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今朝同じ空間にいた二人

 結子のポケットWiFiの画面にも「Healing」と「dungeon」の文字が、ホーム画面の中に、レイアウト表示されていた。


 ハッと気づいた結子が、スマートフォンの画面を見ると、今朝の「dungeon」の表記がポケットWiFiの画面に出た時や、数日前の帰りの電車内で「Healing」の表示が出た時と異なり「件数」も「開く」も表示されていない。


 まるであなたの疑問はわかっていますよ、と言わんばかりの表情で、由依が結子の疑問を解く一歩目を示すように、


「先生、アプリの一覧をスクロールして、一番最後のアプリをみてください。」


 結子が言われた通りにアプリケーションの一覧をスクロールしていくと、鬼の面のアイコンと『BDFD』と言うタイトルのアプリケーションが追加されていた。


「なに?『BDFD』なんて言うアプリなんか入れてないんだけど。」


「やっぱり。」


「由依さん、何か知ってるの?」


「先生今朝、通勤電車の中にいながら、見知らぬマンションを出入りされましたよね?」


「え?何で知ってるの?」


「私もそこにいましたから。」


「いやいやいや。あれは私の脳内映像で、あそこにいた人みんな私には気づかないと言うか、私の意識がいただけで、あそこにいた人たちにはまるっきり見えてない。

 私は完全に空気でしたよ。

 スマホも使えなかったし。」


「今度からは写真機能、動画撮影機能は使えます。」


「え?」


「私も『dungeonモード』で空間に入っている時に、初めての時は使えなかったけど、2回目から使えました。

 あそこに同じモードで入っている人を見たのは先生が初めてです。」


「見てわかるの?」


「水戸先生が初めてなので確定はできませんけど、水戸先生が行こうと考えている進路方向は全部、私から見てもうす暗く指し示された形になってた。


 他の人たちは普通なのに。


 私自身が見ている進行方向の暗さと全く同じだったから、水戸先生も『dungeonモード』でここに入ったんだな、って思ったんです。」


「私、あそこに行こうと思って行ったわけじゃないのよ。」


「わかりますよ、わけもわからず飛ばされたんですよね。


 でも全くビビった様子もなく、マンションの中まで入って行ったのには驚きました。普通行きます?」


「何だか行けそうだな、と思って、1階のエレベータホールまで行ってみた。

 降りる人も乗る人も、全く私のことは気にすることなく普通の生活されてて。


 でも変なことに、他の人が普通にエレベータを使ってるんだけど、わたしには17階の数字だけがずっと異様に光って見えたの。


 あれって私だけ?」


「はぁ〜。さすがと言うべきですね。もう突き止めたんだ。」


「突き止めたって、なにを?私が?」


「やっぱり、水戸先生だ。私はずっとあなたを待っていたんです。」


「ちょちょちょ、ちょっと待って。


 私はたまたま縁あってこの大学に来てるけど、隣県から来ることになったただの非常勤講師よ。


 ICTのことを子供達に伝えたり、イベントのMCをしたり、マナーとセンスアップメイクのインストラクターをやってはいるけど、その本体は、3児のママでただの一般主婦。」


「でも理不尽な人の不幸には黙っていられない。


 たとえ他人の身に降りかかったことでも、その人の心と身体の痛みを自分のことのように、怒り心頭に発することのできる人。」


「え?ひょっとして由依ちゃん、私が丸山先生たちと飲んでた時にあの店にいた?」


「丸山先生たちと飲んでたんですか?

 それって、私が彼氏のをヌいてるのを、水戸先生が見てた日でしょ?


 だからその日私は、彼の部屋にずっといて、フフフ。

 ヌいてましたから。」


「ああ、そうか。


 いやいや、ああそうかじゃないのよ。

 ずっとヌいてたって…私にも由依ちゃんと同じ年の娘がいるんですからね。


 はぁ〜。

 まあそれはそうと、私があなたたちの部屋を見れたみたいに、由依ちゃんだって私たちのことを『Healingモード』で見ることができたんじゃない?」


「それは無理。

『Healingモード』は、自分の意思で飛べるテレポーテーションじゃないので。


 それにあの日は、私『Healingモード』を使うことはなかったですから。必要なかったというか。」


「そうか、それはそうよね。はいはいラブラブ、若い男女がお幸せなことで、この国の未来のためにも大変喜ばしいことですわ。


 ただ一応、先生と呼ばれる立場の者として、自分を大切にしなさいよ、と言っておく。


 まあ、あの彼氏なら大丈夫そうだけど、年下よね?」


「はい。大切にしてもらっていますよ。


 幼稚園行く前から近所に住んでた一個下の幼馴染です。


 わけあって結子先生にどハマりするのはわかっていたんですけど、それも私たちのかたちなんで。

 結子先生は『彼女も公認せざるを得ない、このタレントさんのファン』。なぜなら彼女も一緒に『そのタレントさんの大ファンなので』くらいに思ってください。


 私が水戸先生を待っていた理由をお話しするのに、彼氏の話もしておいた方がいいのでしておきますね。」と言って、由依は話を始めた。

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