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#17 「セッティング」



「こらぼれーひょんはいひん?」

「飲み込んでから喋って」


 白飯をおかわりして口の中に頬張る義母。

 俺は一足先に完食しており、義母が食べ終わるのを待っているところだ。


「んく……で、コラボレーション配信とはなんぞ」

「まあ簡単に言うといつもやってる配信の2人版」

「なるほど? 普段の配信とは何が違うの?」


 普段の配信との違い。それはリスナーだけに向けている喋りを別方向にもしなければならないところ。これは当然として、最も大きな違いはコラボ相手のリスナーもライブ配信を見に来るところだろう。

 いつもは俺単体を見に来ている人のみで固まっている集団が天羽ハナコの配信を見ている集団と合同で視聴する状態。

 はっきり言ってかなりやりにくい配信形態だ。


「そりゃあ大変だ。その辺で初見の人と話すのとは訳が違うねえ」


 うんうんと腕を組んで頷く義母。

 ちょうど食べ終わったなとテーブルを確認し、ササッと食器を片付けて洗い始める。


「テーブル拭いといて、後はテーブル下もよろしくー」

「りょーかいであります」


 いつもの流れで食後の運動とばかりに義母に簡単な掃除を頼む。

 食器洗いについては前世含めて食器洗い歴20年以上の食洗戦士ゆえ手慣れたものである。





 *****……




 目の前に積まれた段ボール。

 俺の胸のあたりまで積まれた段ボールを一段ずつ下ろして並べていく。


「思ってたより軽くて助かった」


 玄関のすぐ近くの倉庫部屋まで宅配のあんちゃんに運んでもらった。外向けスマイルをしながら「お兄さんありがとうございます♪」とお礼を述べたらデレデレと快く対応してくれた。こういう時はすごく便利だなと心底思う。


「段ボールの中身は天羽さんがくれた取り扱い説明書通りか」


 以前電話で話した時にコラボ配信用の機材を送ってくれるとのことで雑談も交えながらどういった機材か説明してもらった。

 ほとんど聞いた通りの内容であったためそれほど苦労せずにセッティングはできそうだ。


「あ」


 セッティングを進める中で問題が発生した。


「これは……どうしようか」


 その問題とはパソコンの性能だ。

 天羽さんが送ってくれた機材を使用するには相応の性能を持つパソコンが必要であることが分かった。

 まだパソコン自体が一般家庭にあまり普及していないことも相まって高級品なのだ。とても買える代物ではない。


 うーんと唸っていると家の電話に着信があった。


「はいもしもし」

『あ、もしもし。えと、リンカネさん? ではなさそうですね』

「あーっと」


 義母が受話器をとって応対する。

 話の内容は聞こえないがこちらを見る義母の様子からおそらく天羽さんだろうと推測する。


「電話変わるよ、義母さん」

「娘に変わりまーす」

『娘!? お母様!?』


 受話器を受け取る際に動揺の声が聞こえた。


「変わりました。天羽さんですか?」

『はいっ! 天羽ハナコです!』

「それでご用件はなんでしょう」


 雑談をすると長くなってしまうため本題へ。


『先日送った機材なんですけどぉ、あれ使うのに結構いいパソコンが必要なんです……』

「ちょうどさっき私もそれに気づきましたよ。どうしましょうか」


 苦笑交じりに応えると思わぬ返答があった。


『それでしたら大丈夫です。いいパソコンを送ったので!』

「へ?」

『送ったので!』


 大事なこと……いや大事過ぎるだろ! 今二度言う前に一言ほしかったよ。


「ありがとうございます。でも送る前に荷物の受取日程的な意味で一言ほしかったですね」

『すみません! ほんとすみません!』

「いえいえ、怒ってはいないので全然」


 そうだ、今のうちにコラボ配信後の機材の返却についても話をつけておかなければ。


「パソコンの件はありがとうございます。それとコラボ配信が終わった後の機材の返却は送り主の住所まででよかったですか?」

『あ、差し上げます』

「……え? ちょっと電波悪かったのでもう一度お願いします」

『パソコン含めて機材全て差し上げます』

「!?」



 天羽さんの言っていることをゆっくり理解し始め、受話器を持つ手に汗が滲み出た。







読んでいただきありがとうございます。

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