、私の中に別の人の記憶が入ってきたんです。


 東京都内の私立大学に通う女子大生の時に、スカウトされたことがきっかけでデビューしたアダルトビデオの女優さん。

 週刊誌で断続的にグラビア写真企画で特集が組まれて、写真集が発売された記憶があるんです。。

 まだ中学2年生なのに、高校3年生の時の初体験の時の記憶まで。

 痛かったけど好きな人が優しくしてくれて、結ばれたことが嬉しかった気持ちまで鮮明に。


 それにもう一人、その人より少し前世代のアダルトビデオの女優さんの記憶も入ってきて、この人と豊功《とよのり》の別の記憶の人が繋がってたんです。

 この人は、騙されてAV女優にさせられた人でした。女性スタッフを窓口にするとか、有名なグラビアアイドルの人と同じ現場のお仕事があったりという、巧妙な手口で安心させて、事務所がアダルトビデオの制作会社だってことを事を伏せて接触してきたんです。その人物の悪巧みに嵌めらて、アダルトビデオの女優さんにさせられた人の記憶。


 これは辛かったな。


 けれどこの人が、小学生の頃から茶道や華道や空手、新体操、日本舞踊やお琴、フルートの演奏まで、習い事をたくさんやってくださってて、ある程度の実力者レベルまで行っている方だったんで、後日身体の使い方を覚えればすぐにできたんです。

 豊功《とよのり》が前に言ってた

『なぜか知らないけど、何度も見てやったことがあったような気がして、やったらできただけ。』と言うのは『ああ、このことか』と思いました。


 母にいくら習ってもうまくできなかった料理も『肉じゃがと煮魚が得意』と言えるくらいになったのは、この方の記憶のおかげに違いありません。

 全く興味のなかったプロレスも、ワザとか決まり手とかを私が言えるようになったのもこの日からです。


 豊功《とよのり》は、フグやスズメバチやマムシ、クラゲやトリカブトなどから抽出した毒を使って、その効率のいい効果的な使い方と毒、解毒の知識を持って忍びのチームを率いるリーダーで藩主の四男『功元《のりもと》』の記憶と、元々持っていたのが、生物由来の薬学医療の分野で研究しつつ、救急医療現場での救命活動していて、必要で便利な道具を考えて作っていた研究者の方の記憶と、もう一人。


 男性の悪巧みに嵌めらて、アダルトビデオの女優さんにさせられた、私の記憶に入った人のそばで、法律の知識面から支えて、騙した事務所の代表の男を有害職業紹介容疑で逮捕、起訴に追い込んで、賠償請求支払いにまで応じさせた知性派格闘家の男性の記憶が入ってます。


 そこで私と豊功《とよのり》の記憶が被る部分がいくつもあるんです。


 ただ、豊功《とよのり》は、

『僕の身体では僕が壊れる』と言って、格闘家の記憶は封印してるみたいですけど、咄嗟の時には身体が勝手に動くみたいです。」と、笑って由依が、結子が入れてから時間が経ち、ぬるくなったほうじ茶の湯呑みに手を伸ばし、ごくりと飲んで一息ついた。


「すごい話だな、って思うけど、普通ならすぐに信じられるお話ではない。

 けど。私もスマホとポケットWi-Fiで見てることもあるから、信じられる。

 一人でも大変のような気もするけど、3人分。

 自分のことを入れて4人分の人生の記憶?


 しんどくない?」


「その人の人生を全部記憶して、すべてを背負い込んでるわけじゃないんで。


 むしろ大した努力しないでも、自分にできることが増えたり

『え?初めてなのに、ここまでできるって天才じゃないの?』って褒められる方が多くて、嬉しいことの方が圧倒的に多いですよ。

 まあ、アダルトビデオの女優さんの、しかも二人っていうのは中学生の私には重かったし、結構キツいとこはありましたね。

 中2なのに、高校3年生での初体験の記憶がすでにあるって、ねぇ。」

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