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一つ年下の彼氏

彼の名前は、大島豊功《おおしまとよのり》。


 今日のご講義の映画鑑賞エピソードトークでも、漫画とアニメ好きとおっしゃっていた結子先生なら、信じる信じないは別として、彼は3人の前世の記憶を持っていると言っても一定のご理解はいただけると思います。」


「転生者ってこと?」


「たぶん。

 正確にはわかりませんけど、そう理解した方が早いんで。


 私、初めて彼と会った時、まだ幼稚園に入る前の彼に

『豊珠姫《とよたまひめ》』と、呼ばれたんですよ、いきなり。

 後にも先にも1回きりですけど。

 でも私も、何故か初めて呼ばれた気がしなくて、今思うと遠距離恋愛で会えてなかった恋人に会えたような感覚ですかね。不思議な初対面で、何か懐かしい気持ちになったのは、今でもはっきり覚えてます。

 多分その時から私は彼に惹かれてました。運命です。


 彼はもともと周りからは『変わった子』と言われてて、図鑑でも毒を持つ生き物、ハチやムカデ、特にフグに興味を持つ子だったんで、小学生になっても一緒に遊ぶ友達はなく、一人で図鑑や本ばかり読んでる、むしろ『暗いやつ』って、いじめの対象になりそうな子でした。

 まあ、そんな奴らがいたら、私がぶちのめしに行ってましたけどね。


 彼が中学生になったばかりの時に、学校の裏山に上級生に呼び出されたことがあって、彼が行ったら、呼び出した上級生の一人がマムシに噛まれてたんです。

 周りの生徒もあたふたしてる中、彼は冷静に処置して、他の上級生を使って保健室に運んでもらって、あらかじめ呼んでもらっていた救急車に病院へ搬送してもらうまで仕切った、という出来事があったんです。命に別状はなく、のちに無事に退院して。

 その折に救急隊員の人やお医者さんから、処置と対処が完璧だったと絶賛されたんですけど、彼は

『なぜか知らないけど、何度も見てやったことがあったような気がして、やったらできただけ。』と言ってました。

 当時はもう、普通の大人も手を出さない誰も知らないような医療薬学の専門書を、バリバリ読み飛ばしてました。

『なんでわかるの?』と聞いても

『なんか、知ってることが全部まとめられてるって感じだから、確認してる作業に近いんだよね。』って。


 その後すぐ、私の家庭の事情で、私が中学2年の時から高校卒業の間まで、私は両親と一緒に母方の祖父母の実家のある地域に暮らすようになったんです。

 ところがそこは、彼氏のご両親の出身地でもあって、私がそこに行ってすぐ彼氏の一家も引っ越してきて、同じ中学高校に通うことになりました。


 その地域には、海の干満を司る島を有して大漁祈願が成就すると言われる神社があって、その地域を治めた歴代藩公の霊社も建立されて祀られてるんですよ。

 私たちが3年間通った高校の運動場と校舎の間の道をまっすぐ行くと、突き当りにある神社で、そこに表には出ずに霊社にも名前がないけれど、裏で暗躍して藩を支えた『功元《のりもと》』という、藩主の四男がいたんです。その『功元』に内助の功を尽くしたのが豊珠姫という奥方様だったという話が、大国主命を祀る社殿の書物に書き記されて伝わっているんです。

 その神社が『縁結びの神様』と言われている所以は、その二人に由来しています。


 再会して間もなく、朝日がきれいに見えると言うことでも名が知られているその神社で

『朝日を見よう』と言うことになりました。

 有名なスポットで、天気がいい予報だったんで場所取りしようと早朝に出掛けて、いい場所が確保できたんですけど、今思うと周りに誰もいなかったのはおかしい。


 けれどその時は『ラッキー』くらいに考えて、二人で朝日を待っていたんです。

 赤くなってきた海を二人でじっと見ていると、海の干満を司ると言われる2つの島の間から朝日がさしてきて、ふわっと身体が暖かくなった時に、いきなり他人の記憶が彼と私に入ってきたんです。」

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